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リトライ!!─救国の小女神様、異世界でコーラを飲む─  作者: 山本桐生
女神の微笑み編

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242/245

発見とフラグ

 滅びの旧都市、吐血病関連の話は決着した。

 戻ったエルフの町でダラダラする俺。

「ごめん、シノブ……俺のせいで……」

 落ち込んだ表情を見せるのはルチエだった。

「あれ、ルチエ、太った?」

「そ、そんなに太ってないだろ!!」

「いや、前はガリガリだったからさ。今ぐらいが普通でしょ」

「……しっかり食べる事ができているからな」

「それに……うん、ちゃんとしたカッコすればしっかり女の子じゃん」

 そんな俺の言葉にルチエは顔を赤らめる。

 フレアやホーリーと同じメイド服に身を包み、俺の店で働いているルチエ。

 その頭を撫でる。

「誰のせいでもないよ」

「でもリアーナは死にそうになっただろ……絶対に俺からうつったんだ」

「結果良ければ全て良し。リアーナは死んでないし、吐血病も治るようになったし、治療薬の発見でお店の名声は爆上がりだし。だから気にしないの。もし気になるようなら私のお店の為に身を粉にして働くが良い、ウハハハハッ」

「当たり前だろ。それに今、ドレミドやミランから剣も教わってるんだ。将来は絶対にシノブの力になるからな」

「えっ、あっ、冗談だよ? そんなに身を粉にしないで、できる範囲で頑張ってよ」

 ルチエは笑っていた。

 そんな俺達がダラダラしている裏では……


『救国の小女神シノブ、そして仲間達が不治の病であった吐血病の治療薬を発見する!!』


 その報告はまさに衝撃的だった。

 吐血病は不治の病だが、その研究は後回しにされていた。発病がごく一部に集中する風土病であった事、大陸全体に患者はいたが多くはなかった事、等の理由が挙げられる。

 そうして長い間放置されていた吐血病の治療薬を発見したのだ。

 さらに無償でその製法を公開した。

 奇跡に近いその出来事は一瞬にして大陸中を駆け巡る。


「シノブさん……あなたって子は本当にどこまで……」

 ニーナは嬉しそうに微笑む。


「アウグス様、吐血病の発見にはミラン様、ハリエット様が関わったと聞きました。これで帝国の威信がまた一つ上がりますね。お二人の身分が明かされた時は盛大に発表しましょう!!」

 そんな側近の言葉に帝国皇帝アウグス・アウトクラトールは言う。

「つまらない事を言うな。不治の病が治る事を素直に喜べば良い」

「あ、は、はい……」

 アウグスは大きく息を吐き出し、そして微笑んだ。


 調合された治療薬はすぐさま重篤な患者に与えられた。そして回復した事により、その有効性は示された。これから吐血病で命を失う人は少しずつ減っていくだろう。

 薬の材料を簡単に集める事はできないが、元が分かっていればいずれ似たような材料で代用できる事になるだろう……とはアルタイル談。


 ただ風土病の原因であった悪魔の存在、滅びの旧都市に至った理由などは俺やアルタイルの意向で伏せる。

 そこに絡む古代魔法は危険なもんっぽいしな。あんまり掘り返さない方が良い。タックルベリーも納得して古代魔法の研究を放棄する事にしたし。


 とにかくこれで落ち着いた。ゆっくりと過ごす、とある一日。


「お母さん。ちょっとお泊りしてくる。お父さんには適当に言っといて」

「大丈夫。任せて」

 何かを察して微笑むお母さん。

 そう、向かうのはアバンセの館なのである。


★★★


 すっげー

 アバンセ……焼き菓子どころか、ケーキまで作れるようになってるじゃん。その辺の専門店よりも本格的で美味い。しかも菓子に合わせてお茶まで毎回種類を変える配慮まで。

 この竜、できる男過ぎる。

 ケーキ、お茶、ケーキ、お茶、ケーキ、お茶、ケーキ、お茶、ケーキ、お茶……細かく、小さく繰り返す。俺もアバンセも……

「アバンセ……落ち着かないじゃん」

「シノブこそどうした? 視線があっちこっちしているぞ」

「……そんなことないけど」

「俺もだ」

「……」

「……」

「……ごめん。やっぱ緊張してる。アバンセはしてないの?」

「しているに決まっているだろ。シノブから泊まりたいなんて初めてだからな……そういう意味で良いんだな?」

「……うん」

「でもどうして急に?」

「……アバンセには色々と助けてもらってるし」

「もちろんシノブとの行為はしたいと思っているが、だから助けているわけじゃないぞ。礼のつもりなら無理には」

「違うって」

 アバンセの言葉を遮り、続ける。

「言ったでしょ。リアーナが倒れた時『アバンセしか思いつかなかった』って。まだ自分が男性と付き合ったらとか、その先の事とか、そういうのはよく分かんないの。でもアバンセなら良いかな、って。だから……」

