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リトライ!!─救国の小女神様、異世界でコーラを飲む─  作者: 山本桐生
地下大迷宮編

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探索魔法と巨大熊

「本当にゴメン。私のせいで」

「どうしたの急に?」

 ロザリンドは不思議そうな表情を浮かべる。

「ハッキリ言って、この地下の規模が全く分からない。命の危険だってある。こんな状況になったのは、事前に何も調査しなかったパーティーリーダーの私のせいだ」

「王国や学校も含めて事前調査はしていたわ。それで安全だと認められていたのよ」

「でも竜の罠が発動したのは私が持っていた笛のせいだよ」

「それを言うなら私のせいでもあるよ。私だって笛を持ってるんだから」

「そもそも探索依頼なんて安易に受けるんじゃなかった。それにロザリンドはパーティーメンバーでもないのに……本当にゴメンね」

 本来なら洞窟に入る前にも土地の管理者なり何なりに相談して、不測の事態にも備えるべきだった。なのに必要な事前準備を全くしていない。

 我ながら間抜け過ぎる。

「まぁ、僕の事は気にするな。その代わり、後で絶対にサンドンと会わせろ。絶対にだぞ」

「私は冒険者になるつもりだから、これくらいで何とも思わないよ。だからシノブちゃんもあまり気にしないで」

「確かにリーダーはシノブだけど、メンバーになったのも、探索に入ったのも私自身の意思だわ。謝る事なんて何も無いと思うけど」

「……だよね~、考えてみれば私は悪くないわ~。ほらだけど一応はリーダーじゃん? 責任感って言うか、謙虚な部分も必要かと思って」

「シノブちゃん……そういう事は口に出して言ったら駄目なんだよ……」

「最低だ……うちのリーダー様は……それよりリアーナ、冒険者になるつもりだったのか?」

「え、うん、そのつもりだけど……」

「それは私も知らなかったわ」

「変かな?」

「変って言うか、意外だよな。冒険者なんて言い方を変えているだけでホームレスじゃないか」

「ホームレス!!?」

「それは確かに言い過ぎだと思うけど、住居を持たない辺りは同じなのかもね」

「ロザリンドちゃんまで!! ちょっとシノブちゃん、何か反論して!!」

「いや、私もベリーと同じ意見だし」

「酷いよ!!」

「……みんな、ありがとうね」


★★★


 用意をされた飲食品は三日分。そのうちの半分が消費される。これから必要なのは食料と水の確保だ。その辺りのサバイバル術はサンドンに叩き込まれているわけだが、魔物を捌いて血肉でってのは出来れば回避したい……

「シノブ。階段があるわ」

 先頭を歩くロザリンドは言う。

 そこには下へ続く階段。

 出入口は見付からない。中の構造は変わり、全てを網羅する事も出来ない。階段を下りるしかない。しかし階下はここ以上に危険な場所の可能性もある。

「比較的に安全なこの階を探索していれば、いつか出口が見付かるかも知れないぞ?」

 そうタックルベリーは言うが……

「これだけの大掛かりな仕掛けがある所だよ。そんなに甘くないと思う。それに進んでも留まってもどうなるか分からないから」

「じゃあ、下りるのね?」

「下りない」

 ロザリンドの言葉に俺は即答。

「ちょっと、シノブちゃん?」

「下りるしかない選択肢が気に入らない」

「気に入らないって、お前はワガママっ子か?」

「もし私ならこの階段に罠を仕掛けるよ。だって下りるしかないんだから」

「じゃあ、下りないのね?」

「下りる」

 ロザリンドの言葉に俺は即答。

「ちょっと、シノブちゃん?」

「おっと、この子、ワガママが過ぎる」

「この階段に罠を仕掛ける、って言ったけど、その可能性は低いと思うんだよね。だって殺傷目的なら、この階にだっていくらでも罠を配置出来たんだから。そんなわけで大丈夫だと思うけど、まずは私だけで様子を見て来るよ」

 罠が無ければそれで良い。罠があっても心構えをしておけば、俺の能力の発動も間に合うはず……多分。

「馬鹿な事を言わないで。シノブはリーダーでもあるのよ。危険があるのならまずは私が先行するわ」

「私なら大丈夫だから、そうだよね。リアーナ」

「ちょっとリアーナ、アナタからも言ってあげて。そんな事は認められないって」

「……」

「……リアーナ?」

 階段の下に鋭い視線を向けているリアーナ。そして腰から魔導書を取り出し、ページを開く。

「シノブちゃん、探索魔法を使うね」

 リアーナは言うと同時、すぐに魔法詠唱を始めた。

 探索魔法……それは自らの魔力を飛ばして、周囲の状況を確認する魔法。ただ無機物などの構造は分からず、地形などの確認は出来ない。確認出来るのは周囲の生物の有無。しかしこちらの魔力を接触させる事で有無を判断するため、魔法に長けた存在や感覚の鋭い存在には、こちらの事も伝わってしまう。そのため使い所が難しい。こういう場所で使えば、感覚の鋭い野生動物を刺激して襲われる事にも繋がるからだ。

 リアーナから放たれた魔力の波が周囲に広がる。

「凄いわね。これだけ静かな魔力だと、気付ける人も少ないんじゃないかしら」

「まぁ、僕クラスなら余裕で気付くけどな」

「……私には全く分からん……」

 俺にはリアーナの魔力を全く感知が出来ない。

 そして魔力を飛ばして数十秒。

「やっぱり……下の階に誰かいるよ……それにこれ……戦ってるみたい……」

 リアーナは言う。そしてエルフの耳がピクッと反応した。

「女の子の声で『お父さん』って聞こえたよ!!」

「……父娘がいる?」

「こんな所に父娘がいるわけない。聞き間違い、もしくは僕達を誘う罠だろ」

 ロザリンドの言葉をタックルベリーがすぐに否定するが……

「行くよ。もしかしたら私達が竜の罠を発動させた時に巻き込まれたって可能性もある」

 罠かも知れない。しかし本当に父娘が襲われている可能性だってある。その可能性がある限り、やっぱり無視は出来ない。

 俺の言葉にリアーナもロザリンドも頷いた。

「はいはい、了解しました」

 そしてタックルベリーは大きな溜息を一つ吐いて頷くのだった。


★★★


 結果として階段に罠は無かった。

 下階も岩を刳り貫いたような構造だったが、岩の天井も壁も淡い光を放っていた。ただ現時点でこの発光にはどのような力が働いているのか全く分からない。

 そしてそんな場所に居たのは甲冑を装備した巨大熊と一人の少女だったのだ。

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