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リトライ!!─救国の小女神様、異世界でコーラを飲む─  作者: 山本桐生
崩壊編

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籠城戦と攻城戦

「待って!! 待って下さい!! 僕は敵じゃないので!!」

 勘違いされて攻撃されそう!!

 俺とベルベッティアは避難通路を飛竜で移動していた。ちなみにアルタイルは俺が思い付いた作戦をビスマルク達に伝える為に別行動。

 そして俺は進む先で王立学校の自警団と教師陣の集団に出会う。

「私はシノブ!! 前にここの生徒だったんですけど、誰か私の事を知っている人はいませんか!!?」

 飛竜から飛び降りる。

「シノブちゃん!!?」

 この声は……

「リアーナ!!?」

 集団の中から姿を見せたのは……信じられねぇくらいボインボインバインに育ったリアーナじゃねぇか!!

「えっ!!? シノブなの!!?」

「ロザリンドも!!? 久しぶり!!」

「お、お前……本当にシノブなのか? 嘘だろ?」

 ロザリンドもタックルベリーも一緒じゃないか。しかもみんな成長して大人っぽくなってやがる。

「髪型も違うし、忘れちゃったの? って何が嘘なの?」

「だってお前……髪型以外、四年前と全く姿が変わってないだろ……過去から時間飛ばしてやって来たのか?」

「バッカ野郎め!! ちゃんと少しは育っておるわ!!」

 そんな俺をリアーナがギュッと抱き締める。

「シノブちゃん、会いたかったよぉ」

「うん、僕も」

「髪もだけど『僕』? どうしたの、急に?」

 と、ロザリンド。

「髪切ったついでに伸びるまでは『僕』で行こうかと」

 その二人の足元。

「感動の再会は後にしようよ。そんな余裕は無いでしょ?」

 と、ベルベッティア。

「あなたは……ベルベッティアね? シノブの手紙にあったわ」

「ロザリンドちゃんね? シノブちゃんから話は聞いているよ。よろしくね。そしてそっちがリアーナちゃんとベリーちゃん」

 ベルベッティアはロザリンドの肩に飛び乗る。

「うん。こっちこそよろしくね、ベルベッティアちゃん」

「しかし本当に尻尾が二股なんだな」

 確かに余裕は無い。

「自警団の人も先生達も集まって下さい。私の知っている状況を教えますので」

 そこで俺は現在の王立学校の状況を説明する。

 まず、城塞都市はすでに占領されている事。

 避難通路の発見はされていないが、その存在は相手方にバレている事。

 相手の配置を考えると、目的はこの避難通路から王立学校を攻める計画である事。

 そして避難通路の具体的な出口の場所。

 その上でどうするか。

「ねぇ、相手の中に金色の目をした奴はいた?」

「ええ、金色の髪と金色の目をした男。ヴァルゴと名乗っていたわ」

「他に同じような奴は?」

「一人だけだったと思うよ」

 ヴァルゴと戦った時の事を聞かされる。戦いに楽しみを求めるタイプくせぇから、三人の事は印象に残っているだろう。陽動にはピッタリだな。

「リアーナ達は必要最低限の人数で最長十日間だけ籠城に耐えて。その間に僕達が城塞都市を開放する」

「どういう計画なの?」

「僕達と王立学校の自警団、それと先生達で城塞都市を先に開放する。そしてその後に城塞都市の人とも協力して、ヴァルゴを倒す」

「どうして先に城塞都市なんだ? 城塞都市の方が本体なら、相手の人数的には王立学校の敵を倒してから、協力して城塞都市に向かうべきだと思うんだが?」

 と、タックルベリー。それはもっともだが。

「王立学校と城塞都市、その重要性を考えたら王立学校の方が上なんだから、相手の目的は王立学校でしょう? ヴァルゴの立場で考えてみて。相手が王立学校から出て来て、自分達が負けそうになったらどうする? 援軍を頼むでしょ?」

「その援軍は城塞都市からという事ね?」

 ロザリンドの言葉に俺は頷く。

「だけどすでに城塞都市は占領しているの。そこから援軍を呼んだら、占領した城塞都市の人達がまた抵抗してくるかも知れないよね?」

 そこでみんな分かったのだろう。

「そう、みんなの思っている通り。城塞都市から援軍を呼ぼうと思ったら、まず城塞都市の人達を皆殺しにする。そうすれば全軍を援軍として呼んでも、追撃はされないから。その場合は僕達と王立学校の人員だけで両方の敵と戦う事になる」

