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リトライ!!─救国の小女神様、異世界でコーラを飲む─  作者: 山本桐生
崩壊編

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帰還と自己紹介

 ヴァルゴ達に情報を流していたのは誰か?

 王立学校の避難通路を知っていた人物は少ないから、まぁ、すぐに判明するだろ。

 そして城塞都市。戦える人員の大半は王立学校に移動する。防御壁と人員増で王立学校を陥落させる事は難しくなっただろう。王立学校が堅守になった事により、城塞都市を占領する利点はあまり無く、他の住人のほとんどはそのまま残る。


「僕がいた時より増えてるじゃん」

 俺はロザリンドの寮部屋を見回した。そして手近にあったヌイグルミを手に取り放り投げる。

「ちょぉぉぉっと、ベリーと同じような事をするのやめなさい!!」

「あははっ、そうなんだ?」

「次やったら僕は頭をカチ割られるらしい。って言うか、本当に何だよ『僕』って。僕と被るだろ」

「じゃあ、ベリーが変えなよ。『馬鹿野郎』とかにしてみたら?」

「何で僕が自分の事を『馬鹿野郎』って呼ぶんだ、この馬鹿野郎」

「それとリアーナ」

「何、シノブちゃん?」

 リアーナが俺にベッタリとくっ付いていた。

「何って……もしかして貧乳の僕に対する巨乳アピール?」

「してないよ!!」

「だってさぁ……」

 リアーナの大きいオッパイの感触が腕に。いや、嬉しいんですけどね。

「久しぶりだから嬉しくて。だって四年間も会えなかったんだよ?」

「お互いなかなか忙しいもんね」

「ねぇ、シノブ。四年間の話を聞かせてもらえるかしら?」

「うん、もちろん」

 その上でお願いしたい事もあるしな。


「そう……人形使いの三つ首竜が黒幕かも知れないのね?」

 アイザックという不確定要素はいるが、当面はそう考えて良いだろう。

 ロザリンドの言葉に俺は頷く。

「まだハッキリとは断言出来ないけど、ゴーレムが大陸のあちこちにいるから多分そうだと思う」

 王立学校だけではない。

 ここに来るまで何度かゴーレムに襲われていた町や人も助けた。

 それにアリエリ、ヴァルゴ、単眼の奴、三つ首竜とどんな繋がりがあるのか……それも分からない。だから……

「三人の力を借りたいの」

「私はもちろん手伝うよ」

 リアーナは即答。

「そうね、これはシノブだけの問題じゃない。出来る事があるなら力になるわ」

 と、ロザリンド。

「まぁ、人が増えたし、僕達がいなくても学校は大丈夫だろ。僕も手伝ってやる」

「ありがとう。でもヴァルゴみたいなのを相手にすらから命の危険がある。だから無理に手伝ってくれなくて良いの。もう少し考えてから決めた方が良いと思うよ」

「だったらなおさらだよ。シノブちゃんだけにそんな危険な事はさせられない」

「同感ね。私とシノブは友達でしょう? 見過ごす事なんて出来ないわ」

「まとめて僕が許可を取っとくぞ。『三人休学します』ってな」

 泣きそうだ。まったく良い仲間を持ったもんだぜ。


★★★


 アルタイルの枝占い。

 地図を作りながら大陸を進む。基本は徒歩。飛竜は斥候として使う。

 時たまゴーレムを見付けてはブッ壊す。ゴーレムだけではない、大陸の混乱に乗じた盗賊等もシバき上げる。人助けもする。

 そしてこの頃からだろう。

 大陸を巡り、混乱から大陸を守る、幼い少女が指揮する集団がいると噂が流れ出したのは……


『救国の小女神』


 なんて噂をされているのを知るのはもう少し先だけども。


★★★


 そして長かったぜぇ~

 やっと帰って来たぜぇ~我が故郷よぉ~

 帰還である。

 見慣れた巨大な大森林が見えていた。エルフの町はその中に。

 竜の罠の時のように、また感動的は出迎えが!!

「お母さん!! ただいま!!」

「あら、シノブ。おかえり」

 お母さんは普通に出迎えた。あれ? 感動のハグとかは?

