まだまだ続く性行為をしないと出られない部屋と帝国の兵隊
まだまだ続く性行為をしないと出られない部屋。
何の進展も無いまましばらく。
キオだ。
「……シ、シノブさん……」
両手を握り締めて、落ち着きが無さそうに体を揺すっている。そして困ったような表情を見て気付く。
「もしかしてトイレ?」
俺の小さい声にキオは頷く。
「おしっこ? それとも……」
「お、おしっこです……ご、ごご、ごめんなさい……」
「謝るような事じゃないよ」
むしろ大きい方じゃなくてありがてぇ。
俺は部屋の中を見回す。そして……
「ねぇ、ベリー。悪いけど死んでくれる?」
「何でだよ!!?」
「僕がおしっこしたいから」
「お前、こんな時に……」
「うるさいな。出るもんは出るんだよ。ねぇ、悪いけどリアーナとロザリンドはベッドのシーツを持って仕切りを作って」
「うん。分かったよ」
「ここでいいのね?」
「じゃあ、俺は目を瞑って耳も塞いどくよ」
さすがにユリアンはよく分かっている。同性ならまだしも、異性におしっこの音なんて恥ずかしくて聞かせられない。何も言わなくてもこういう配慮って大切よね。
「リコリスはベリーの目を潰して鼓膜を破って」
「分かったわ」
「分かるなよ!!」
「ほらベリー。暗闇の世界に旅立ちなさい」
「ぐわぁぁぁぁぁっ」
リコリスはタックルベリーにヘッドロックを掛けて、目と耳の両方を封じる。
「ほら、キオ」
「で、でも、ど、どうやって……こ、このままですか?」
「これ」
それは窓際に置かれた、何も飾られていない花瓶である。
「え、ええ……こ、ここに……」
「ちょっとシノブちゃん、それ難しくない?」
確かにこの花瓶、胴の部分は丸く太いが、首の部分は細く、そして口の部分も小さい。ここにピンポイントでおしっこを入れるのは難しいか?
「でも他に使える物も無いわね。キオ、大丈夫?」
「は、はい……が、頑張ります……」
キオは下着を脱ぎ、その場にしゃがみ込む。そして花瓶の口をそこに当てる。
……
…………
………………
作戦は無事に完了した。
「ううっ、恥ずかしいです……」
「ここに花を生けたら凄いの咲きそう」
「や、止めて下さいぃぃぃ……」
★★★
それはリコリスのふとした一言だった。
「ねぇ、シノブ。女性同士じゃ駄目なのかしら?」
「女性同士?」
「ええ、性行為は必ずしも生殖に結び付かないでしょう? だったら同性でも性欲に基づく行為なら女性同士でも良いんじゃない?」
「確かに試してみる価値はあるかもだけど……リコリスにしてはまともな発言」
「失礼ね!!」
「ちっ、余計な事を」
タックルベリーは小さく呟くが無視。
「みんなはどう思う?」
「私には分からないよ。でもシノブちゃんが試す価値があると思うなら、私はしてみて良いと思う。それに……シノブちゃんとなら……私はしても良いよ……」
段々と小さくなるリアーナの声。
「そうね、ベリーとするぐらいなら」
「わ、私も、シ、シノブさんとなら良いです……はい……」
ロザリンドもキオも。
「ほら、見ろ、ベリー。この僕の人気を」
「僕が混ざれば完璧じゃないか?」
「こいつ、ちっとも本音を隠そうとしないな。そのまま死ね」
「俺も正直、分からないからシノブに任せる」
そう言うのはユリアン。
う~ん……ただ男女に性行為をさせるだけなら俺達7人をここに閉じ込める必要は無かったはずだ。むしろ男女一人ずつの方が確実。それがわざわざ複数人という事は、リコリスの言う通り女性同士でもここを出る事は可能なのではないか……
ここで調べられる事はもう無いし、一度試しても良いんじゃないか?