 さすがにその戦力差だと勝てるのか怪しいだろ。

 俺は言葉を続ける。

「でも逆に城塞都市を先に攻めた場合、王立学校からの援軍はありえない。だってそこから戦力を割いたら、目的の王立学校の占領が怪しくなるから。つまりこれが最善策。他に何か良い案があれば教えて下さい」

 結局、誰からも異論は出ないのであった。


 俺は一度ここでリアーナ達と分かれる事に。

 ただその前にちょっと。

「リアーナ、ロザリンド、ベリー、ちょっと来て」

 三人と少しだけ言葉を交わすのだった。


★★★


 王立学校。

 防御壁の上でロザリンド、リアーナ、タックルベリーが駆け回る。壁を乗り越えようとするゴーレムを叩き落とし、眼下のゴーレムに魔法を落とす。

 ヴァルゴの姿は見えない。

「おいおい、お前達、出て来いよ!! 俺が相手してやるからよ!!」

 鼓膜を震える程の大声が聞こえた。

「うるさい奴だな。何処にいるか分からないけど死ね」

 タックルベリーが広範囲に火球を落とした。大爆発。

 爆煙の中、ヴァルゴの笑い声が聞こえていた。


★★★


 一方、城塞都市では……

 ザッザッザッと隊列を組んで進むのはアルタイルのスケルトン軍団。

 その後ろを、大量のスケルトンに若干怯えている自警団と教師陣。

 指揮をするのはビスマルク。その隣にはリコリスとヴイーヴル。

 城塞都市を囲むようなゴーレムの群れ。

「……」

 まずはスケルトン軍団がゴーレムの群れと激突する。基本的にスケルトンは非力であり、相手に勝つというよりも数で撹乱する事が主となる。

 ゴーレムを破壊するのは自警団と教師陣の役目だ。

 ビスマルクの指示で、的確にゴーレムを倒していく。そしてある程度に城塞都市に近付いた所で……

「リコリス、ヴイーヴル、頼んだぞ」

「わたくし、ちゃんと仕事をしてみせますわ!!」

「はいはい、任せてぇ~」

 ヴイーヴルはリコリスを抱き上げ、竜の翼で飛び上がる。城壁を飛び越えて中から扉を開放する為だ。その二人をゴーレムは撃ち落とそうとするのだが、ビスマルクが砲台のようなゴーレムを叩き潰す。

