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リトライ!!─救国の小女神様、異世界でコーラを飲む─  作者: 山本桐生
陰謀編

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王都と淀み

 さすが王都。

 マジ規模が半端ねぇ。

 見上げる程に高い城壁の中に、城下町が広がる。地方では木造や石造りの家が多いが、ここはそれらに比べてかなり近代的に見えた。

 漆喰の壁を使ったような建造物が多い。白や淡いオレンジ色、薄い黄色など、建物自体の色彩も豊か。

 そして町の中心、遠くに王城が小さく見えた。それだけでこの王都がどれだけ大きいか想像出来る。


 元の世界で言えば警察署と裁判所が合体したような施設。

 呼び出された、そしてその一室。

 俺の目前に何人もの人物が並ぶ。男も女も老いも若きも、査問員が十人近く居るんじゃね?

 スヴァル海商との関わりについて最初から話す事になる。まぁ、新技術の事だけは話さないけどな。聞かれてないし。

 そして査問員の一人は言う。

 俺の話した内容と、調べた内容にほぼ相違は無いと。

 その上で今回の話を説明された。


 俺がスヴァル海商に援助を求めて断られた後の話。

 王国に一つの告発があった。それは俺の商会に対する罰則が、過去に類が無いほど理不尽であった事。

 王国の指摘を受けて、商工ギルドは方針を転換する。これが商工ギルド加入時の罰金が無くなった理由。

 そして俺はその後にサタ商会、オリエンタル商会に商品を卸すのだが、わざとスヴァル海商にだけは卸さなかった。

 それが暗殺されそうになった理由だと言う。

 スヴァル海商としても俺の商会は魅力的だったらしく、本来は傘下に加えても良いと思っていたらしい。だがスヴァル海商は最初の商工ギルドの決定に従い、俺の援助を断った。

 しかしだ。商工ギルドは方針を転換し、俺の商会は問題無く商工ギルドに参加。しかも同じ四大商会であるサタ商会とオリエンタル商会はうちの商品を卸す事で利益を得ている。

 つまりスヴァル海商はギルドの決定に従っただけなのに、結果として不利益を被った。

 そしてその逆恨みでオウラーは俺の暗殺を企てた。

 そのオウラーの暴走を止める為に副代表のジャンスが動いた。

 そういう事らしいが……


「みなさんは本当にそういう事だと思っていますか?」


 その俺の問いに答える者は誰もいなかったのである。


★★★


 さてと。

 王都から戻りしばらくは穏やかな毎日が続くのである。


 面倒に感じる事もあるけど、一度始めると面白いんだな、髪形を弄るの。

 両サイドに一本ずつ細い三つ編みを作る。髪の毛を後ろに集め、それを三つ編みで巻いて纏める。

 ふむ、元が良いとどんなのも似合うぜ。

 とりあえず今日はサンドンの呼ばれてんだよな~せっかくだから可愛い髪形を見せてやるぜ~

「どんさ~ん、来ましたけど~」

「だからわざと間違えるなと何度も言っておろう」

 フワフワの白い毛玉、サンドン、縮小バージョンである。

 あはははっ、と俺は笑う。

「でもサンドンの方から呼び出すなんて珍しい。何かあったんですか?」

「瞬間移動装置の事なんだが、何故、頻繁に使わせないか知っているな?」

「サンドンがケチだから」

「違う!!」

「危険だから」

 サンドンが言うには瞬間移動とは『人形をバラして移動して組み立てる』、その作業に似ているんだそうだ。

 滅多な事では組み立ての間違いなど起きないが、その回数が数百回、数千回になるとどうだろう? 組み立ての間違いが起きるではないか?

 その為、あまり回数を使わせない事にしていた。

「今、考えるとそれって竜脈を利用しているんじゃないですか?」

「なら話が早い。その竜脈に僅かだが淀みを感じる。本来なら私が対応するべきなんだが、竜脈に少しでも異常がある今、ここを動きたくないのだよ。そこで信用の出来る者に確認をして欲しいのだが……頼めるかな?」

 竜脈は瞬間移動措置だけではない、この大陸の安定にも関係している。

「もちろん。サンドンは大事な友達ですしね。それと今日の髪形、可愛くない?」

 俺はクルッと回る。

「確かにいつもと違うな」

「チッ」

 それだけかよ。これだから竜って奴は!!

