3話目 勇敢な犯罪〜揺らがない心は人の道を外す〜
3話目
嗚呼、そうだ。
体は震え、さっきまで感じていた希望はドンドン薄れていく。たった一度の使用なのに出てきた中毒症状に焦っていたのだ。
だが。いや、だからこそ俺はこらえきれなくなった。
もういいんじゃないかなって。
その瞬間越えてはいけないラインを越えた気がした。憲法と法律の下に生きている国民だからこそ、やろうという気持ちにすらならないはずなのに、クスリの後押しで越えてしまったのだ。
パリン
ショップのドアを打ち破り中に入っていく。けたたましく鳴り響く警戒音がもう戻れない事を感じ取らせてくれる。
だが、今はこの音すら気持ちがいい。
破ってはいけない殻を破ったからこそ、今まで感じ取れなかった景色が見えた。感じられなかった感情が湧いてきた。
ヤク中であれ守っているラインを突き破った俺は、吹っ切れたようにルンルンと武器を探す。もう自分を止める自分は居ないのだから。
中に入っていくと、そこには沢山の武器が展示されていた。今までダンジョンに潜ろうと思った事は無かったから、武器の世界は知らなかったのだが、ここまで綺麗に並んでいると絶景である。
見とれながら、武器を選ぶ。
王道の剣が良いのか。力の斧が良いのか。間合いの弓なのか。
剣だったら安定して魔物を倒せるだろうし、斧だったら力は居るがどんな魔物だって倒せる。弓も技術は必要だろうが死ぬ事は少なくなる。
しかしそんな選択を退けて、手には一つの武器が合った。
「短剣ね」
裏でコソコソクスリを使っている俺には丁度いい代物じゃないだろうか。別に魔物を倒したいわけじゃないし、死にたくない訳じゃない。
10階層にある葉っぱを取って来たいだけなんだ。
そう思ったとき、カチッとはまった。
軽く短剣を振れば短剣が合わせてくれるかのように使いやすい。
直剣を手にして振ってみるが、やはり短剣のようには行かない。そもそも俺の体は不健康な生活でガリガリだ。重い武器なんて持つことさえままならないだろう。
だとすれば最初に短剣をとったのはいい選択だった。
さてっと一息つき、ダンジョンショップから出る事にする。武器を手に入れたのであればもう御無用だ。ここにいて欲しい物なんて無い。
そうしてショップから出ようとしたのだが……残念ながら少し遅かった。
「こっちだ!! 犯人がいたぞ!!」
警備員が来てしまった。ショップの扉を壊したときは居なかったから警備員何て居ないと思っていたけど、どこかでサボっていたのだろうか。
まあ別にいい。
これからダンジョンに行くのだから準備運動ぐらいしておかなきゃ駄目だしな。それに短剣の使い心地を確かめる機会だ。ありがたく戦わせてもらおう。
そんな短小な思考で警備員を出迎える事にした。
奇襲で。
大声を上げながら俺を探している警備員の後ろをとり短剣で首元をさす。
「あ゛あ゛あ゛!!!」
武器を通して肉を切れた事を確認する。初めての感触であるが嫌悪感は示さない。反対に興奮を覚えた。もう俺の事を邪魔出来る奴は居ないと言う事を立証出来たようで嬉しいのだ。
だから刺したことを確認したが、もう一度奥深くまでさす。
「や゛め゛r……」
肉を切った感触が癖になる。
しかし癖になるから刺したわけではなく、ちゃんとした理由があった。
短剣はリーチが短いからちゃんと急所を狙い殺さないといけない。さっきは初めて使ったから首から外してしまったのだ。
もし今ちゃんと殺しておらず、後ろを取られたりでもしたら死ぬのは俺なんだ。用心はしっかりとしておかなければいけない。
まあ、案外殺すのは簡単なようで何もさせずに殺せた。しかし警備員は2人一組で動いているようで、もう一人が近付いてきた。
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