プロローグ
プロローグ
それはダンジョンと言う世にも珍しい洞窟が出来てから数十年が経った時のことである。世界に4か所しかない「ダンジョン都市」にいる哀れなヤク中の話だ。
「クソ野郎どもが!! 俺の事を下に見やがって!!」
近年ダンジョンではある事が問題視されている。それは都市でのダンジョン産麻薬による中毒者増大だ。中毒性の高いダンジョン産の麻薬は一度使うだけで体が快楽を覚えてしまい、2度目に走ってしまう。
それだけなら個人の問題として話題にすらならないのだが、注目されている原因は冒険者の稼ぎ頭になってしまっていることだ。
成長の限界が見え始めた冒険者は、安定を求めて簡単に稼げる麻薬に手を出し始めた。
都市ではすでに中毒者が沢山いるからどれだけ取って来ても直ぐに売り切れてしまう。中毒性が高いからアウトローな稼ぎ方として引退冒険者の中では有名になってしまったんだ。
ただまあ、有名になってしまったばかりに直ぐに規制は強化された。されたのだが……毒歯にかかってしまった人たち、そして簡単に稼ぐ快楽を覚えた冒険者達は止まらなかった。
ヤク中たちは規制によって監視の目が強い中でも、冒険者たちに取って来てくれと多額の金を出して依頼をし、金に釣られた冒険者は取って来てくれた。
しかし、まぁそんな関係も長く続くものでは無かった。なぜなら冒険者に依頼をするのは多額の金が必要だからだ。
今までとは違い、麻薬だけに金を出すのではなく、ダンジョンに潜って取ってきてくれと依頼まで出しているんだ。
10グラムの麻薬を手に入れるのに、10万や20万では聞かなくなった。
そもそもダンジョンは常に命の危機にさらされている場所であり、そのうえ麻薬があるのは最下層と言われる10階だ。
依頼を出すだけでも最低50万。
俺も中毒によって麻薬が無ければ気がくるってしまいそうだったので、大金を出してとってきてもらった。
だが俺は裕福な方ではなく、反対にダンジョン産の麻薬に手を出す前も様々な薬物にどっぷりはまっていたから、金は微塵も溜めていない。それにプラスして今の職は月手取りで20万ほどと、沢山もらえるわけではない。
依頼を出す資金は直ぐにそこに付いた。
しかし、依存と言うのは辞書からブレーキの文字を消してしまう。家の中にあるものを全て売っぱらい、その上で借金もした。
そうして手に入れた麻薬は……1日前に全て使い切った。
つまりだ、今の男の状態とは家なし借金あり。更にはヤク中というわけだ。金を貸してくれる彼女なんているはずもなく、帰る家もない。両親とはとっくの昔に決別している。
人生に王手がかかっているも同然。
……ここまで振り返って、頭の中は絶望が渦巻いていた。中毒の症状により荒ぶる感情は喜怒哀楽を増大させているのだ。
しかしまだ。まだ、やり直すチャンスはある。手元に残っている10万円がそう答えてくれていた。
なけなしの金で電車に乗るなりして、先週から無断欠勤していた職場にいき、泣きながら謝れば親方気質の上司は許してくれるかもしれない。誠心誠意仕事をして1か月生きれば給料が入って来る。
戻れる道はあるんだ。
こんな状況だからこそ決意をして、がりがりと首をひっかいていた手を降ろし、さっそく電車に乗ろうとした。
だがそんなとき、声をかけられてしまった。
「このクスリを買わないかい?」
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