「舌打ち……」


★★★


 竜脈の淀みの影響がどんなものなのか分からない。しかし竜脈が大陸の安定に関係している以上、少しでも早い方が良いだろ。

 俺達はアバンセでサンドンに聞いたポイントに向かう。聞いた話では近場に小さい町があるらしい。とりあえずそこで情報収集だな。

 雲のさらに上、アバンセが空を駆ける。

 その背中にはヴォルフラム、キオ、フレア、ホーリー、ミツバ、俺の六人である。

「アバンセは竜脈の淀みに気付かなかったの?」

「俺から出た力の流れなら分かるかも知れないが、サンドンの力の流れだからな」

「ふ~ん、アバンセは離れて大丈夫なの?」

「住処を替えたり、数十年単位で離れれば影響もあるかも知れないが、これぐらいなら何も問題は無い」

「あれ? そうなの? だったらもっと頻繁にアバンセに乗せてもらえるじゃん」

「遠慮していたのか?」

「まぁね」

「そのわりには随分と乗り物代わりにアバンセを使っていたけど」

「はい、ヴォル、そういう事は思っていても言わない」

 アバンセの背に乗り半日。

 大森林の外、草原の地を越えて、連なる山脈が迫る。目的地はこの山脈である。目的地まではもう少し。

「ちょっと待って!! キオ!!」

 見えたのは立ち上る煙。

 すぐさまにキオがカトブレパスの瞳を発動する。

「ま、町が襲われています!!」

「……全員、振り落とされるなよ」

 アバンセは言うと同時に高度を上げ、その巨体を傾ける。

 その一瞬の後。

 アバンセの脇を、轟音と共に光の柱が突き抜けた。

 それは地上から放たれた光のように輝く高温の熱線。一瞬にして周囲の空気がチリチリとした熱を帯びる。

 連続して打ち込まれる攻撃をアバンセは余裕で避けるが……その目の前に……雲の中にでも隠れていたのだろうか、現れるのは大量の飛竜。

 体格はアバンセに勝るとも劣らない巨体。そして金色の鱗。

「ちょっと待って、あれ、ゴーレムじゃん!!」

「そのようだな」

 二年前。

 エルフの町を襲った、機械仕掛けの飛竜型ゴーレム。それより一回り以上も大きいのが目の前にいる。まさか竜脈の淀みに三つ首竜が絡んでいるのか……

「ヴォル、この高さから飛び降りられる?」

「さすがに無理。雲の上からだぞ?」

「シノブ様。私と姉が魔法でヴォルフラム様を補助しますので」

「信じる。キオも良い?」

 キオは一瞬だけ下を見下ろして息をのんだ。しかし。

「も、もちろんです」

「ミツバさんは?」

「俺は逆に楽しみっす。こんな機会はありませんからね」

「分かったよ。アバンセ、私達はここから飛び降りるから、空の上はお願い。町は私達が何とかする!!」

「しかしだな……」

「三つ首竜がいるならアバンセだって背中の私達を気に掛けながら戦えないでしょう? って事で行くからね!!」

「おいっ!!」

 俺達はすでにアバンセの背中から飛び出していた。

 クテシアスの時もアバンセの背中から飛び降りたが……それとは比較にならない程の高さ。

「ふおぉぉぉぉっ」

「ううぅぅぅぅっ」

 下っ腹がキュゥゥゥゥッてするぅ!!

 俺もキオも必死にヴォルフラムの体に掴まる。全員が飛ばされないようにフレアは防御魔法を展開した。それは全員を囲む魔法陣のカプセル。それと同時に下から撃ち込まれる光の熱線を弾き飛ばす。目を細める程に眩しい閃光の連続。

 轟音と光の明滅に頭が痛くなりそうだ!!

 落下をしているのだが、あまりの高さに落ちている感覚はあまりしない。ただ宙に浮いている感じ。だがそれも最初だけ。

 地面がどんどん迫ると急に落下している感覚が。木々の緑もハッキリ見えてくる。

 フレアとホーリーは打ち合わせをしていないにもかかわらず……

 フレアは防御魔法陣のカプセル、その下部分だけを解いた。ホーリーが次の防御魔法を展開出来るように。

 ホーリーの防御魔法はフレアと違い、それは平面の魔法陣。それをヴォルフラムの下、等間隔に何重にも張る。

 そしてそれは絶妙なタイミング。

 何重にも展開した魔法陣の一番下部分が地面に激突する。その衝撃を分散させるように激突した部分の魔法陣を瞬時に解く。結果、ほんの少しだけの減速。

 それを何度も繰り返し、落下スピードを遅くしていく。

 最後はヴォルフラムが着地。

「……正直、ちょっとちびった……」

 申し訳ねぇ。

 そんな俺達を今度は真横から熱線が。

 しかしフレアの防御魔法陣は健在。熱線を遮る。弾ける熱線は周囲の木々と地面を焼き尽くした。

 そして熱線を防ぎつつ、キオが周囲の索敵。ここも含めて、すでに町はゴーレムに包囲されていた。そして一部のゴーレムが町を襲っているらしい。

「フレアとミツバさんはここをお願い。退路の確保で。キオも一緒に残って、ゴーレムの正確な場所を二人に伝えて」

「承知しました」

「了解っす!!」

「は、はい!!」

 三人がヴォルフラムの背中から飛び降りる。

「私達は町まで行くよ、ヴォル、お願い!!」

「分かった」

 まさに疾風迅雷。俺とホーリーを乗せたままのヴォルフラム。四方八方から放たれる光り輝く熱線を俊敏な動きで避けて駆ける。

 喉が焼けるような空気の中、凄まじい速さで町へと向かうのだ。

 その途中でパルを呼び出す。ここまでアバンセの翼で半日。すぐに到着するとは思わないが、相手は三つ首竜、パルの力が必要になるかも知れない。


 そして……

 町から逃げ出す人々。何処に向かえば良いのか分からず右往左往としている。

 すれ違う人達に向けて、俺は叫んだ。

「あっちです!! あっちの方は敵が少なかったです!!」

 俺は今来た方向を指出した。向こうでは三人が退路を確保すべく敵を減らしているはず。ゴーレムの包囲網を抜けられるなら、そこが一番。頼んだで三人とも!!

 俺の言葉の真偽など確認する余裕など無いのだろう。一部が向かうと、それに続くように人の列が出来る。

「ホーリー。逃げる人達の誘導と怪我人がいたら回復。一人で大変だろうけどお願い出来る?」

「……承知しました。シノブ様とヴォルフラム様は?」

「もちろん。ゴーレムを全部ブッ壊してやるんだよ」

 俺は笑った。

 何の目的があるか知らんが、全部スクラップにしてやんぜ!!

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