第3話 現状確認
昨日は再び魔物に襲われる…という事もなく無事に朝を迎える事が出来た。テントの片付けやかまどの後始末を終え、ハンターズギルドのある拠点、『ケールムント』へ出発した。
そして、その道中でチェイサーの皆からこの世界の事を聞いたり、質問をした。知らない事がたくさんあり頭が混乱しそうだが、なんとか自分の中でまとめる事が出来た。
まず、この大陸はアーネルヘル大陸といい、その中には4つの国が存在し、東側に『イストルグ』、西側に『カウル』、南側に『サーケルード』、北側に『ノーズポスト』となっており、それらをまとめて『アーバンティ国』という1つの国とし、国王が治めている。
俺が目覚めた森(ディシスの森と言うらしい)や今向かっているケールムントは、西の国、カウルにあるものとの事だ。
このアーネルヘル大陸は、まだ端から端まで調査が進んでいないため、ハンター達は、日々未開拓の土地を調査したり、魔物の討伐に精を出している。
次に、ハンターズギルドにはランクというものが存在する。FランクからAランクまで存在し、ハンターとしての活動で名声を上げる事で、受注出来る任務や依頼が増えていくとの事だ。
ただし、例外的にNランクが存在しているらしい。このランクは研修期間みたいなもので、ハンターとしての心得を学んだり、キャンプ地でテントの設置や野宿体験をするなど、ハンターとしての基本的な事を頭で、体で覚えていくのだという。
次に、スキルについてだ。
スキルには3つ種類あり、1つは、身体の中に秘められた「内部的」にあるものと装備品に付与されている「外部的」なもの『パッシブスキル』。
もう1つは武器を使って攻撃する際発動するもの『アクティブスキル』。
最後の1つは体の中に秘められたもの『レイテントスキル』がある。
パッシブスキルについては、内部的なものは誰もが必ず1つ以上スキルを持っているらしい。これについては、ギルドで研修を終えた後、『鑑定眼』というスキルを持った人に調べてもらうことで知ることが出来る。
そして、外部的なものは、装備品にスキルが付与されているため、装備するだけで発動出来るらしい。
アクティブスキルはスキルパワーというものを使用して攻撃を行う、必殺技の様なものだろう。普通の攻撃とは違い、大きくダメージを与えたり、攻撃範囲が拡大したりするらしい。
ただし、無限に発動出来る訳ではなく、スキルパワーの残量がなくなると、不発に終わってしまうとの事だ。回復手段はあり、アイテムによる補給や自然回復による回復が主らしい。
レイテントスキルについては、所謂潜在能力と呼ばれるものだ。しかし、このスキルは謎が多いため、よく分かっていないとの事らしい。
ある日突然レイテントスキルが覚醒して、大幅にパワーアップした、なんて報告もごく少数ながらあるとの事だ。
最後に武器についてだ。
武器には、「剣」、「キャノン」、「魔術具」の3つがあり、それぞれ大きな特徴がある。
まず、剣には機動力が高く、取り回しの良い「片手剣」、片手剣の刀身を大型にして、威力を高めた「両手剣」がある。ハンターによっては、もう1つの片手剣や盾を装備したり、両手剣の刀身を更に大型にした剣を持つ者もいる。(ジェイドはこの巨大な両手剣装備だ。)
次にキャノンについてだ。キャノンは巨大な砲身に弾を込め、発射するというものだ。昔、動画投稿サイトに似たようなものを撃つ動画が上げられていた。あれはロケットランチャーというモノだったか。使用する弾も、爆風と破片で広範囲にダメージを与える榴弾と、弾頭を硬くして、モンスターの鱗を貫通させる貫通弾など、色々な種類がある。
最後に、魔法具だ。魔法の威力を上げる補助的な装備らしい。杖や魔導書、ピアスやネックレスなど、様々な形で身に付けるだけで良いとの事だ。魔法の威力は、攻撃に限らず、回復魔法の治癒能力を上げたり、バフ、デバフの効果が大きくなったりするらしい。(ケリアやパズは剣やキャノンを装備した所は見てないので、恐らくこれだろう。)
以上がケールムントに着くまでに整理した情報だ。
今自分は驚きを顔を浮かべているだろう。その理由は、この世界へ来る前に、プレイしようとした「ハンティング・ワールド」というゲームだ。
というのも、人生初のゲームだったので、操作をきちんと覚えてからプレイをしようという考えだったので、説明書を読んだのだ。その際に前述した単語や地名等が書いてあったのを記憶している。今、自分がいるのはこのゲームの中の世界なんだ。
「…大丈夫か?』
ジェイドがこちらの顔を伺いながら話掛けてくる。驚愕の表情を浮かべる俺を心配してくれたのだろう。しかし、迷惑掛けっぱなしなのに更に迷惑を掛ける訳にもいかない。
「…はい、大丈夫です。聞き慣れない単語がありすぎて、ちょっと頭が混乱しているだけです。」
「それは仕方ないよ。いきなり違う世界に飛ばされて、この世界の事を知ろうとしてるんだ。平常でいられる事のほうがおかしい。」
「まだまだ時間はあります。分からないが部分があれば、また説明致しますので、お気軽にお声を掛けてもらってもいいんですよ!」
「そういうこった!元の世界に帰りたい気持ちはよく分かる。だが、どのみち国王に会えるまでにはかなりの時間を要する。国王に会えるのはAランクハンターのみ。俺達も会った事は無いんだ。急ぐ必要はない、ゆっくりとこの世界を知ってくれ。」
皆が俺を想って言葉を掛けてくれる。そうだ、俺は武器を持って戦った事なんて無い。ただ人より足が早いだけ。そんな奴がAランクのハンターになれるはずがない。
ジェイドの言う通り、まずはモンスターと戦う為の体を作るんだ。
「…そうですよね!今はくよくよしてる場合じゃないですよね!皆さんにはかなりの迷惑を掛けてしまいますが、よろしくお願いします!」
「うん!元気になったようで良かったよ!…と、ここがケールムントだ。そしてここをずっと奥に行った先にハンターズギルドがある。まずはそこに行ってハンター登録をしよう。」
ケールムント…非常に活気のある場所だ。町には家が建ち並んでいる。中世ヨーロッパのような雰囲気だ、少し先には広場があり、そこでは子供達が走り回って遊んでいる。道の端には、いくつもの店が並んでいる。食べ物、服装、家具…色々な物を売っているのが確認出来る。
(今日からここで過ごして、ハンターとして活動する拠点になるんだな…)
期待と不安が入り混じる中、チェイサーの皆と一緒にギルド登録の為にケールムントの地へ足を踏み入れた。




