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⒄『前後不覚の、メトロノーム』
⒄『前後不覚の、メトロノーム』
㈠
偽りのない偽り、とでも叫べば、ムンクはどう反応するだろうか。以前書いたかもしれないが、ムンクの叫びは、あの叫びの状態を俯瞰して描けているから、異常ではなく、正常だろうと思う。まさに、正常なムンクが、叫びと言う異常を俯瞰している。
㈡
同様のことは、小説でもあり得る様だが、俺には良く分からない。ただ、やはり執筆するうえで、自己の衝動を俯瞰し、文字化していることは、明白である。前後不覚の俺は、メトロノームに頼るようになった。異常な小説を、書いてみたいと言う心理もある。
㈢
我々は、どこまでいっても、不完全だから、完全なのは芸術しかないだろう。無論、不完全な芸術もあるが、始まりと終わりを持った小説は、やはり、一つの完成した状態を持っている。前後不覚な、メトロノームも、やはり始まりがあれば、終わりがあるように。