変人と変態
さて、模擬戦に参加するためには、もう一人だけパーティーに入れないと。
どうせなら何かに特化した面白い奴を入れよう……と探してみた所、一人居ましたよ、魔法学科にね。しかも変人と呼ばれる逸材が!!
放課後、変人だが優秀な彼に与えられた研究室。
「たのもー」
乱雑に詰まれた大量の本。机の上に並ぶガラス瓶の中には毒々しい色をした液体。何かを熱し、何かを蒸留したかのような釜とフラスコ。用途がまるで分からない道具の数々。錬金術師の研究室、怪しくも好奇心を掻き立てられる雰囲気じゃないか。
「私はシノブ。あなたがタックルベリー・ヒュンカーヒッター?」
そこにいたのは眼鏡を掛けた好青年。これが変人と言われる男なのか、そうは見えない。
「そうだけど、僕に何か用かな? 特別学部のシノブさん」
「私の事を知ってるの?」
「もちろん。普通なら特別学部への編入生は優秀で目立つ。なのに魔法が使えないシノブさん。実に興味深い。魔法が使えない存在がいるなんて」
「私が魔法を使えないのそんなに有名?」
「有名さ。その美しい姿もね」
言いながらタックルベリーは俺に迫る。年齢にしては背も高く、カッコ良いじゃないか。コイツの事が好きな女生徒も多そう。まぁ、俺は精神的に男性なんで好きになる相手では無いが。
そしてその手が俺の頬に触れる。
「もしかして僕に相談でもあるのかな? 魔法を使いたいとか」
手は俺の頬から、髪を撫でるようにしながら首筋に。
「相談はあるけどね」
「受けるよ。その代わり、君の唇は貰うけど」
タックルベリーはキスしようと顔を近付けるのだった。
しかし……
「ていっ」
ボコッ
「うごっ」
俺の正拳突きがタックルベリーの腹にめり込んだ。
「な、何を……」
「何を、って、お前こそ何だ? 今、キスしようとしただろ?」
「そういう雰囲気じゃなかった?」
「ねぇよ!! いきなりキスって、どういう雰囲気だよ!!?」
「……くそっ!! 失敗だ!!」
「……どういう事?」
「この部屋に入ったら魅了の魔法が発動して、エロい気分になるように設定していたんだよ!!」
「な、何でそんな事を……」
「楽してエロエロな事をしたかったんです……」
こいつ……変人じゃなくて、変態じゃないか!!
「相手が男だったら、どうするつもりだったの?」
「男だったら魔法が発動しない設定だから。とにかく……何もしないなら帰れ!!」
こいつ……どうしようもねぇ……だけど……
設置型の魔法は確かにある。効果が後から発動するものが。ただ男女を区別するような細かい設定は出来なかったはず。
「その設定は既存の魔法陣を書き換えたって事?」
どうしようもねぇ奴だけど、もし魔法陣を書き換えていたのなら、コイツは天才かも知れん。
「違う。創ってみたんだよ。失敗だったけど」
……既存の魔法陣を利用したのではなく、新しくって……絶対仲間に入れたい。
「ねぇ。特別学部の模擬戦。私のパーティーに入ってくれない?」
「お前は僕に何をしてくれるんだ?」
「タックルベリーは魔法の研究をしているんだよね? 私はそれに協力をする。魔法を使えない私は立派な研究対象になるんじゃない?」
「確かに。ただそれだけじゃ足りないな……」
「……言っとくけどエロい事とかさせないよ?」
「……マジかぁ……」
「マジ」
「マジかぁ、ダメかぁ……」
「……」
「少しだけは?」
「引っ叩くよ?」
「……」
「……」
「パンツとかくれない?」
このクソ野郎!!
「後ろ向け!!」
「えっ?」
「早くしろ!!」
タックルベリーを後ろに向かせる。
クソッ!! 何で俺がこんな事しなけりゃいけねぇんだよ!!
俺は制服のスカートの中に手を入れて、自らのパンツを乱暴に脱ぐ。そしてそれを丸めてタックルベリーの手の中に捻じ込んだ。
「お前、絶対に人に言ったり見せたりするなよ!! したら殺すからな!!」
「ほのかに温かい……」
「うるせぇ!!」
そしてタックルベリーは受け取ったパンツを……
「ちょっ、おまっ、何で広げてんだよ!!」
「すまない。僕は好奇心に勝てないんだ。あんまり汚れてないな」
広げたパンツをしっかり観察するタックルベリー。
「こーろーすぅぅぅっ!!」
とにかく、これで三人目だ。




