10話目
10話目
あれから一野から連絡が届いているが、大変なことになっているみたいだ。
9つ目の市を占拠し次に行こうとしたとき保安庁の反撃が強くなったらしい。今までは一人や二人程度で相手してくることが多かったが、直ぐに鎮圧したかったのか急に5人以上で待ち構えられていたみたいた。
そのせいで異能者の中にも怪我人が出てしまったよう。ただ、それでも退けることができたようで今は占拠した市で待機しているみたい。
そこで吉村は、占拠を再開させるのではなく一時待機させることにした。本当はスピード全開で保安庁が対策する時間もなくダンジョン都市を占拠使用していた。
だが、思っていたよりも保安庁の対応が早かった。
だから待機させることにした。
今以上に対応されるようになってしまうと思うかもしれないが、時間さえ稼げば新アステカ王国から兵士が送られてくる。
時間はこちらに味方しているのだ。
とはいえ保安庁を占拠するのは新アステカ王国の力を借りずに成し遂げたい。信徒たちから無謀な挑戦だったと思い返されるのは嫌だから。
もしそうなってしまったら宗教は簡単に崩れ去るだろう。
吉村はカリスマも威厳もないから、疑問を持たれたらアトラス教はすぐに崩れ去ってしまう。
「……今持ってる秘宝は何がある?」
「手持ちは、炎龍と死神と毒化粧ですね」
「十分だが、八神には来てほしいな。仕方がないか」
軽くため息をつく。
「どうするんですか?」
「保安庁に奇襲する」
「え、大丈夫なんですか?!」
敵の本陣に突っ込むと言っているのだ。驚かないはずがないだろう。それも吉村一人で。
「占拠しようとしているわけではない。保安庁の奴らの邪魔をしに行くだけだ」
「囮ですか」
保安庁に邪魔をされて進行できないなら、本陣を襲撃して邪魔させなければいい。
吉村の対処に戸惑ってくれたらそれだけで十分だ。
「そういうことになるな。その間に信徒たちは進行を再開しろ。一野の支援を最大限使用し、私が囮になっている間に最速で保安庁の前の市まで占拠してもらう」
危険な囮だろう。
強力な秘宝があるとはいえ油断しなくとも死んでしまう場所で時間を稼ぐのだ。
未来が見えなければやってられない。
「保安庁のアイギスはどうしましょう」
秘宝アイギスの盾。
それは保安庁が持つ切り札とも言える秘宝だ。効果は魔を避ける。ただそれだけ。
盾らしく守ることができるわけではない。しかし、魔を避けるだけの効果が絶大なものなんだ。
襲撃者に対して保安庁の場所を見せなくしたり、地震や津波などの災害に対しても効果がある。
アイギスの盾をどうにかしなければ、それこそどうにも出来ないだろう。
「炎龍でどうにかするしかないよな。降りる前に使う」
秘宝炎龍の咆哮。笛の形をしており使用すれば前方一帯の秘宝を全て破壊する代物。秘宝に頼っている勢力には最強と言える秘宝だ。
しかし、使用するのにはそれ相応の代償が必要だ。
代償は身につけている秘宝3つの破壊。
身体面での代償ではない分使いやすいように感じると思うが、秘宝を破壊しなければいけないのは非常に困る。
秘宝は一つで戦況が変わると言われるほどのものだ。そんなものを簡単に壊すことはできない。
「壊していい秘宝は身を守るために持っていた3つだけだ」
身を守るためいつも何個か秘宝を付けさせてもらっている。それを代償にさせてもらおう。献上してくれは信徒たちには悪いが仕方がない。
「それでしたら私の秘宝も使って下さい」
有紗さんが手につけていた2つの秘宝を外して渡してくれた。
「効果は多少の身体強化。それが2つです」
「ありがとう」
付けてみると体感できるかできないか程度に体が強化させた。
もともと、秘宝は自己所有していいとしていたから、持っているのは全然いいのだが有紗さんが秘宝を持っているとは思わなかった。
「昔夢を叶えるためにダンジョンに行ったことがあるのですが、宝箱から出てきた秘宝がそれだったので諦めたんです」
「うん、いやありがたいよ」
今吉村が身につけている秘宝3つは毒が効かなくなるのと、不意打ちされたときに自動で盾を出すのと、ほんの少しずつ怪我を治すのだけだ。
この中で必要だったのが毒が効かなくなる秘宝だったので、それを破壊しなくするだけで本当にありがたかった。
「じゃあ、そろそろかな」
「ご武運を」
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