3話目
3話目
車に乗った吉村は目的の飛行場まで急ぐ。
「そっちの資料は連邦に送っておいてくれ。後で話し合わなければいけないことが出来た」
「わかりました。難民保護の方はどういたしましょう? 食料が枯渇してきてると連絡が来ています。緊急で対応してほしいみたいです」
「それに関しては今回の交流で何とか出来るかも知れない。ベルモンド国王の機嫌にもよるから何とも言えないが……一旦難民の受け入れを制限して調整してくれ。アイナの手が空いていたよな」
「アイナさんは現在は待機状態みたいですね。では資料をまとめて渡しておきます」
「ありがとう」
プロジェクトが始まったからといって仕事は減らない。それどころか前よりも増えているだろう。目が痛くなってきたが我慢してノートパソコンの画面を見る。
頑張りどころはいまだ。
ここで頑張らなくてはこの先ダンジョンを破壊したとしてもあるのは破滅の道。未来のため、そして平和のために増え続けている仕事を片づけるのであった。
「はぁ、それにしても多すぎじゃないか?」
「仕方がないです。それに、今すぐ対応しなければいけない案件が増えました」
「なんだ?」
吉村は何かを見据えたように聞き返した。
「私達が教会から離れてすぐ保安庁の襲撃があったそうです」
「あぁ、それね。無視しちゃっていいよ」
パソコンを閉じ顔を上げていう。
「知っていたんですか?」
「そうそう」
投げやりな返答に有紗は納得して手元の資料を読むのに戻る。
不自然だと思うかも知れない。しかし、理由がわかれば納得するだろう。
「これが最善だった」
「えぇ。皆さん出発した後だったみたいで死傷者は1人もいませんし、捕まった人も両手で数えられる程度ですから被害はないも同然です。流石ですね」
「まあ未来視のおかげなんだけどね」
吉村は未来視の異能を持っているのだ。
それによって教会が襲撃される事を知っていた。
「いいですよね異能」
「まあねぇ。この未来視に何度助けられたか分からないよ。とは言え、扱いにくくてしょうがないけど」
「ランダムなんでしたっけ」
「そうそう。使おうと思って見れるものじゃないからね。勝手に見えるせいでどれほど困ったか。」
未来視といっても発動するのがいつなのか分からないじゃじゃ馬だ。
「ないよりはいいけどね」
「そうですよね」
有紗は落ち込んでしまった。でも、異能が無い身で私の秘書が出来ているのだから十分有能だよ。
「あ、そうだ。2秒後に屈んで」
「え、どういうことですか!」
「2、1」
分かりやすいように数えてあげる。するとカウントが0になった瞬間に、車めがけてロケットランチャーが飛んできた。
視界全体が真っ赤になったかとおもえば、爆風で車が何回転もして吹き飛んだ。
「いてててて、何なんですか?!」
「あー、分かってたとしても痛いわ」
「知っていたなら教えてくださいよ!」
何とか無事だったようで、多少顔が黒くなっているが車から脱出できた。
「教えちゃダメだったんだよ」
「なんでですか?」
吹き飛ばされた車が通った道筋を指さす。そこにははじけ飛んだような肉片が飛び散っていた。
「教えたらこっち側に車が飛んでくれなかったから」
「……本当に未来を見るのはランダムなんですか」
有紗さんは絶句していた。それもそのはずだろう、未来を見たうえで犯人を殺す算段までたてていたのだから。
「ランダムだよ」
吉村は当たり前のように答えながら、近くの草むらをがさがさと分けて入っていく。
「何してるんですか!」
「ん~……お、あったあった」
戻ってきた吉村が持っていたのは悪路でも十分走ってくれそうなバイクだ。
「見た未来の中で見つけたんだよね。2人で乗れそうだしいこうか」
「はぁ、分かりました。時間もないですし」
飲み込みが良いのも有紗さんの良い所だ。
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