14話目
14話目
まだ毒が蔓延していない部屋に逃げ込むことが出来た。扉には鍵がかかっていたが、有紗さんがくれた身体強化のおかげで、常人以上の力をだし鍵を破壊した。信者ならまだしも、戦闘を行わない立場だったから身体強化系の秘宝はいらないと思っていたけど、案外使いやすい。
動かせなくなった手にはめてある指輪を見てしみじみと思った。
「さて、どうしようかな」
両腕が無くなったことを悲しみたいが、いまはそれどころではない。
保安庁の職員は毒化粧で何とか制圧できているから一旦無視していいだろう。炎龍の咆哮で秘宝も破壊しているから、吉村と同じように毒無効の秘宝を持ってくるのも時間がかかるはずだ。
しかし問題になるのが、毒を発生させている秘宝の毒化粧は破壊されたら効果が無くなることだ。
そうなったら蔓延しているだろう毒は一瞬のうちに消え去ってしまう。だから警戒すべきなのは、炎龍と同じような秘宝を破壊する秘宝だ。もし吉村から奪って無力化させようと思っても、最悪は毒無効の秘宝を使って毒の中に逃げ込む。
「とはいってもだよなぁ」
まず言っておくが、秘宝を破壊する秘宝と言うのは出現率がすごく低い。だからうちの宗教で保有している秘宝を破壊できる秘宝は炎龍しかない。
しかし相手は保安庁だ。どんな秘宝を持っているのか分からないから、もしかしたら炎龍のような秘宝を持っているかも知れない。出来ればすでに壊れていてほしいが……
そこで一旦深呼吸する。
「すーはぁー」
頭が熱くなりすぎていた。考えるのは良いが空回りしないようにしなければ。
そもそも、なんでこんな可能性が低い事を真剣に考えているかと言えば毒化粧が壊されたらその時点で吉村が殺されるのは確実になるからだ。
そうなってしまえば、今進行してきているであろう信者たちに対しての妨害が増えてしまい戦争に勝つことが出来なくなってしまうかも知れない。
だから、毒化粧は破壊されるわけにはいかないのだ。
「だけど、どう対策すればいいんだよ。範囲系の秘宝破壊なら今すぐここから移動しなければ行けないだろうけど、ここから移動すれば両腕が無くなった私は直ぐに死んじゃうだろうし。移動し無かったらしなかったら毒化粧が破壊されるかも知れない」
確率は低いから無視してもいいんだけど、どうしても頭に残る。
こういう時に未来予知が発動してくれればいいんだけど、残念ながらうんともすんとも言ってくれない。
「……いっそのこと彼を救い出しても良いな」
もし職員たちが慌てふためいているのであれば、逃げるのではなく立ち向かうのもいいかも知れない。今以上にスニーキングミッションを行いやすい時はないだろうから。
「……案外いいんじゃないかな」
ポロッと出た奇天烈な作戦ではあるが、扮装できる服をそこらへんに転がっている死体から拝借すれば、この緊急事態と合間って何とか出来るかも知れない。
最近保安庁の元職員が信者になってくれたおかげで職員の事は結構分かっているし。
「よし、これで行こう! もし範囲系の秘宝破壊をやられたとしても扮装していたら私の事は見つけられないだろうし!」
作戦が決まった。
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