19話目
19話目
「Aの戸棚の上から三段目にある容器」
それには大きな文字で迷宮適合と書かれていた。この容器を注射器にセットすることで使用できるみたいだ。
容器の中に入っている液体は禍々しく、決して体の中に入れたくない。
でも、これを打つだけで強く慣れるんだったら使う人はいっぱいいるんだろうな。
実際吉村も興味はあった。
今まで力がなくてできなかったことはいっぱいあった。これから先も沢山あるだろう。だから、打ってみたい気持ちはある。
しかし、今死ぬ訳にはいかない。
そんなとき、吉村が入ってきた扉とは別の扉から人が入ってきた。
「ん? 誰だい。人が来るなんて予定は入っていなかったはずだが」
見た目は白衣を着たただのおじいさん。しかしこの研究室にいるということは、彼にも関わっているだろう。
うまく話を誘導できたら、彼がどこにいるのか聞き出せるかもしれない。
「急に来てしまい申し訳ございません。侵入者が入ってきまして」
「そうじゃったか。地下にいると何も聞こえないもんだな。でも大丈夫だぞ?」
「そうでしたか。万が一のことを考えてのことでしたから。なんともなくてよかったです」
おじいさんは片手に持っているマグカップを適当な机に置き、吉村と対面するように体をこちら方側に向けた。
「その大丈夫ではない。侵入者なんぞここに入ってこれるわけがないだろう。新しい生贄はいらない言っているのだ」
おじいさんは吉村のことを研究のために与えられた生贄だと思っているようだ。
ここまで狂ってる人だとは思わなかったから普通に会話をしようとしたけど、話しかけたらだめなタイプだったのか。
「まあ、貰えるものは貰うがの。抵抗はしないほうがいいぞ?」
おじいさんの体がボコボコと音を立て始めた。何事かとよーく見ると角が生えてきたり、肌が黒く変わっていた。
これじゃあ、もう人間ではないだろう。
「迷宮適合Ⅱ段階目。研究の末になんとか人体に適応することができたんだぞ。よく見ているが良い」
「Ⅱ段階目!?」
そんなのここにあった研究資料には書いてなかったはずだぞ?
いや、見てないところに書いてあったのかもしれないが、そもそも迷宮適合の研究は凍結されているはずだ。
なんで、Ⅱ段階目が存在しているんだ。
「ただな、制御出来ていないせいで長時間の仕様は出来ないんだ。避けないでくれよ?」
すると、おじいさんはこちらに走ってこようとした。
いまの吉村は戦闘するための道具なんて一切持っていないのにどうすればいいんだよ。
焦りながら、どうやったら対抗できるか考えるが全く思いつかない。
「やばい!」
そんなときであった。
おじいさんの首が飛んだのは。
「へ?」
まるで元々くっついていないのではないかと思うくらいきれいな断面が見えている。何事なのかと思ったがなんで首が飛んだのはなんでなのかすぐに理解できた。
彼がおじいさんの隣で剣を振っていた。
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