「……ちょっと、その髪、どうしちゃったのよ? 自分で切ったの?」

 俺の髪をお母さんが手櫛で整える。

「え? あ、自分で切ったわけじゃないんだけど、それよりそれだけ? ほら、もっと、こう、あるんじゃない? 感動の再会的な?」

「ふふっ、もう前回ので慣れたわ」

 お母さんは呆れたように笑う。

「それとここに戻って来るまでなんだけど、王立騎士団の噂を聞いたよ。大陸の混乱を収める為に活動してるって。お姉ちゃん、頑張ってるみたい」

「うちの娘は二人とも強いからね。全然、心配はしていなかったの」

 お母さんはそう言うのだった。


 お店の方でも。

「おっ、シノブが帰って来たぞ」

「ちょっと、ヴォル、何なの、その素っ気無い対応!! もっとあるでしょうよ!!?」

「髪切ったんだ?」

「そういう事じゃないよ!!」

「シノブ様、お帰りなさいませ」

「お帰りなさいませ」

 ホーリー、そしてフレアも。

「もっとぉ!! せっかく帰って来たんだから、もっとチヤホヤされたい!!」

「ほら、言った通り」

 ヴォルフラムは言う。

「どういう事?」

「はい。ヴォルフラム様とセレスティ様が『シノブの事だから何も心配はいらない。帰って来た時に優しくすると調子付く』との事でしたので」

 答えるのはホーリー。

「酷い!!」

 ホーリーは小さく笑った。

「シノブ様の事を信用していたのだと思います」

 そう言ってくれるのはレオ。

「だったら良いけどさぁ。それとレオさん、帰って来たばかりで悪いとは思うんですけど、もう少しお店をお願いできますか?」

「ええ、それはもちろん構いませんが」

「フレア、ホーリー。キオとミツバさんを集めて」

 買出し中のキオ、工房のミツバにも話を伝えないとな。


 ちなみに案の定ではあるが、サンドンも所在は分からず。地下まですら行けなかった。

 リアーナの話だとヤミも体育教師ホイッスルに反応しない。つまりアバンセ達と同じく姿を消してしまったのだろう。

 四人の竜が同時に姿を消す……面倒臭そうだぜぇ。



★★★


 お店の応接室。

 それなりの広さはあるけど、これだけの人数が集まるとさすがに狭いな。

「……って、事で僕は三つ首竜折檻の旅に出ようと思うんだけど。フレアとホーリーは?」

「もちろん私はシノブ様のメイドですので。何処までもお供させていただきます」

「私もです」

 ホーリーは即答。そしてフレアはニコニコと微笑んだまま一言。

「キオは?」

「わ、わわ、わわわわわっ」

「ほら、深呼吸」

「ふぅーはぁー、わ、私もです。シノブさんの力になりたいです」

 人数が多いせいか、メチャクチャ緊張しているキオ。そのキオも一緒に来てくれる。

「ミツバさんは?」

「一緒に行くに決まってるじゃないすか。姐さんの事をしっかりと守らせてもらいます」

「ありがとう」

「それより姐さん、その『僕』ってどうしたんすか?」

「短くなったから。伸びるまでは『僕』で行くんでよろしく」

「うっす」

 ミツバもオッケーと。

 そうなるとここで必要となるのが……

「みんな、協力してくれてありがとう。本当に助かるよ。そこで初対面の人もいるから自己紹介をしよう!! まずは僕から!!」

 お互いの事が分からなければ協力が出来ない。

「シノブ、育ち盛りの18歳。『神々の手』と呼ばれる能力を持っています」

 そこでリアーナは俺の腕とトントンと触る。

 そして小さな声で言う。

「シノブちゃん、良いの?」

 リアーナにとっては面識の無い人もいる。俺の秘密を公言して良いのか? そう言っているのだ。

「良いよ。みんなもう知ってるし。それにここから僕の秘密が漏れても後悔はしないよ」

 俺はみんなに聞こえるように言う。

 裏切られても勘弁してやらぁ……それくらい信じているのさ。そんな宣言。

「うん。分かったよ」

「……僕の能力は世界最強の力を使える事。身体強化も魔法も誰にも負けないけど、制限時間があるの。力を使った後はしばらく使えない。どれくらい使えないかは力を使っていた時間に比例する。それが僕の能力だよ」

