18話目
18話目
扉から出ることが出来た吉村は、研究所の方向へ足を進めた。地下に作るほどの研究所には何があるのか見ておきたいのだ。もしそこに、彼がいればいいし、いなくとも研究成果を盗み見れればそれでいい。
コ…コ…コ…コ
かかとが地面に接触する音が響く。いつも足音は出さないように静かに歩くよう意識しているのだけれど、誰もいない廊下ではそんな努力は空しくてしょうがない。
無機質な廊下を歩き数分。
お目当ての研究所までついた。
指定監禁室とは違い硬くも重くも無さそうな扉で遮られている。そのうえ扉に小口ではあるがガラスまでついており、先が見えるようになっていた。秘匿したいのかしたくないのか、よくわからない構造だ。
そのガラスから中の事を見てみると、電気はついているが誰もいないみたいだ。
「入ってみますか」
ポケットの中に入っているキーを電子ロックに当てて解除する。研究所に入れる権限もあったみたいで、しっかりと解除された。
「・・・あれ?」
指定監禁室の扉は自動で開いてくれたから待っていたのだが、どれだけ待とうとも扉は開いてくれなかった。もしかしてこっちの扉は自動じゃないのかな?
まあ、自動にすると研究に差支えがあるのかも知れないね。
嫌ではあるが、足で頑張って扉を開ける。今回の扉は重くなさそうだから楽ではありそうだが、慣れていないから時間がかかる。
「よし、開けれた!」
それでも根性で開けきることが出来た。そのまま開けっ放しにしておけるように、靴を扉に差し込んでおく。ドアストッパー代わりだ。
息を切らしながら中に入る。そこには綺麗に整理整頓された研究所があった。
研究資料は取りやすいようにファイルにまとめてあるようだし、危険な物質は戸棚にいれてありそのうえ鍵までかかっている。
さっきの指定監禁室と比べて落差が激しい。もっと血で汚れているようなのを想像していた。
漁る分には何がどこにあるのか分かりやすいからいいんだけどね。
すぐそこにあるファイルを地面に落とし足で開ける。さっき靴を脱いでいたからページをめくりやすい。
いつ誰がここに来るのか分からないのでドンドン読んで行く。時間は限りがあるのだ。
そうしていると、目にとまった研究があった。
それは「ダンジョンの異常性解析による人類の進化計画」
中を読んで行けば、こんなきれいな研究所で行なったのか疑心暗鬼になるような内容。そんな中に書かれていたのが【迷宮適合】だ。
吉村が保安庁に潜入したとき女の職員に合ったのだが、その人は人間とは思えない身体能力をしていた。女が言うには迷宮適合をしたからこうなったのだと。
「……」
凄い研究だ。
おもわずそう思いながら読んでいたのだが最後の最後で驚くべき事が書いてあった。
研究を凍結する。理由としては、迷宮適合を行なった10人中9人は死んでしまう上に、迷宮適合を行なった人同士で子供を産むと必ず奇形が生まれてしまう。これは人類の進化と呼ぶには不完全である。改善の余地はなかった。
迷宮適合を行なう注射器の写真とともにそう書いてあったのだ。
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