4話目
4話目
疾走によって走った時、天落は驚いていた。迷宮適合によって身体能力が上がっていたのは知っていたが、ここまで速く走れるとは思っていなかったからだ。
もし本気で走ればどうなってしまうのか、想像すらできない状況に体が震える。怖くてではない、力を持っている興奮でだ。
それほど迷宮適合による身体能力の向上による疾走の効力は高かった。まるで掛け算のように。
「……一先ず片づけましょう。こんな所で会議なんて出来ませんから」
「そうしよっか」
有紗さんが一番最初に正気に戻りかたづけを始めた。異能は持っていないが、長い間吉村の傍にいたおかげでこの程度は慣れているのだろう。
倒れた机を元に戻すのを手伝いに行くのであった。
★
「それじゃあ最後の異能についてもみせてもらっていいかな?」
片付けが粗方終わり会議をする程度であれば困ることが無い程度にはなっていた。想定以上に散らかったおかげでここまで片づけるのは骨が折れたものだ。
だからこそ吉村たちは最後の異能が何をしでかしてくるのかびくびくしていた。
キングなんて椅子に座るのでは無く、盾にしているほどだ。
「あぁ、最後は鋭利なんだが、斬れやすくするだけだから怯えなくても大丈夫だぞ?」
「そ、そうか? だけどなにかあったら……いや、流石にここまで怯えるのは失礼だったな」
キングはそれなりに教養があるらしく、失礼な態度を取っていると客観的に感じ取ったようだ。
「さっきも言ったが、鋭利は鋭くなった場合の効力を発揮するように出来る。実際に鋭くなる訳では無いから見た目に変化はない」
そう言いながら手を上にあげ、壊れた椅子へゆっくりと降ろす。
「だからこんな風に……」
手が椅子にあたり、そのまま下へ降ろされる。するとゆっくりと椅子が真っ二つになって行く。力で無理やり分裂させている断面ではない。鋭い物を押し当てているような断面で綺麗である。
「斬れると言う訳だ」
「ひ!」
なぜかキングが悲鳴をあげた。……そう言えばこの椅子って、さっきまでキングが座っていたやつだな。まあいいか。
「ただ、限度があるから出来る事なら剣が欲しい所だ」
「そっか。異能を使ってつかれたりはしていない?」
「疲れる? そんなことは一切ないぞ」
「うん……凄いね」
吉村は感心したようにうなずいており、森森と如来はなぜか開いた口がふさがらないような顔をしている。
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