 透けるような美しい白い髪と肌。その中で燃えるような真紅の瞳。年齢の割りに体の育ちは悪いが、その姿はどこか浮世離れしたように美しい。

 それがこの俺、シノブ様よ。


「ヴォルフラムだ。時期の森の主。今はこの姿だが、本当の姿はもっと大きいぞ」

 ヴォルフラム。

 黒に近い、灰色の体毛は柔らかくもあり強靭でもある。鋭い牙と爪を持つ狼。今は大型犬程度の大きさだが、本来の姿は元の世界で言うなら象程もある。

 俺の一番最初の友達。兄弟のように育った。

「ヴォルって呼んでね」

 俺は言う。

「この子がリアーナの言っていたヴォルフラムなのね。よろしく、ヴォル」

 確かにロザリンドとは初対面。

「ロザリンド。シノブに聞いている。ヌイグルミが大好き」

「ちょっとシノブ、余計な事は教えないで」

「あははっ、可愛らしくて良いじゃん」

「まったく。それでヴォル……シノブに聞いたのだけれど……その……背中に乗せてもらえたりするのかしら?」

 ロザリンドは恥ずかしそうに言う。

「もちろん。いつでも乗せてやるぞ」

「ありがとう。楽しみだわ」

 嬉しそうにロザリンドは笑みを浮かべるのだった。


「エルフのリアーナです。シノブちゃんとは幼馴染です。武器はハルバードを使い、魔法も得意です。よろしくお願いします」

 リアーナ。

 少しだけクセのある金色の髪。そして美しい青い瞳。何よりその体型は女性的で魅力に溢れていた。優しい雰囲気は人を惹き付ける。

 こんな可愛い女の子なのに、鬼のように強いんだぜ。

「胸の大きさが自慢だっけ?」

「した事無いよ!!」

「わたくしもあれくらいになるのかしら?」

 リコリスは隣のユリアンを見る。

「……知るか」

 顔を逸らすユリアン。

「あっ、そうだ、前から聞こうと思ったんだけど、リアーナって詠唱魔法とか使わないよな? 全部、魔道書を使った通常魔法だろ?」

 そう質問するのはタックルベリー。

 通常魔法は魔道書の魔法陣と詠唱を必要とする。

 詠唱魔法は詠唱だけで魔法を発動する。魔力の消費は多くなるが、発動までのタイムラグが短くなる。

「うん。私は魔法を最大数使いたいから、魔力の消費が少ない通常魔法だけを使うようにしているの」

「リアーナは凄いんだよ。通常魔法の発動を早くする為に魔道書を見なくても片手で開きたいページが瞬時に開けるように訓練したんだから」

 魔法を最大数使いつつ、発動のタイムラグを短くする為に、リアーナは片手で魔道書を扱う訓練をした。本の重さのバランス、指の感触で任意のページを一瞬で開く。

 まさに努力で確立した技術だった。


「ロザリンド・リンドバーグ。シノブやリアーナとは同級生よ。武器は刀。魔法剣も一応だけど使えるわ」

 ロザリンド・リンドバーグ。

 光すら吸い込みそうな黒く長い髪と黒い瞳。凛とした姿は美しい。

 一見すると怖い印象もあるが、実はヌイグルミ大好きで面倒見も良い。俺も王立学校でどれだけ助けられたか。

「魔法の力を武器に付加する技術……かなり難しい技術だと思いましたが、ロザリンド様はそれを修めているのですね」

 ホーリーの言葉に、ロザリンドは首を横に小さく振った。

「いえ、まだ使える魔法剣は少ないの。修めたなんてまだ言えないわ。それより『ロザリンド様』なんて必要無い。普通に呼んで」

「シノブ様の大事なご友人と聞いていますので。ロザリンド様を呼ばせて下さい」

「あきらめなよ。僕だって最初は『シノブ』で良いって言ったのに、言う事を聞かないんだから」

「そうなの?」

「はい。私の事はホーリーとお呼び下さい」

 ホーリーは笑顔を浮かべて頷く。

「しかし、あれから手を抜かずにしっかりと勉強をしていたんだな」

 ビスマルクの知っている四年前のロザリンドには無理な技術だった。

「四年前は何も出来ないのと一緒だったわ。今度はそうならないよう努力はしていたつもりよ」

 結果としてロザリンドは魔法剣を使えるようになった。それは全ての人間が使える技術ではない。才能の上に努力を重ねた者だけが得る事が出来る技術。

 しかもロザリンドの年齢で使える者は他にいないだろ。やっぱりロザリンドもリアーナと同じく凄いな。


