16話目
16話目
目の前には鉄格子。後ろには先が見えない階段。上手いこと入れたと思ったがもしかしたら罠にはめられた?
「でも、行くしかないよね」
行き当たりばったりになってしまうが、先に進んでみることにした。もしかしたら彼がいるかも知れないし。
吉村は両腕が使えなくなってバランスが取れなくなった体で階段を降りていくのだった。
もしバランスを崩したらと考えると階段すら怖くなる。
一段二段とゆっくり降りていく。片腕でも使えたら手すりに掴まれるのだがと思いながら、転げ落ちないようにゆっくり降りる。
すると、踊り場にでた。
ひとまず安心だ。もし転げ落ちることになったとしても踊り場があるなら止まることができる。
どんな構造になっているのかわからないからこの先が不安だ。
踊り場で折り返し下っていく。
ゆっくりだったおかげで階段を降りることができたみたいだ。こんなところで怪我をするわけにはいかないからね。
もし階段から転げ落ちたら良くて脳震盪。最悪の死だろう。なら、どうしても慎重になる。
「こんなところで緊張するなんて……不便だね」
下りることができたので軽く探索してみよう。正直味方が一人でも来てから行きたいけどね。
そうおちおちしている時間はなさそうだ。
吉村は階段を降りてすぐ目の前に書いてあった看板を見て左側へ足を進めた。
看板には←指定監禁室。研究所→と書いてある。
求めていた場所に出てきたみたいなのだ。
★
薄暗い廊下で足を進める。腕がないのに慣れてきた頃で、そろそろ走ることもできるだろう。
しかし、ここでは走れたところで何ができるのか、という話なのかもしれない。
「あれかな」
先に見えるのは厳重な扉の施錠された扉だ。ご丁寧に指定監禁室と書かれてある。
秘密裏なのかと思っていたけど、ここらへんの仕事はお役所感が抜けていない。
ポケットの中に入ってるカードキーを揺らし確認しながら扉の前まで来た。
「さて、開けれるかな」
ポケットの上から電子ロックにかざす。すると、運が良かったのかガチャっと音を鳴らしながら開いてくれた。
このカードキーを持っていた人……えっと田中さんは何者なんだろうか。
名札に書かれている田中 源文さん。ここまで入れる権限を持っているのに事務だったなんて。
【麻薬求めてダンジョンに入りました!〜現実逃避してるヤク中は短剣片手に走り回る〜】をご覧いただきありがとうございます!!
よければブックマークや評価をしてくださるとうれしいです!!
毎日投稿です