その場合……俺はリアーナを見詰める。
「まぁ、この中では一番昔からの付き合いだからね。リアーナ、良い?」
「うん。もちろん」
「言い辛いのだけど……後学の為に見ていても良いかしら?」
「わたくしも!! わたくしも見たいですわ!!」
恥ずかしそうに言うロザリンドと好奇心満々なリコリス。
「キオは?」
「あ、あの……み、見たいです……」
「僕もだ。後学の為に観察させて貰おう」
「いや、ベリー、無理だから諦めろよ。そのうち本当に嫌われるぞ」
そんなワケでこれからリアーナとエッチな事をします!!
★★★
では以下は音声のみでお伝えします。
「緊張してる?」
「も、もちろんだよ」
「……えっと、じゃあ……リアーナ、キ、キスするよ?」
「う、うん」
「シノブちゃんとしちゃった……」
「……まだまだこれからだから」
「んっ」
「……見ているだけで体が熱くなるわね……」
「非常にエロいですわ」
「はうぁ……」
「じゃあ、リアーナ、服も脱ぐよ」
「うん……」
「あ、リアーナの下着は僕が脱がすから」
「そ、そうなの?……うん、分かったよ」
「じゃあ、シノブちゃんは私が脱がすね」
「お、おう」
「リアーナみたいに大きくなりたい……」
「でも可愛いよ」
「ユリアン……ちょっとだけしか声は聞こえないけどな……僕の股間は限界突破寸前だ」
「分かるから……ベリーのその報告はいらない……ん?」
「どうした? まさか射せ」
「シノブ!!」
★★★
それはユリアンだった。
「な、何? どうしたの?」
「机の引き出しが光っているぞ!!」
それはあの紙が入っていた引き出し。その隙間から光が漏れていた。
「開けるわ」
ロザリンドが机の引き出しを開ける。そして一枚の紙を手に取った。
「シノブ、これ」
その紙に書かれていたのは……
『いきなりは無理であろうから段階を設ける。第一段階は合格とする』
「合格? じゃあ、もしかして戻れるって事?」
俺の言葉に反応するように、空間は歪み、部屋の景色が消失する。そして一瞬だけ目の前が闇に包まれると、次の瞬間には元の場所に戻っていた。
廃村で見付けたあの建物の中。
「シノブ様!!」
声の方に顔を向けると、そこにはホーリーがいた。
ホーリーだけじゃない。みんないる。
「戻れたの?」
目の前にはリアーナ。こっちもロザリンド含めてみんないる。
戻れたらしい。
そして気付く……俺とリアーナが全裸な事に。
声にならない悲鳴を上げるリアーナ。
うへへっ、みんなの前で全裸……これはこれで興奮しちゃう。新しい趣味に目覚めそうだぜ!!
★★★
草原を馬で駆ける一団がいる。人数的には100人程度。
その一団を追うのはゴーレムの群れ。人とも獣とも言えない異形の怪物。
遠目からではあまり良く見えない俺。しかし獣人であるビスマルク、俺なんかより遥かに視力は優れている。
「あれは……兵隊だな。あの装備は帝国のものだ。どうする?」
「帝国とはそんな仲悪くないし、相手がゴーレムならもちろん助けるよ。みんな用意して」
ゴーレムの群れに真横からリアーナ隊とロザリンド隊が突っ込み、その足を止める。
帝国の兵隊の中で先頭を走る男性。年齢的には四十代後半だろうか。屈強な体格の男だった。男は何事が起こったのかと後ろを振り返った。
その男の横に駆け寄ったのはヴォルフラムの背中の俺。
「今、私の仲間がゴーレムの足止めをしています!! 後ろから別の仲間も来ます、反転攻勢して下さい、挟み撃ちを作ります!!」
「お前は!!?」
「私はエルフの町のシノブ、ゴーレムは共通の敵でしょう!!?」
俺はそれだけ伝えてゴーレムへと向かっていく。早くしないとリアーナとロザリンドがやられちまうぜ!!
ゴーレムの群れの中で暴れるリアーナ、ロザリンド隊。後ろからはビスマルク隊。そして正面から俺。
「ヴォル、頑張って!!」
「シノブは振り落とされないように」
「おうよ!!」
ヴォルフラムの突進、爪と牙がゴーレムを破壊。そこに……
「シノブだったな!!? 感謝する!!」
帝国の兵、先頭を駆けていた男だった。
男は馬上で剣を振るう。
そしてお互いの協力によりゴーレムを全滅させるのだった。