「タックルベリー・ヒュンカーヒッター。魔法には自信があるけど、その他の事にはあんまり期待しないでくれ」

 タックルベリー・ヒュンカーヒッター。

 眼鏡を掛けた好青年。四年前の時点で整った顔をしていたが、成長して男らしさが加わっている。女性からの人気も高いはず……中身を知らなければ。

 しかしその魔法の能力は紛れも無く天才。これから先、まだまだその力は伸びるだろう。何処までの魔法使いになるのか今から楽しみだぜ。

「名前が長ったらしいから、みんなベリーって呼んで」

「お前ねぇ、人の名前を長ったらしいって、どんな言い草だよ?」

「愛称を考えたのはこの僕、シノブです」

「おい、お前、無視すんな」

「あっ、そうだ、アルタイルえもんが古代魔法を使えるから、後で教えてもらったら?」

「古代魔法!!? ほ、本当か!!? アルタイルえもん?」

「うん。ね? アルタイルえもん?」

「……ああ」

 アルタイルはそう素っ気無く答えるのだった。


「ビスマルク・ポーリンだ。元国境警備隊をしていた。体術が武器だな。ただ残念ながら魔法は使えない。よろしく頼む」

 ビスマルク・ポーリン。

 熊の獣人。濃い茶色をした体毛、顔も手も足も熊そのまま、二メートルを越える巨躯。鋭い爪から繰り出される一撃は俺なんか一撃で昇天や。

 そして国境警備隊と言えば王国のエリート。その実力は大陸の中でも上位である事を意味している。

「しかもパパは隊長をしていたのよ!! それがどれ程に凄い事か!! わたくしがこれから時間を掛けてしっかりと教えて差し上げるわ!!」

「リコリス」

「まずはその実力、隊長である事からもその強さは想像出来ると思いますが、パパは歴代隊長の中でも別格、その力は歴代隊長が束になっても敵わないとも言われていましたわ」

「リコリス」

「そして力だけではなく、その指揮、統率力も優れていましたわ。パパが隊長になってから警備隊に死者は出なかった……つまりそれが優れた隊長であった証」

「リコリス」

「ここで一例、あれはパパが隊長になっ、ギャンッ」

 ビスマルクがリコリスの頭を引っ叩く。

「痛っ!! パパ!!」

「いや、殴られるだろ」

「ちょっと、ユリアン!!」

「リコリス、少し落ち着きなさい」

「はい……」

「リコリスちゃん、変わらないね」

 リアーナは笑う。

 そしてキオは心配そうに呟く。

「い、痛そうです……」 


「……リコリス・ポーリンです……頭が痛いです……」

 リコリス・ポーリン。

 ビスマルクの一人娘。フワフワの濃い茶色の髪の中に見えるのは熊の耳。今は感情を表すようにパタッと倒れていた。

 俺よりも年下のリコリスであったが、すでに身長は俺に並んでいた。しかも一丁前に胸は俺よりも……悔しい。

 その表情にはまだまだ子供の可愛らしさが溢れているが、その父親譲りの体術はすでに一般の域を飛び抜けていた。

 単純な力こそビスマルクに及ばないが、素早さの面で言えばビスマルク以上かも知れない。将来が期待出来る存在だ。

「リコリスちゃんはユー君と結婚するのよね~」

「母さん!!?」

 突然のヴイーヴルにユリアンが大声を上げる。

「ちょ、ユ、ユリアン、順番ってものがあるでしょう!!?」

「今はそういう事じゃないだろ!!」

「まぁ、仲が良いとは思っていたけど、もう恋人同士だったとは」

 俺の言葉にリコリスとユリアンは同時に答える。

「まだですわ!!」「まだだよ!!」

「避妊だけはしっかりしないと」

「!!?」「!!?」

「ガハハハハッ」

 ビスマルクは笑う。

「ちょっとシノブちゃん。こんな所でする話じゃないよー」

 ベルベッティアも呆れた。


「ヴイーヴルよ~よろしくね~人と竜との混血なの~空も飛べるわ~それとユー君のお母さんです」

 ヴイーヴル。

 紫水晶のような瞳。そして同じく深い紫色をした髪の毛。温和な笑顔に、大人の女性の落ち着いた雰囲気は周りに安心感を与える。

 その若々しさは息子がいる年齢には見えない。

 そしてその容姿からは想像が出来ない程の豪腕。自身の体が隠れる程の大剣クレイモアを小枝のように振り回す。そして翼で空を翔る。これが竜の力。

