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リトライ!!─救国の小女神様、異世界でコーラを飲む─  作者: 山本桐生
崩壊編

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避難通路と城塞都市

 それは広い、石畳の通路だった。

 横に二十人が並んでも通れる程の幅があり、上も相当の高さがある。不思議なのは天井部分が発光して避難通路内が明るい事。チオ・ラグラックの力だろうか。

 その中を進む先発隊の中に三人はいた。

「うーん、ガララントの時を思い出すな。この光っている天井とか」

「そうね……あの時の私達に今ぐらいの力があったらどうなっていたのかしら」

「ビスマルクさんも居て、リコリスちゃんも居て、多分、ガララントさんにも勝てたんじゃないかな」

「それだったら最初からあんな苦労はしなかったよな。シノブが死んだと思った時のリアーナ凄かったぞ。完全に魂が抜けていたからな」

「当り前だよ。シノブちゃんは私の大事な友達なんだから」

「今思えば、私もあの時は冷静さを失っていたわね」

「まぁ、今回はどんな事があっても冷静さを失わずに行こうぜ」

 先発隊は五十人程度。その中での学生はロザリンド、リアーナ、タックルベリーの三人だけ。それだけ頼りになる戦力という事だ。


 石畳を進む。

 人の足で歩いて半日以上は掛かる長距離。

 王立学校から歩いて半日程度の所に大きな川がある。それなりの深さと速さがあり、通路はこの川の下を通っていた。

 大陸変動後に水量は減ったものの、それでも簡単には渡れないだろう。

 そして避難通路の出口からさらに半日という近さに、小規模ながら城塞都市が存在していた。王立学校を囲んでいた程度の敵勢なら、お互いの協力で充分に対処は出来るだろう。

 事前調査でも城塞都市までの地形が変わっていない事は確認されている。


★★★


 一方のその頃の俺達。

「マジか。マジで王立学校が攻められてんのかよ」

「うん、本当。何度か王立学校側から攻めたみたいだけど、失敗に終わったみたい」

 実は王立学校のすぐ近くまで来ていたのだった。

 偵察に出ていたベルベッティアの言葉に俺は大きく息を吐いた。

 みんな無事だと良いんだけど……


 幸いだったのは、ビスマルク達と会えた海沿いの小さな町が王立学校と近かった事。本来は離れた土地だったが、大陸変動により接近していた。もちろん海沿いの小さな町時点では、そんな事は分からなかったが。

 アルタイルの枝占い、その途中に立ち寄った村で王立学校が近くにある事、そして何者かに攻め込まれている情報を得た。

 そこで先行して俺とベルベッティア、そしてビスマルクが飛竜を使い偵察へ。

 王立学校も敵の姿もまだ見えないが、これ以上近付けば敵に見付かる可能性もあるので、ベルベッティアだけがさらに先まで偵察に出ていたのだ。

「ベルベッティア、敵の数は概算でも良いから分かるか?」

 と、ビスマルク。

「うん、少なく見積もってゴーレムは五千体以上かな。でもこれは見える範囲でだけ。一応、周囲も見て回ったけど、他にゴーレムは見付けられなかったよー」

 その時にリアーナの手紙を思い出す。

 そこには自分達の三人パーティーが現状では学校最強である事、そしてロザリンドやタックルベリーの力はすでに教師達よりも強い事が書かれていた。自身の事は書いてないが、多分リアーナも同程度に強いだろう。

「ねぇ、ビスマルクさん。学校で一番強いのがリアーナ達なんだって。三人がアリエリと同じくらい強い奴と戦ったらどうなりますか?」

 アリエリと同程度の野郎がいる可能性は高い。

「……今の三人の強さは分からないが、きちんと成長していれば良い勝負をするだろう」

「それって互角って事ですよね」

「じゃあ、アリエリと同格がいた場合、他の人達でゴーレムの相手をしないとダメなの?」

 ベルベッティアの言葉にビスマルクは頷く。

「その通りだ。しかし攻めに失敗しているのだから、他の者達ではゴーレムの相手が出来ていないって事だな。シノブは王立学校にどれぐらいの戦力があるか分かるか?」

「もちろんです」

 一時期は王立学校をブッ潰してやろうと思っていたぐらいだ。それぐらい把握しているぜ!!

