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リトライ!!─救国の小女神様、異世界でコーラを飲む─  作者: 山本桐生
女神の微笑み編

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237/245

正体と技術

 圧倒的な速さと力。

 この強さ、竜、そしてアビスコ鬼王と同等。

 リアーナとロザリンドが元の姿に戻ったとしても、現時点では勝てない。

 そこで黒騎士は兜を脱いだ。

「娘達よ、素晴らしい、実に素晴らしい才能だ。俺の攻撃に反応できるとはな。その年齢で信じられないほどの力だ」

 頭髪の薄い、中年のオッサンだった。

「だがまだまだ。例えば姿勢。全ては姿勢に表れる。この体のバランスを覚えるのだ」

 黒騎士はリアーナとロザリンドの身体をベタベタと触りながら、細かに姿勢を整えていく。

 あっ? えっ? 戸惑う二人。

「黒騎士様、きっと凄い筋肉質な体をしているんでしょうね?」

 俺の問いに黒騎士は笑顔を浮かべた。

「お兄さんと呼んでくれても構わないぞ。娘よ、筋肉だ。筋肉こそ最強」

 上半身の鎧も脱ぐ。その下は筋肉ムッキムキの裸体だった。そして巨大な長剣を片手で楽々と扱いながら、次々とポーズを決める。

「……まさか師匠とはね……」

 俺は呟く。

「『師匠』?」

「忘れたとは言わせねぇぞ!!」

 帽子を脱ぐ。垂れ落ちる白い髪。隠れていた目も露わになる。

「シ、シノブか!!?」

「この糞ド変態がぁぁぁぁぁっ!!」

 この野郎は昔、俺を騙してセクハラしまくった変態野郎じゃねぇか!! 汚れたパンツを盗み、保存、においまで嗅ぐという。

「シノブちゃんの知ってる人なの?」

「リアーナ、昔、近所の道場に住み着いた変態の奴がいたでしょ。それがコイツだよ!!」

「でもどうしてシノブちゃんと接点が……」

「それは置いといて。師匠、今度こそは消し炭も残さず消滅させてやるぅぅぅぅぅっ!!」

「ま、待て!! こ、今度こそはきちんと指導してやろう!!」

「『今度こそは』って昔は違ったのか、ゴルァ!!?」

「待って。シノブと黒騎士との間に何かあったのかは知らないけれど、その実力は確かだわ」

「ロザリンド……でもヴォルだって『強い感じがしない。見てても全く怖くない』って、きっと何か仕掛けがあるんじゃないの?」

「強者ほど隠すのが上手い。俺ぐらいの剣士になれば誰にも気付かれぬほどにな。娘達よ、今、俺が強く見えるか?」

 その言葉にリアーナとロザリンドは首を横に振る。

「ではこれならどうだ?」

 一瞬だった。

 えっ、ちょっ、な、何だ……今の……

 俺はそういう気配に鈍感な方だった。その俺の全身から一瞬で汗が噴き出す。

 咄嗟に俺と黒騎士の間に入るリアーナとロザリンド。その顔は青白く、同じく汗に濡れていた。

「まだまだ甘い。娘達よ、今の実力ではシノブを守れない。お前達のすべき事は間に割って入る事ではなく、シノブを連れて逃げる事だったな」

「じゃあ、師匠はただの変態じゃなく……本当に強かったの?」

「そういう事だ。シノブ、確かお前はサンドンと繋がりがあったな?」

「あるけど……」

「では良いだろう。ガーガイガー。俺の名だ」


★★★


 黒騎士の正体、それは剣神ガーガイガー。

 古代竜・冥界の主サンドンと同等の力を持ち、そのサンドンから長寿を得た伝説の剣士。それが本当であると納得してしまうプレッシャーを持っていた。

「しかし、シノブ……映し出されていた姿よりも若干幼いように見えるな。それと武器を見る限り、太陽のリアーナと月のロザリンドだと思うのだが、その姿……」

 アルテュールの件で俺達の姿は大陸中に配信されている。

「ああ、それ薬の影響で」

「薬だと?」

「えっ、うん、ロリニナールって薬で……」


「よし、分かった。俺がお前達に指導し、一つ技術を教えてやろう。その対価としてロリニナールを分けて貰いたい」

「ロリコン師匠、マジでロリコンじゃん……」

「ああ、そうだ。俺は幼女が好きだ。これがあれば合法的に遊べるだろう」

「死ね。変態は死ね」

「でもシノブちゃんも同じような事を考えていたよね?」

「ええ、言っている事に変わりがないわ」

「わ、私は良いんだよ!! それに指導って、昔、私にしたみたいな指導でしょ? 本当に効果があるんだか」

 ガーガイガーはリアーナとロザリンドの顔を交互に見る。

「二人とも身体強化の魔法を使っているな?」

 二人は頷く。

 言葉を続けるガーガイガー。

「非常に効率が悪いのだ、それが」

「どこか省ける部分があるという事かしら?」

「でも省略できる部分なんて無いよ。無詠唱魔法にする事はできるけど、それじゃ魔力消費量が大きくなるし……」

 確かにこれが最適解だから、みんな疑問も無く使っていたわけだ。

「魔法には体内の魔力を使うだろう。まずこれを『内』とする。次に魔法の発動。無詠唱魔法は別として、発動には詠唱や魔法陣など外部的な補助が必要となる。これを『外』とする。そして魔法の効果を体内に宿す。これを『内』とする」

