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⑺『前後不覚の、メトロノーム』
⑺『前後不覚の、メトロノーム』
㈠
小説の神髄というものを、俺は知らない。ただ、メトロノームの様に、始まりと終わりまでの間、動き続ける衝動というものが、もしも小説にあったならば、俺はそれを、小説の神髄だと、認識するだろう。まさに、前後不覚の状態で。
㈡
分かること、分からないこと、それはもちろん、有る訳である。当たり前である、人間は機械的であっても、機械にはなれない。何れ埋葬されるまで、機械にならない侭、機械的に動き続ける、まるで、メトロノームの如くに、ということだ。
㈢
実際、俺ははっきりと、夢遊病の様な生活の中で、何かを見たんだ。それを見た、と言う事実が、俺を混乱に陥れる。ただ、その正体が闇に隠れ続けるのを、前後不覚の、メトロノームの様に、思い、執筆するだけの話ではあるのだが、これは、否定論を、遠ざけたい、俺の本心である。