 思ったよりもゴーレムは少なく、二人は簡単に城壁を飛び越える事が出来た。

 ビスマルクは全体を見回して呟くのだった。

「……報告の半分以下かも知れないな」


★★★


 王立学校での籠城戦、城塞都市での攻城戦が同時に行われていた。

 それから数日、先に終わったのは城塞都市での攻城戦。理由はゴーレムの数が少なかったから。城塞都市を開放する。

 ゴーレムを全滅させた今、最低限の戦力でも城塞都市は少しの間だけなら持ち堪える事が出来るだろう。

 次はこの城塞都市と協力して、王立学校とヴァルゴを挟み撃ちにする。

 これは俺の計画した通りの流れ。

 リコリスは呟く。

「しかしシノブは怖いくらいね。こんなに上手くいくものかしら?」

「さらに怖いのは、この作戦が失敗した場合の別作戦も考えている所だな。あれでまだ18歳とは」

 ビスマルクも呆れたように言う。

「シーちゃんって本当に凄いのよねぇ~見た目はリコリスちゃんの妹みたいな感じなのに~アルタイルえもんもそう思わない~?」

「アルタイルえもん……」

 ビスマルク達は城塞都市から戦力を借りて、陸路で王立学校に向かうのだった。


★★★


 王立学校での籠城戦はまだ続いている。

「フッ!!」

 ロザリンドは刀を振り抜いた。斬り飛ばされたゴーレムが防御壁を落ちていく。

「あと何日だよ?」

「あと何日じゃないの。何日でも耐えるの」

「シノブちゃんなら絶対に何とかしてくれるんだから。頑張ろうよ、ね?」

「もうこっちは頑張ってんだよ!!」

「ほら、サボらない」

「サボってねぇよ!!」

 タックルベリーの魔法が炸裂。

 昼夜を問わずに攻められ、疲労が蓄積していく。それでも三人は常に最前線で戦っていた。学生、そして教師、全員がその姿に感動を受け、鼓舞される。

 王立学校は想定以上に堅い。

 しかしその堅守を揺さぶるようにヴァルゴは叫ぶのだった。まさに怒号。

「おいっ!! 聞こえるだろ!!? 城塞都市が解放されたらしいぞ!! 上手くやったらしいな!!」

 三人は顔を見合す。

「さすがシノブだ」

「うん。計画通りだもんね」

 ヴァルゴは言葉を続ける。

「でもな、本当にお前等の計画が上手くいったと思っているのか? 城塞都市が解放されたのは当初よりもゴーレムが少なかったからだ。何でだと思う!!?」

 三人はヴァルゴの次の言葉を待つ。

「ははっ、ゴーレムの大半はな、別の所に移動させたからだよ!! 何処にだと思う!!?」

 そして少しの間を置いて……

「避難通路だ!! 王立学校に繋がる避難通路にだよ!! もう避難通路の場所は分かっているんだよ!! はははははっ!!」

 ヴァルゴの笑い声は王立学校中に響いた。

 自警団も教師陣も言葉を失い、膝をつく。避難通路を使いゴーレムが攻めてくる。外にはヴァルゴ。もう逃げられない。終わりだ。すすり泣く学生もいる。

 しかし……

「本当ね……ここまで計画通りだともう呆れてしまうわ」

 ロザリンドはそう呟くのだった。


★★★


 その少し前。

 攻城戦が始まったのとほぼ同時。

 俺、ベルベッティア、ユリアンは避難通路の出口付近にいた。遠くから隠れるように出口を伺う。

 一応、隠した出口だが、それをゴーレムが見付けて、次々に避難通路の中へと下りていく。おうおう、ゴーレムホイホイかよ。列になって下りてくじゃねぇか。

 肩の上でベルベッティアは呟く。

「ねぇ、シノブちゃん……いつからこうなる事を予想していたの?」

「……城塞都市が占領されているのを見た時」

「……」

「城塞都市が占領されているのを見た時、避難通路の存在は敵にバレていると思った。なんでバレているんだろうって考えたら、学校内に内通者がいると思ったよ。だからあえて避難通路の出口の場所を教えたの」

 避難通路で最初にリアーナ達と会った時に、今の状況と共に避難通路の出口をみんなに教えていた。そこで作戦も提案した。

「もし内通者がいれば、僕達の作戦を逆手に取るはずだから」

「さらにその逆手を取るとか……悔しいけど勉強になる……」

「ちょっとユリアン、悔しいって何よー?」

「だって俺とシノブって四つしか離れてないんだぞ? あと四年あってもお前みたいになれる気がしない」

「でも僕なんてどんなに頑張ったって戦闘でユリアンに勝てないじゃん。適材適所ってヤツでしょ」

「そうなんだけどさ……」

「ううん、シノブちゃんが異常なの。目指したらダメ、性格が悪くなっちゃうよ」

「ベルベッティア、お前はよ~」


 それからしばらくゴーレムの侵入を見届け、やがてそこにアルタイルが合流。

「アルタイルえもん、ゴーレムがかなり中に入ったからよろしく!!」

「……シノブ……私はアルタイルえもんではないんだが」

「見た目が怖いんだから、名前は可愛い方が良いと思って」

「……」

 そこでアルタイルの古代魔法。木の根が避難通路の出口を破壊し、崩してしまう。

 これでゴーレムの閉じ込め完了である。

 王立学校側の方? そんなんもうリアーナ達がブッ壊しておるわ。別れる時、三人にだけ本当の計画を話してあるんだからな。

 本当の計画……それはゴーレムの大半を避難通路に誘導、閉じ込め、労せず城塞都市を開放する。そしてヴァルゴを挟み撃ちで倒す。

 ふふっ、ヴァルゴって野郎の慌てふためく様が楽しみで仕方ねぇぜ!!

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