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リトライ!!─救国の小女神様、異世界でコーラを飲む─  作者: 山本桐生
地下大迷宮編

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鉄の扉と廻し受け

 後日。

 町の住人全員に今まで行われていたダブロー達の悪行が伝えられる。それと同時に、被害者が少ないながら名乗り出てくれた。名乗り出られない女性も多くいるだろう。

 結果としてダブローを含めて関わった加害者全員がこの町を追放となる。

 この町を追放され、迷宮内で生きられるのか……分からんが、俺達が気にする事はねぇ。自業自得、かわいそうとも思わん。

 そして俺達がガララントを倒そうとしている事も伝えられた。この町を出たい者がいれば俺達に協力しても構わないともグレゴリは言う。

 もちろんそれに反対する者達もいるが、今回の事件もあり、町の現状維持は難しいとも感じているらしい。なので流れに任せる雰囲気が強い。


 リアーナ、タックルベリー、ビスマルク、リコリスはそんな住人達の対応をしていた。

 そして一室で俺はロザリンドと打ち合わせ。

「これからどうするつもり?」

「ロザリンドだったらどうする?」

「どうもしないわ。今まで通り、ガララントの元を目指す。ガララントの元にさえ辿り着ければ、後はシノブがどうにか出来るのでしょう?」

「まぁね」

「聞いたわ。シノブの能力」

「黙ってたの怒ってる?」

「理屈では分かっているの。能力が切れた後のシノブは本当に何も出来ないのでしょう? もしその事が他に漏れたなら命の危険に繋がる。だからこそそれを知っている人は少ない方が良い」

「そうだね」

「でも……それでも……信用されていないようで寂しいわ」

「ごめん」

 その俺の頬をロザリンドの指先が摘む。

 そしてギュゥゥゥゥゥッと抓る。

「ひょ、ひょっとロヒャリンロ!!?」

「これで許してあげる」

 ロザリンドは笑うのだった。


★★★


 今日も今日とて迷宮の底へ底へと潜る。

 過去、何度かガララント討伐自体は行われていた。最後の討伐が二十年前。毎回毎回、帰還する者は誰一人としていなかった。

 でもな、そこまでの地図が記録として残されていたんだよ!! しかも迷宮変化パターンまで!! 先人の皆様、偉いっす!!

 そしてヌルゲー過ぎるぅぅぅぅぅっ!!

 基本的に先行はロザリンドとビスマルク、後方をリアーナとリコリスが固める。どんな敵が現れようとも軽く突破。

 真ん中に位置する俺、タックルベリーは補助役だが、う~ん、楽。

 それはさて置き……引っ掛かる事がある。

「ねぇ、ベリー」

「ん? どうした? ウンコか?」

「違うわ!! ウンコぶつけんぞ!!」

「じゃあ、何だよ?」

「私達が出られないのは竜の罠が原因なのかな?」

「……どういう事だ?」

「これ」

 取り出したのは野球ボール大の球体。学校から支給された脱出魔法道具。

「どうして発動しないと思う?」

「それは前にも言ったけど、これが竜に属する者との契約で成り立つ道具だからじゃないか?」

「ほら、ここには学校の調査も入ったって言ってたよね? 学校関係者である調査団の人達が、学校から支給される道具を持っていなかったなんて考えられる?」

「……確かに。調査において脱出手段は最優先事項だ。持っていないなんてありえない……」

「でも竜の罠は発動しなかった。それってつまりこの道具は竜とは関係無いもの。これが使えないのは別の阻害要因があるんじゃない?」

「一理ある」

「……って、事で、ベリーよろしく」

「おい」

「ベリーの専門分野でしょ? もしかしたら重要な事かも知れない。だからベリーに頼むの。お願い」

「お前ね……そんな事を言われたら断れないだろ……」


★★★


「うぉぉぉぉぉっ、なんじゃこりゃ!!?」

 俺は目の前の光景に失禁しそうになる。

 広く開けた空間。そこには岩で形作られた巨大な竜。そのサイズ、体長十メートルを優に超えているように見える。って言うか、これティラノサウルスじゃん!!

