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リトライ!!─救国の小女神様、異世界でコーラを飲む─  作者: 山本桐生
王立学校編

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完全優勝と卑怯者

 今朝は久々に自分で髪やるか。

 今まで避けていたが、今日はやったる!! ツインテールを!!

 漫画やアニメでは見るが、現実にはなかなか見ない髪形なので避けていた。しかし俺の可愛さなら問題無く似合うはずだぜ!!

 耳よりも高い位置で髪の毛を左右二つに分けて纏める。かっ、可愛いわ、俺!! 簡単だし、しばらくこれで行こう!!

「どうしたの? 鏡をそんなに見詰めて」

「いや、私って可愛いなと思って」

「まったく、あなたは……」

「ロザリンドも学校行くの? 体は大丈夫?」

「大丈夫よ。ただの打ち身だけだしね。それとシノブ、今日は学校の後に色々と話を聞かせてね」

「うん、良いよ」


★★★


 教室に入ると、今までとは全く違う反応。

「シノブさん、おめでと~まさかロザリンドさんのパーティーに勝つなんて」

「俺は一回戦も厳しいと思っていたけど、まさか優勝だもんな」

「いやぁ、作戦とかって大事だわ。作戦によっては格上の相手にも無傷で勝てるんだな」

「凄いよなー、しかも模擬戦が行われるようになって初なんだぞ。完全優勝って」

「ロザリンド相手にして、誰一人として脱落しなかったって本当に凄いよ」

 そう、模擬戦で一回戦から最終戦まで、俺達のパーティーは誰一人として脱落をしていない。しかもロザリンドを相手にしての、まさに完全優勝。

 こんな事は王立学校の長い歴史の中でも初めて。

 凄い、凄いと言ってくれる反面……

「何だよ、あの戦い方。あんな恥ずかしい格好までして勝ちたいのか」

「勝てれば何しても良いってもんじゃないだろ」

「あんな作戦、たまたま上手くいっただけ」

「特別学部に相応しく無い戦いだね」

「卑怯者」

 と反応は二極化である。

 まぁ、当然か。俺みたいな何処の出か分からない途中編入野郎が優勝したんだから。王族、貴族に繋がる生徒達は特に気に入らないだろう。

「まさか本当に優勝しちゃうなんてね」

「ふぉっふぉっふぉっ、マルカ君。次はパーティーを組んでやろうではないか。私が勝利の美酒を味合わせてやろう」

 マルカは笑う。

「やめとく。次はシノブにお返ししてやるんだから」

「そっか」

 俺も笑った。

 向こうでは俺と同じくリアーナも他の生徒達に囲まれていた。

 今日一日は大変そうだな。この後には校長に呼ばれているし。 

 

★★★


 高そうな机と椅子とソファ。

 校長室って、さすがに凄いな。猫が爪研ぎしたら大変な事になりそうだぜ。

 俺、リアーナ、ミラン、タックルベリー、レイラ、五人に王立学校長チオ・ラグラックから労いの言葉。その最後。

「シノブさんはちょっと残って、もう少し話をさせて下さい」

「……はい」

 そうして校長室に一人残される俺。

「今回は能力を使わなかったのですね」

「神々の手……でしたっけ。すいませんが私にそんな力はありませんので何かを期待されても困ります」

 この野郎。

 最初に俺がパーティーを組む時、ディンの妨害工作があった事を担任先生は絶対に知っていたはずだ。それを黙認したのであればそれは上からの指示。

 そして三回戦、突然のルール変更。戦力の低さを補う為、入念に下調べをして作戦を立案をする俺達にとっては不利なやり方。そんな突然の変更もやはり上からの指示だろ。

 つまりコイツだ馬鹿野郎。

 この校長が俺の能力を見たいが為に、少しでも不利な状況を作り出していやがったんだろ。シバいたる、この校長、後でシバいたる。

 しかも自分がララ・クグッチオである事を匂わせれば、俺が白状すると思ったか、この野郎。美人なお姉さんだが、やっぱり後で絶対にシバき倒したる!!