「だから?」

「アバンセの事は好きなんだと思う。多分」

「嫁」

「いや、そこまではまだ考えてないけど」

「それでも本当に嬉しいぞ!!」

 歓喜の表情を浮かべるアバンセ。その顔を見て笑ってしまう。


 それからいっぱい話をして、日が落ちて、ご飯を食べて、お風呂に入って。

 そしてベッドの上、二人は……


「ぎょああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!!」

 悲鳴。

「むりムリ無理むりムリ無理むりムリ無理っ!! ちょぉぉぉぉぉっと、裂ける!! 死ぬ!!」

 荒い息でアバンセをドカッと蹴り飛ばす。素っ裸で転がるアバンセ。

「はふぅ、はふぅ、はふぅ、はふぅ、はふぅ」

 死ぬ……死んでしまう。ガチで。

「だ、大丈夫か?」

「大丈夫なわけないでしょうが……ねぇ、ロリニナールって薬でアバンセが子供の姿になれば入るかも」

「いや……初めてなんだ。最初はこの元の姿でしたい」

「どういうこだわり……」


 失敗である。


★★★


 瞬間移動装置。それはガーガイガー道場下に設置され、龍脈を利用して移動する。

 他にも天空への塔で存在した、魔法陣から魔法陣へと一方通行で転移させるようなものも多く存在した。


 それは我がパーティー『女神の微笑み』への依頼。


「発見された転移の魔法陣だけれど。移動先が分からないのはもちろん、調査に入った者もまだ誰も戻ってきていないわ」

「私達なら他の人に比べて安全に確認できるよ。サンドンさん達の笛もあるし、シャーリーちゃんの能力もあるから」

 と、ロザリンドとリアーナは言うが……

「働かせる気満々なのが気に入らない」

 ここはエルフの町。こんな田舎には冒険者ギルドなんて無かったのに……わざわざ設立しやがった。これ完全に俺達目当てじゃん。そのおかげで拠点にはできるけど。

「けどまぁ、リアーナの言う事ももっともだけどね。でも調査に入ってるのは王国の調査団でしょ? どうしてベリーもいんの?」

「そりゃ、僕が王国内でも優秀な魔法使いだからだろ。竜の罠でも同じような経験してるしな。王国の調査員として最適だ」

 王国側からの依頼であり、その依頼に同行するのがタックルベリーという事だった。

 まだ依頼を受けると決めてないのに、わざわざタックルベリーが派遣されてくるなんて……もしかして……

「ねぇ、ベリーじゃないの。この依頼を私達に頼もうって言い出したの」

「……さすがシノブ。察しが良いな」

「全部、話してよ」

「きっかけはアイザックのゴーレム騒動だ。その後のアルテュール、アビスコの影響も大きい」


 アイザックの大陸変動で、それまで埋もれていたいくつかの遺跡が発見された。アルテュール、アビスコとの戦いで大陸中の動きが活発になり、発見される遺跡がさらに増えた。


「もちろんただの廃れた古い集落だったなんて事も多い。けどその中で同じ造りの遺跡がいくつか発見されたんだ」

「今までそういうの無かったの?」

「あったけど、そこまで多くなかった。その発見数が急に増えたんだよ。僕の考えでは人為的に隠されていた遺跡だと思う」

「その発見数が増えたのは『隠す必要が無くなったから』、それか『必要になったから』、そういう事? 依頼を出したって事は、何か確証があるんでしょ?」

「最近になって遺跡に魔法陣が設置されている事が分かった。分かったのは魔法陣が使えるようになったからだ。魔法陣の形式から『何者かの何かを感知したら発動する』って事が分かったんだけどな……」

「『何者』かが現れた……って、事なんだろうけど……魔法陣絡みならチオ王立学校長がいるでしょ。もっと詳しく何か分からないの?」

 チオ・ラグラックは悠久の大魔法使いララ・クグッチオ。魔法と魔法陣を創り出した張本人。もうちょっと何か読み取れるでしょうが。

「ここからが厄介な話なんだよ。手が加えられているんだから」

「ありえないよ。神々の手の能力として創られたんだから……でももしそれが可能なら、その存在は……」

「シノブの想像通り。同じ神々の手の可能性があるな」

 これは確かに……俺達しか受けられないような依頼じゃねぇか……それとまた嫌なフラグが立った気がするぜぇ……

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― 新着の感想 ―
アバンセのサイズが無理なら、シノブか能力を使ってる間に決めるしか・・・何かの生物みたいに時間が短いけど
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