 近接戦闘はロザリンドとビスマルク。

 力で正面から打ち合えるとも思えないので、相手の攻撃を避けつつ、こちらの攻撃を入れる。

「ハァァァァァッ!!」

 ロザリンドの刀が皮膚のように見える岩を削り落としていく。

「ウォォォォォッ!!」

 ドンッ、ドンッ、ドンッ、と連続で響く打撃音。体術主体のビスマルク。繰り出される鋭い爪と蹴りとがティラノサウルスの体に叩き込まれた。まさに圧倒的強さ。

 そして中距離ではリアーナ。魔法で攻撃しつつ、ハルバードでも攻撃を加えていく。

 遠距離ではタックルベリー。こっちは援護。

 さらにさらに後方では。

 俺が周囲の変化に気を配る。何かしらの変化を見逃せば、それが死に繋がるかも知れない。俺なんぞが助けに入れるとは思わないが、それでも警戒しないよりはマシだろ。

 そんな俺を護衛しているのがリコリス。

 俺より年下ではあるが、戦力としてはその辺りの大人より格段に強い。時たま飛んでくる岩の破片を叩き落としていた。リコリスがいなければ石礫で俺は既に死んでおるわ。

 見守っているだけで終了。


 そんな感じを何度も何度も繰り返して到着しましたよ。


 目の前に巨大な鉄の扉。

 その高さ、ビスマルクの倍。見るからに重そうな扉は、俺じゃビクともしそうにねぇ。

 聞いた話ではこの先にガララントがいるはず。

 ダブローの件から約一ヶ月。俺の能力も再度使えるようになった。体力、気力、共に充分。この扉を進んだら最後、もう戻る事は出来ない。勝つか負けるか、生きるか死ぬか。

 万が一の事を考えれば……

「私一人で行くのがベストなんだけど」

「何回も言ったよね? それはダメだって」

 リアーナの意思の強さが、その表情に表れているようだった。

 何があるか分からないから一緒に行くと言う。

「でも全滅する事は無いよ」

「シノブが勝てないのなら、私達が勝てる可能性はほぼ無いと思うわ。もうここから出られない。それじゃ死んでいるのと同じじゃない」

「でもいつか誰かが助けてくれるかも知れない。学校の先生とか、私達がここに来たの知ってるわけだし。それにリアーナとロザリンドなら、将来的に強くなって勝てるかもよ?」

「どれくらい強くなればガララントに勝てるの? 分からない以上、考えても無駄だわ」

 駄目だわ、ロザリンドも意思が固ぇーわ。

「ちょっとベリー」

「あー、無理無駄無理無駄無理無駄、リアーナもロザリンドも説得出来ないって。僕は今危険を冒してまで戦う必要は無いと思うけど、パーティーだからな。行くなら一緒に行くさ」

 生死が掛かる今、逃げ出したとしても文句を言う者はいない。それでもタックルベリーは一緒に来ると言う。

 コイツ、エロい野郎だが、男前だぜ。

「もちろん私も行くぞ。シノブがどんな力を持ってガララントに対抗するのかは分からない。ただリアーナとロザリンドを見ていれば勝機がある事も分かる。私もそれを信じよう」

「でもリコリスはさすがに……」

「私はお父さんがいない世界で生きていこうとは思いません。お父さんが行くなら私も行きます」

 意外だったのは、それをビスマルクが認めた事。

 リコリスは騙してでも置いてくると思ったんだけどな……本当に意外だ……

「分かった……じゃあ、みんなでガララントをちょっくらシバきに行こうか!!」

 そしてビスマルクが重い鉄の扉を開けるのだった。


★★★


 そこは岩を刳り貫いた洞窟では無かった。石造りの巨大な部屋。天井の高さが分からない、広さの推測が出来ない巨大な空間。

 光源がどこにあるのか分からないが部屋の中は明るい。明らかに人工的な造り。

 取り合えず扉を開けたままにしてみる。

「やっぱり扉を開けたままだとガララントは現れないね」

 これも記録の通り。

 一度扉を閉めて、再度扉にビスマルクが手を掛けるが……

「……開かないな」

 閉じ込められた。

 