 校長は大きく息を吐くのであった。


★★★


「さて。シノブ。話を聞かせて貰いましょうか」

 寮で待ち構えるのはロザリンドだ。

「まぁ、良いけど。でも次の参考にはならないよ? みんなが油断してくれたからこそ成立した作戦だし」

「いいから」

「はいはい」

「一回戦。崖の上で罠を張っていたのよね。もしマルカ達が先に崖の上を取っていたら、どうするつもりだったの?」

「別の場所で待つ。私達にとって重要なのは相手に『どこかで待ち伏せをされている』って思わせる事だったから。地形的にそんな場所はいくらでもあったよ。マルカがそう思わず、五人全員で攻めて来たら、そのまま待ち伏せて攻撃すれば良いし」

「じゃあ、一回戦で一番、相手にして欲しくなかった事は?」

「そうだねぇ……マルカ達パーティーの性質的に難しいとは思うけど、身動きせずにジッと耐えられていたら困ったかも。相手も強いから手が出し辛いし。こっちの作戦は相手の動きに合わせたものが多かったからね。そうなったら持久戦になって、どっちに勝負が転ぶか分からなくなる」

 そんな感じでどんどんと質問が。

 俺も考えてはいたが使わなかった作戦がいっぱいあるので嬉しい!! もっと説明してぇ!!

「私達との対戦。リアーナとレイラが入れ替わる作戦。いつから考えていたの」

「最初から」

「そうよね、だからリアーナに容姿の似ていたレイラを仲間に入れたのでしょうし」

「鉄仮面もビキニアーマーも印象付けで、それを身に付けていればリアーナだと誤認させる為。マントは入れ替わった後、細かい動きでバレないように体を隠す為。魔女帽子も顔を見せないようにする為。でも一回しか使えない作戦だから次は通じないよねぇ~」

「まさかあの格好にもそんな意味があったなんて……」

「ねぇ、私からも質問があるんだけど。何でロザリンドは最後に一人だけ端に行ったの? 戦力差を考えればロザリンドを含めて四人で固まって、少しずつこっちの戦力を削げば良いと思うんだけど」

「それはリアーナの言葉ね。『シノブちゃんは強い』って。だから私はシノブが一番危険だと思った。シノブとリアーナは分けて配置すると思ったし、二人を分けるならシノブは端、リアーナは中央。そう考えたのよ」

「何で私とリアーナが分かれると思ったの?」

「リアーナを囮とするなら、シノブが一緒に居たら意味が無……」

 その瞬間、ロザリンドは言葉を失う。

 気付いたのだろう。何で自分自身がそう考えたのかを。

 そして驚きの表情のままロザリンドは言葉を続けた。

「も、もしかして……あの言葉……」

 俺は笑って頷いた。


『リアーナを囮に相手を引き付けて片っ端から罠にハメる』


 模擬戦のパーティーを組む前。ロザリンドとの会話。

 模擬戦で俺はリアーナと二人だけのパーティーで良いと言った。ロザリンドはそれを聞き、二人だけでどうするのかと聞いた。

 そして俺はそう答えた。


「もちろんあの時は意図があって言ったわけじゃないよ。ただ後々ロザリンドとの対戦を考えた時、もしかしたら私の言葉を覚えているかもと思った。だから実はロザリンドが一人で配置されたのは私達にとってはやりやすい布陣だったんだよ」

 まぁ、俺の予想ではロザリンドは覚えていなくて、普通に真ん中へ配置されると予想してたわけだが。この辺りはさすがロザリンド。

「私がその言葉を覚えていなくて、中央に居たら……」

「戦力差があるからロザリンドを引き離して戦う必要がある。それが一番の難題で、いくつも作戦は用意していたけど、どれも確実じゃなかった。そっちの方が大変だったと思うよ」

「……どれだけ色々と考えていたの……」

「そういうの考えるの好きだから」

 そう……俺が小説を書いていた頃。好きなのは能力が弱くても知略を用いて戦う主人公。だからそういう事を考えるのは苦にならず、逆に楽しいくらいだ。

「でもロザリンド。これは卑怯かな。教室でめっちゃ言われているんだけど」

「井戸に毒を投げ入れるとか、子供を人質に取るとか、そういう事は卑怯だと思うけど、私にとって今回の事は戦略の範囲ね。でも卑怯と言う方の気持ちも分かるわ」

「そうかぁ、そう考える人もいるかぁ」

 俺は溜息を吐いた。

「それとシノブ」

「ん?」

「優勝おめでとう」

「うん。ありがとう」


★★★


「えっ、ミラン、学校辞めるの?」

「ちょっと違うな。留学を早めに切り上げるんだよ」

 それはミランがこの王立学校を去るという話だった。

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