 俺はその数を伝える。

「……なら、どうにかなる」

「本当ですか? ちなみに僕の能力はまだ使えませんよ?」

「ああ、分かっている」

 ビスマルクの予測。自分達が加わればゴーレムを相手にしつつ、アリエリレベル二人までなら勝機はある。

 アリエリレベルが三人いる場合は危ういが、それは無いだろうと。居たら王立学校はもっと早く陥落している。

「ただこれは王立学校内との協力が必須になる。挟み撃ちの形を作りたいからな」

「ベルちゃんがどうにか頑張って侵入してみる?」

 ベルベッティアは言うが……

「無理だ。王立学校の防御壁はヌコ一匹通さないぞ。それに飛竜を使ってもゴーレムに撃ち落とされる可能性が高い」

 じゃあ、どうすれば……

「……あっ、もしかして」

 俺は持っていた地図を広げる。

「王立学校に避難通路があるとして、ビスマルクさんなら何処に出口を作りますか?」

「避難通路なんてあるの?」

「分からないけど、でも王立学校なんて重要な施設なんだから、存在する可能性は高くない? そこから逆に中へ入れないかな?」

「……ガハハハハッ、そういう事だったのか。そうか、そうだな、少し考えれば気付いたはずなんだがな、シノブ、良い助言だったぞ」

 地図を見ていたビスマルクが突然笑い出す。

「助言? 僕、何か良い事言った?」

「ああ、そうだ。見ろ、ここだ。王立学校と川を挟んだこっちに城塞都市があるだろう? 王立学校とこの城塞都市の直線上の川に橋が架かっていないんだ」

 確かに。橋はそこからかなり離れた位置に架けられている。

 元国境警備隊であり、地理に詳しいからビスマルクは気付いたのだろう。

「互いの利便性を考えたら直線上に橋を架けるべきだと昔から思っていたが、今日、謎が解けたぞ。避難通路の出口がここなんだ。だから敵に追われないように橋をあえて架けなかったという事だ」

 ビスマルクが指差すのは王立学校から川を越えた先、城塞都市のちょっと手前。

「出口を城塞都市にしなかったのは、城塞都市自体が占領されている可能性あるからですね?」

 俺の言葉にビスマルクは頷く。

「でもでも本当に避難通路があるか分からないよ? あったとしても出口は隠されているだろうし、探し出すのは短期間じゃ不可能だと思うの。そもそも地形そのものが変わっている可能性があるんだよ?」

「そうだな、全て避難通路があればの話だ」

「そんな時の為のアルタイルえも~ん!! ベルベッティアはちょっと一緒に来て」


 そんなこんなで飛竜を使い、ベルベッティア、アルタイルと共に城塞都市へと向かうのだった。

 そしてその先で見たものは……

 地形は変わらず、そこに城塞都市は存在していた。

 しかし……

「シノブちゃん……あのね、上手く隠されているけど……ここ……もうゴーレムに占領されているよ……」

 偵察から戻ったベルベッティアは呟いた。

 しかもそのゴーレム集団の規模は王立学校以上。つまりこっちが主攻であり、最初から避難通路を利用して攻め込むつもりだったのだ。

「でもこれでハッキリしたじゃん。出口は近くにある。だからこそ先に城塞都市を占領したんだよ。アルタイルえもん、いつものように枝占いをお願い」

「アルタイルえもん……」

 アルタイルは小さく呟き、いつもの枝占い。枝占いを繰り返して避難通路の出口を探していく。

 そこはただの雑木林に見える。辺りを探ってみても特段に変わった所は何も無い。目印になりそうなものも見付からないし。

 そこでもう一度、枝占い……しかし枝は倒れない。直立不動、立ったまま。

「……下だな」

「下? この地面の下って事?」

「そういう事だ」

 地面って、ただの土の地面、この下を掘れって事なのか?

「ベルベッティア掘れる?」

「無理にゃん」

 舌をペロッと出すベルベッティア。

「か、かわいい!!」

「ありがとにゃん」

「それはさて置き。アルタイル、何か方法ある?」

 それはアルタイルの古代魔法だった。今の魔法とは全く違うもの。精霊、妖精、目には見えないこの場の何者かから力を借りる。

 アルタイルが言葉とは言えない何かを呟くと、辺りに光の粒子がいくつも浮き上がる。まるで無数の蛍のよう。同時に木々の根元が動いていた。木の根がまるで生物のように波打ち、地面を掘り起こしていくのだった。


★★★


 これはリアーナ側のお話。

 そろそろ避難通路の出口は近いはず。

 そう思っていた矢先だった。

 先を歩く自警団の足が止まる。進む先に何かが見えたからだ。その数十秒後。

「飛竜だ!! 飛竜が飛んで来るぞ!!」

 先頭からのそんな声が避難通路に響き渡る。

「飛竜!!? こんな通路でかよ!!?」

 タックルベリーは魔道書を取り出した。すぐ攻撃に移れるように。

 ロザリンドをリアーナも武器を構える。

「避難通路の事は敵も知っていたのね」

「防御壁を破るより、避難通路から攻める方が楽だから」

「つまり最初から全部、相手の計画通りだったと」

 そうなる事も想定していた。そこでロザリンドは自警団と教師陣に進言する。

「避難通路を破壊して侵入を防ぎます」

 もちろんそれに反対する声はある。ここを破壊したらどうやって逃げれば良いんだと。しかしロザリンドは冷静に答える。

「この避難通路が相手に知られている以上、その対策もされているはずです。もうここから逃げるのは不可能です。そしてこのまま退却をしたら、通路を利用されて攻め込まれます。それこそ全滅です。もう迷っている暇はありません。ここを破壊します。良いですね?」

 それしか無いのだ。

 ロザリンドはリアーナとタックルベリーに視線を向けた。二人は黙って頷く。

 そして魔法を放つ直前である。

「待って!! 待って下さい!! 僕は敵じゃないので!!」

 それは女の子の声だった。それも幼さを感じさせる子供のような声。

 しかしその声を三人とも知っているのだった。その正体はもちろん……

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― 新着の感想 ―
[一言] 限られた通路の空間を飛竜で進むのって、普通の乗りてなら怖がるんだろうなぁ。頭、削りそう
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