4話目
4話目
普段はバイクには乗らないので腰が痛くなってくる。そのうえ、このバイクは自動運転ではないから、溜まっている作業がこなせない。
「どこかに車売ってないかな」
「売ってても、買うためのお金はありませんよ」
「そうなんだけどさ」
今のうちの財政は様々な国の支援があって何とか成り立っている。そのうえ、全てのお金は何に使うか決まっているため車を買うためのお金なんてないのだ。もちろんレンタルも無理。
そんな状況で唯一幸いと言えるのが、ベルモンド国王との交流に間に合いそうということだ。
もし今回の交流に行けなかったら、支援を止めてしまうかも知れない。そうなったらその時点でこの宗教は崩壊だ。
「飛行機ってどこにあるんだっけ?」
バイクで風を感じながら有紗さんに声をかける。
「もうすぐ見えてくるんじゃないですか」
教会を出てからもうすぐ50分がたとうとしている。予定通りであればそろそろ飛行機を使わなければいけないんだが。
「あ、あの家です!」
有紗さんが指をさした先を見るとそこには、普通の一軒家が経っていた。
指示に従うように、その家の脇にバイクを止めた。中に入ろうと思い、扉に手をかけようとしたら、横から一枚のカードを渡された。
「忘れたんですか? これが無いと入れないですよ」
「あー、忘れてたよ。ありがとう」
一見鍵はついていないように見える扉だが、開くためには手のひら大の専用のカードでタッチしなければいけないのだ。
いつもはどこに行っても、信者が扉を開けてくれていたからこういうのがあるのを忘れていた。
渡されたカードを扉にかざすと、奥の方からピ! っという音が聞こえた。開いた音だ。
中に入るとそこは普通の家だ。生活感がありここに飛行機があるとは思えない。
「本棚にある『秘密の鍵』という本を引いてください」
「オーケ―」
ずかずかと入っていき、言われた通り本を引く。すると、本は何かに繋がれているのか本棚から出る事は無く多少傾いただけだ。
「本棚のロックは外れました。扉のように引いてもらえれば中に入れますよ」
「ありがとね」
側面を持ち手前に引く。すると本棚が動き、下り階段が出現した。吉村と有紗はその中に入っていくのであった。
「あと何分くらいある?」
「5分くらいですかね。起動する時間は十分ありますよ」
軽く足が疲れてきたとき、やっと階段の終わりが見えた。
「流石に疲れたね。こんなに歩くのは……最近歩いてるな」
「そうですね。この前なんて一日に12キロも山を歩きましたから」
「辛かったねー。あの時ほど飛行機を使いたいと思った事はないよ」
「駄目ですよ」
「駄目かー。まあ、そりゃそうだよね。うちの最重要機密なんだから【秘宝 転移門】は」
通称 飛行機。
そう呼んでいるのは、公表しただけで世界の情勢が変わってしまうほどの秘宝だ。この秘宝の事を知っているのは吉村と有紗をいれても両手でおさまる程度。そのため、大事ではないときはやすやすと使うことは出来ない。
もし転移門の事が保安庁などにバレてしまったらどうなってしまうか……考えただけで身震いしてしまう。
「でも、もう隠さなくてもいいよね。明日には保安庁襲撃するし」
「そうですね。いっそのこと転移門を持っていること自体は公表した方が良いと思います。もちろん所在地は秘匿しなければいけませんが」
「大胆だね! でも良いんじゃないかな」
対策は取られることになるだろうけど、公表する事によるリターンの方がデカい。人員を割いてくれるだろうし、いつ襲撃されるか分からない恐怖心を植えつけられる。
戦術面で転移門は最強だ。
「あ、そう言えば回収係は来てるよね?」
「はい。アルべノートさんはもうこの家まで到着されているようです」
「そっか、それなら安心だ。じゃあ行こうか」
「はい」
吉村と有紗は転移門へ入っていくのであった。
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