「ヴイーヴルさん、旦那さんとか大丈夫ですか? 多分かなりの期間帰れなくなると思いますけど」

 俺の言葉にヴイーヴルは笑って答える。

「大丈夫よ~大陸の危機は私達の危機だもの~あの人も分かってくれるわ~。あの人の良い所はね、私が何も言」

「母さん、そういう話は後で。それに子供の前でそんな話をされると俺が恥ずかしい」

「あらあら~ユー君、思春期~?」

 そう言ってヴイーヴルは柔らかく笑う。

「そういう話も大好き。後でいっぱい聞かせてね」

 ベルベッティアも合わせるように笑うのだった。


「ユリアン。ユー君とか絶対に呼ばなくて良いから」

 ユリアン。

 ヴイーヴルの一人息子。母親と同じく紫色の瞳と紫色の髪を持つ。子供のような幼い顔の中に、男の姿、そして意思の強さが見て取れた。

 年齢に対して、その洞察力は鋭く、そして考察力もある。その場の機転で行動が出来る力は年齢離れをしていた。母親と同じくユリアンも竜の翼で空を飛び、扱う剣技はすでに大半の大人を上回っていた。

 リコリスと同じく将来が楽しみだぜ。

「ユー君」

 と俺。

「ユー君」

 とタックルベリー。

「ユー君」

 とヴイーヴル。

「本当に止めろ」

「シノブは意地が悪い」

「だってヴォル、前振りみたいなもんじゃない?」

「本当だよ、シノブちゃんもベリー君も」

 リアーナに怒られた。


「あ、あの、キ、キオです。シノブさんのお店で、は、働かせてもらっています、は、はい。カ、カトブレパスの瞳を使えます。あ、あと、あ、あんまり強くはないんですけど、け、剣も使えます……」

 キオ。

 黒に近いような灰色の髪。そして特徴的なのはその左目。虹色の瞳、様々な色がマーブル模様となり渦を巻くように流れていた。

 様々な力を持つカトブレパスの瞳。

 そしてキオは俺の役に立ちたいと剣もサンドンに習っていた。片刃の直剣の二刀流。まだまだの剣技ではあるが、そこにカトブレパスの瞳を合わせる事により無類の強さを発揮する。

 ちなみに身長は俺を抜いているが、胸は俺とお仲間だぜ、へへっ。

「綺麗な瞳……それがカトブレパスの瞳ね」

 とロザリンド。

「シノブちゃんの手紙に書いてあったよ。真面目で、可愛くて、凄い力を持った子がいるって。よろしくね、キオちゃん」

 リアーナもキオの事は手紙で知っていた。

「は、はいっ、ロ、ロザリンドさん、リアーナさん、よ、よよ、よろしくお願いします!!」

「キオは乳無いーズ三号だから」

「!!?」

「ちなみに二号はロザリンド」

「失礼ね!!」

「まぁ、一号は僕って事で勘弁して下さい」

 と俺。気持ち膨らんでいる程度……すら無い。

「……」

 その場にいた全員が言葉を失うのだった。


「フレア・ファイファーです。シノブ様のメイドをさせていただいております。身体強化魔法、防御魔法を主としております。よろしくお願いします」

 フレア・ファイファー。

 口数は少ないが微笑みを絶やさず、温和な雰囲気は周囲の空気さえ柔らかくするようだった。その性格を表すようなオレンジ色の瞳は明るく輝いている。

 肩までの黒髪、そしてシンプルであるが、だからこそ着る者を際立たせるメイド服。

 俺がフレアを一言で説明するなら、みんなの優しいお姉さんだな。

「ベリー。先に言っとくけど、メイドは夜のお世話とかしないから」

「うおぉぉぉぉぉっ!! そこで何で僕の名前を出す!!?」

「ベリー君、そんな事を考えていたの……」

「最低ね」

 リアーナとロザリンドの軽蔑の眼差しがタックルベリーに突き刺さる。

「夜のお世話って何かしら?」

「……さぁ?」

 リコリスの質問にユリアンは知らないふり。

「そんな事を僕は一度も言った事は無いだろ!! シノブ、お前、質が悪いぞ!! フレアさん、本当にそんな事は思っていないんで!!」

「……」

 フレアはただニコニコと笑っているのだった。


「妹のホーリー・ファイファーです。同じくシノブ様のメイドをさせていただいております。防御魔法を使えるのは姉と同じですが、私は身体強化魔法ではなく回復魔法に特化しております。よろしくお願いします」

