28話目
28話目
次の冒険者がくるまえに五層まで突破してしまいたい。そう思いながらも、右手に付けている【五度の火垂る】をつけてくるほどだから、悠長にして居れるほど時間は無いだろう。
ここからは冒険者と俺とのスピード勝負だ。
ひとまずは3階層を突破してしまおうと、足に力を入れる。
この階層の魔物は潜伏を使って全てスルーしてボス部屋を探すのに専念する事にした。
そうしていると補給食一本食べる程度で見つけることが出来た。あっけなく見付かった気がするが、3層に来るまでは魔物との戦いが4割くらい占めていたからその分を考えれば当然だろう。
この調子で4階層も突破してしまいたい。
そう思いながら、目の前のボス戦に集中する事にする。
準備と言う準備は無いが、冒険者に鼻を折られた手前何もせず中に入るのは体がむずむずする。
ひとまず補給食を口に頬張る。
「よし、行くか」
やるべき事が有るかと考えたが、考えるほどなら何もないだろう。
門に手を当てると、ギーという重音を出しながら開く。
奥にいたのは人の大きさを超えるほど大きい狼だ。ダンジョンの中にいたはずなのに、まるで野生に居るかのような顔をしながら、全身が筋肉に覆われており、まさにボスだ。
一応潜伏を使ってみるが、案の定直ぐに解除される。
「ふ~」
まだボス部屋に入っていないからか、狼はうごこうとしていない。戦神に受ける威圧感に竦まないよう深く深呼吸し、中に入った。
「グァルガ!!!!」
入った瞬間、待っていましたと犬にポールを投げたかのように、俺へ向かってきた。これが本当に犬のお遊びならいいが、そうではないことが本能が言っている。
悲鳴を上げる暇すらないまま、疾走を使い横に大きく飛ぶ。
そのまま勢いよく走り、狼の視線が通らない背後まで行くことにした。
足音がどすどす鳴りながらも、狼が体を回転するよりも早く動くことが出来ているのが分かる。今回のボスが1匹なのが良かったのだろう。もし複数体いたら移動している間に横やりをいれられていた。
狼がこちらを見れていない事を確認し潜伏を使う。直ぐにこちらへ体を向けてきたがそのころには潜伏を使えていた。
潜伏さえ使えれば犬っころ一匹どうとでもなる。必勝法だ。
「どうやって倒すかだ」
だから後はどやって攻撃すればいいのか考えるだけだ。そのはずだった。
狼は足を止めず俺がいる方向へ走ってきた。
「グァ!!!」
「はあ? なんでこっちくるんだよ」
なぜ俺の方向へ走っているのか分からないが、ひとまず避ける。もしかしたら、当てずっぽうにさっきまでいた場所にきただけなのかもしれない。それだったら俺が悪い。
ひとまず反省しながらも、壁際へ移動することにした。そうすれば俺の事を攻撃してくる事は無いだろうと。
しかしそれは外れだと直ぐに気付いた。
移動したはずの俺へ真っすぐ走ってきたのだ。なぜこちらへ来ているのか全く分からない。
潜伏を確認するが、解除されていない。
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