 ガーガイガーが言うには身体強化魔法を細かく分けるとそういう流れがあるらしい。

「1『内』、2『外』、3『内』、1と3が同じ『内』なら、2である『外』は省略ができるという事だ。より少ない魔力で、より大きい効果を得る。それが俺独自の技術という事だ」

「つまり魔法を挟まないで、魔力をそのまま身体能力強化に繋げるって事?」

「その通り。2を省く事で効率も良くだ」

 全く聞いた事の無い技術じゃねぇか!!? これが本当なら、みんながガーガイガーのレベルに近付く事にもなる。

 だったら当然。

「はい。これ、ロリニナール。とりあえず今はこれだけだけど後で調合する。もし必要なら調合方法も教える」

 それだけの価値がある。みんなが強くなれれば、その分だけ命の危険は減るから。

「いや、難しい事は苦手でな。調合方法など聞いても作れん。定期的にサンドンへ預けてくれ」

「でも本当にそんな技術を私達に教えて良いの? 本当だったら常識が変わるよ」

「もちろん悪しき者には教えはしないが……お前達は違うだろう?」

 そう言ってガーガイガーは笑った。

「……ありがとう、師匠」

「何よりろりえっちがしたいのだ」

 さっきよりも良い笑顔。

「……」「……」「……」

 やっぱり殺すか……


★★★


 とはいえ、何か特別な修行を必要とするわけではなく、無意識で行なっていた事を意識して行うだけ。

 まず身体強化魔法を使う際に、体内の魔力を意識する。意識しないで使っていた時には分からなかったが、意識してみれば体内で魔力の流動を感じる……とはロザリンド談。

 次に魔法は使わずに、その流動だけを自らの意識で起こす。感覚的な事で俺にはよく分からないが、少しずつその流動を大きくする事により、身体強化の効果を高めるというもの。

 技術ってよりも意識改革に近いな。

 そして数日。

「ではロザリンド。来い」

「ええ」

 刀を構えるロザリンド。幼女がただ遊んでいるだけのようにも見える。しかし……一瞬にしてその姿が消える。金属音、そこでロザリンドが打ち込んだ事を理解する。さらにその小さい体でガーガイガーの大きな体を弾き飛ばした。

「むっ、たった数日でここまで!!」

 ガーガイガーの巨大な剣を真正面から受け、さらに連撃を打ち込むロザリンド。

 うっわー……数日前と明らかに動きが違う……何やってるか見えねぇ……

「ハッ!!」

 気合一閃。ロザリンドの刀がガーガイガーの首筋で寸止めされた。

「合格だな」

「……ありがとう……あなたのおかげで私はまた強くなれたわ」

 あれだけ動いたのに、ロザリンドは息一つ切らしていない。マジで凄いな。

 そんな二人を黙って見つめている隣のリアーナ。

 なんて声を掛ければ良いのか……

「……やっぱりこういうのは得意不得意があるもんだよね。私なんて全く使えないし」

「うん……そうだね……」

 その声に元気は無い。

 順調なロザリンドに対して、リアーナは全く習得ができていなかった。

「……」

「ちょっとロザリンドちゃんにコツを聞いてくるね」

「うん……」

 まさか二人にここまでの差が出てしまうとは。

 リアーナと入れ替わるようにガーガイガーがやって来る。

「師匠さぁ、リアーナ……大丈夫かな?」

「リアーナには魔法の才が無い」

「はぁ?」

「最初に手合わせをした時から感じていたがな」

 ガーガイガーは言う。

 最初の手合わせの時、リアーナの魔法は劣っていた。派手には見えたが、込められた魔力の脆弱さを感じたという。

「いや、それはありえないよ。リアーナの魔法の才能は大陸中を探してもなかなか見付けられない、それはみんな知ってる事だし」

「だがリアーナが上手くいっていないのは、明らかに魔力の扱いが下手だからだ」

「……体格の変化が影響している可能性は?」

「ロザリンドを見ろ」

「でも個人差があるんじゃない? 体が元に戻れば上手くいくかも知れないし」

「可能性はある。ただ現時点で俺の教えられる事はもう無い」

「……」


 そうしてガーガイガーの技術指導は終わるのである。

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オッサン本当に強かったんかい!!
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