 そして少しの静寂の後、目の前に一人の竜が現れる。

 美しい竜だった。紫水晶で彫刻されたような光沢のある鱗。

 アバンセより小さな体格だが、それでも俺程度なら丸飲みしそうな程にデカいな。

「ガララントだ。後は頼んだぞ」

 そう言ってビスマルクは後ろへと下がる。それに続くように俺を残してみんな後ろに。

 そしてリアーナ、タックルベリーは自分達の周りに防御魔法を展開させた。

 俺はガララントを見据える。高位の竜なら俺の言葉も分かるはず。

「初めまして、ガララント。私はエルフの町のシノブ。話をさせて下さい」

「その小さな体、年齢もまだ十代の前半かな。よくここまで辿り着きました。私がガララントです」

 それは凛と響くような女性の声。

「私達は竜の罠の発動でこの迷宮に閉じ込められました。そしてここから出られないようにあなたが力を使っていると聞きます。もしあなたが私達を地上に戻す事が出来るのなら、力を貸して頂きたいのです」

「竜の罠。なら私の境遇を知っているはず。あなた達は罠で私を捕らえ殺そうとしたのに、今度はその私に力を貸せと言う。随分と勝手な物言いだと思いませんか?」

「私にはあなたの気持ちが分かるなんてとても言えませんが、その言葉はもっともだし、理解しようとも思います。そして私達はあなたが竜の罠から解放される手助けをするつもりです。だからお願いです」

 少しの沈黙の後、ガララントは言う。

「……断ります」

「どうしてでしょうか? 私達自身には無理かも知れませんが、知人には優秀な知り合いがいます。絶対に力になれる筈です。これを見て下さい」

 俺は体育教師ホイッスルをガララントに掲げた。

「それはアバンセとパルの力を宿していますね……確かに私を解放するだけの力を持った知人がいるようですが、それでも断ります。私はあなた方を信用していない」

「ではどうすれば信用して頂けるのでしょうか?」

「必要ありません。あなた方は私を倒せば良い」

 ガララントの口が大きく開かれた。

 次の瞬間……

 ゴオォォォォォォッ……轟音と共に灼熱の息吹。

 輝くような高温の炎が俺へと叩き付けられた。リアーナの叫びに近い、俺の名前を呼ぶ声。心配すんな、大丈夫だからよ!!

 俺は能力を開放した。そして両手で円を描くようにして炎を散らして防ぐ。

「マ・ワ・シ・受ケ……見事な……」

 ビスマルクが呟く。

 それは空手における防御の基本の動き。あらゆる受け技の要素が含まれる廻し受け。受け技の最高峰だ。

「矢でも鉄砲でも火炎放射器でも持ってこいやァ……」

 前世で動画サイトを見ていて良かったぜ。淡い光を纏った俺はニヤリと笑うのだった。


★★★


 ガララントは崩れ落ちた。

 強くはあるが、アバンセやパル程に強くはない。むしろ思ったより弱い? 感覚的にはリアーナ、ロザリンド、ビスマルクで勝てるぞ。

「勝ったの?」

「それがシノブの本当の力ね?」

「お前の体が光っているのはまだ力が続いているからか?」

 ……本当に長い間、ガララントを誰も倒せなかったのか?

 その瞬間に嫌な予感。

「……みんな離れて!!」

 ヤバイ!! ヤバイ!! ヤバイ!! せめてみんなの逃げ道だけは!!

 俺は扉に向けて魔法を撃ち出す。それは白く輝くような熱線。扉がただの鉄なら蒸発する程の高温。

 しかし扉には何かしらの仕掛けがあるのだろう、高温に耐えている。だがそれでも……俺の力なら出来るはず!!

 熱線に強大な魔力を上乗せする。

「……貫け!!」

 熱線が扉を突き抜ける。これで退路が出来た。

 そして感覚で分かる。残り少しの制限時間。俺の力が尽きる。

「早くみんな逃げて!!」

「シノブちゃん、どうい」

 言い掛けるリアーナをロザリンドが遮る。

「行くのよ!!」

 さすがロザリンド、判断が早い。助かるぜ。

 そこに響くのは……

「勘が良い」

 ガララントの声。

 ……そう、さっき倒したガララントは偽者。

 もう俺には本物のガララントを倒す時間は無い。出来るのは少しでもみんなが逃げる時間を稼ぐ事。

 多分……俺は助からない……

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