 ホーリー・ファイファー。

 フレアと同じくメイド服に身を包む。髪の色も長さもフレアと同じだが、その瞳の色は違う。白に近いような青色の瞳だった。

 常に落ち着いた冷静な姿は、俺も見習いたいもんだ。

 俺には勿体無い程に有能なメイド。

「あ~そう言えば~ユニコーンの角、フレアちゃんとホーリーちゃんがシーちゃんにあげたのでしょう~? あの薬のおかげでユー君の火傷も治ったのよ~改めて、本当にありがとうね~」

 ヴイーヴルの穏やかに間延びした声。

「ありがとう。本当に助かった」

 ユリアンの言葉にフレアもホーリーも微笑む。

「そうでしたか。誰かの傷を癒せたのならクテシアス様もきっと喜んでいると思います」


「ミツバだ。シノブ姐さんの工房で働いている。まぁ、鍛冶屋なんで武器でも防具でも俺に任せてくれ。最高の出来のヤツを作ってやるからよ。ちなみに俺の武器は戦斧、魔法は使えねぇ」

 ミツバ。

 歳若きドワーフ。体は小さいが筋肉の塊。その力強さはビスマルクに匹敵するものがある。そして何よりも目立つのはそのリーゼント。その大砲みたいな髪型を何処で知ってきたのやら。

 見た目に反して、やはりドワーフ、手先が器用であり繊細でもある。

「うちのランタンはミツバさんが作ったんだよ。凄いでしょ?」

「シノブちゃんから貰ったランタンだよね? 飾りも綺麗だし、いつも使っているよ」

「リアーナ姐さんにも使って頂けたなんて光栄っす」

「ね、姐さん?」

「うっす。リアーナ姐さんにも命を救われましたんで」

「ほら、前に僕とリアーナでゴーレムを倒した時だよ」

「そうだったんだ? でも姐さんなんて、ミツバさん、普通に呼んでくれて良いですよ?」

「いえ、命の恩人なんで無理っす」

 ミツバはそう言い切るのだった。


「……私はアルタイル」

 アルタイル。

 顔、そして全身を包帯で巻くその姿は充分に異質である。しかしそれ以上に異質なのはそのシルエット。右半身は男の体、左半身は女の体。

 その声。男の声と、女の声が同時に発せられる。

 大量のスケルトンを操り、古代魔法の知識を持つ。

 見た目は恐ろしい印象を与えるが、実は優しく、面倒見が良かったりする。不思議な力を操る頼れる仲間だ。

「あれ、アルタイルえもん、ってのは?」

「私も聞いたわぁ~アルタイルえもんが名前じゃないの~?」

 そういう言うのはタックルベリーとヴイーヴル。

「……」

「アルタイルの代わりに僕が説明すると、ほら、アルタイルって見た目が怖いじゃん? せめて愛称だけは可愛くしようと思って。アルタイルえもんも了承しているし」

「……していないが」

「それとアルタイルえもんは男性なの~? 女性なの~?」

 聞き辛そうな事を簡単に聞いていくヴイーヴル。

「……どちらでもあり、どちらでもない」

「ナゾナゾかしら?」

 と、リコリス。

「そういう事じゃないと思うぞ」

 と、ユリアン。

「……両方だ」

 アルタイルはそう呟くのであった。


「ベルベッティアだよ。みんな『ベルちゃん』って呼んでね、よろしくにゃん。ベルちゃんは戦う力が全く無いの。でも死ぬ事も無いの。言葉通りの不老不死だよ。その体質を生かしての潜入や情報収集が得意なの」

 ベルベッティア。

 本人が言うにはあらゆる異世界、あらゆる時間を生き続けて存在する二股の尻尾を持つ黒猫。右目は金色に輝き、左目は青水晶のように輝く。

 彼女が首元の小さな鈴を鳴らして笑う。

「でも体の感覚は普通にあるから、痛かったり苦しかったりする場所への潜入は嫌だけどね」

「……凄いな……不老不死って……ありえるのか?」

「ありえるの、ベリーちゃん。だってベルちゃんがここにいるのだから」

「ねぇ、ベルちゃん、撫でて良い?」

「いっぱい撫でてね」

 リアーナがベルベッティアの体を優しく撫でる。

「あっ、私も良いかしら?」

「もちろんだよ!!」

 ロザリンドも。

 二人に撫でられ、ベルベッティアが喉をゴロゴロと鳴らすのだった。


 よし、これだけ仲間がいれば、きっとどうにかなるぜ!!

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― 新着の感想 ―
[一言] 今までのメンバーが集まり故郷の無事も確認できて、ようやく活動が出来る主人公達。 なおメイドさん達は夜の世話は無くても、風呂の世話はするもよう。
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