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リトライ!!─救国の小女神様、異世界でコーラを飲む─  作者: 山本桐生
女神の微笑み編

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秘薬と黒騎士

 男の娘タイムは終わってしまったが、その代わりに……

 マンドラゴラ、秘薬レシピ。

 俺は二人に秘密でコッソリと調合を進めていた。そしてついに完成してしまったのだ。


 秘薬『ロリニナール』が。


 この秘薬の効果を知れば、二人は拒否するかも知れない。だがぜひこれは飲んでいただきたい。

 出来上がった紫色の液体を二人の食事に混ぜた結果……

「えっ……どういう事なの……これは……何で……」

 ブカブカの衣服、黒い瞳と黒い髪の少女。

「これ絶対シノブちゃんのせい!! だって笑ってるよ!!」

 ブカブカの衣服、金色の髪と青い瞳の少女。

 間違い無くリアーナ。昔の、小さい子供の頃の姿。かわいい。

 そしてこっちが子供の頃のロザリンドなんだろう。俺の知らない子供なロザリンド。かわいい。

「これこれ。作ってみたの」

 小瓶に入った紫色の液体を俺も飲んでみる。

 少しだけ身長が縮む。

「小さい頃のシノブちゃんだ……」

「う~ん、でも私の場合はあんまり変わってないように見えるねぇ」

 服は大きめであるが、元から幼児体型の俺に大きな変化は見られない。

「どういうつもりなのかしら?」

 ロザリンドに両拳でこめかみをグリグリとされる。

「あっ、これお母さんにもよくやられたヤツ、懐かしい!! けど痛い!! 子供の力なのに超強い!!? ちょっと待って!!」

「説明してちょうだい」

「する!! するから!!?」


「ほら、今日とかベッドが一つだけだから」

 俺達は基本的に冒険者として稼いだお金で日々のやり繰りをしている。低級冒険者では稼ぎも少なくて、安宿のベッド一つで過ごす事も少なくない。

「私達の体が小さかったら、三人でベッドだって使えると思ったの。これで誰か一人が床で寝るなんて事は避けられるでしょ?」

「……確かに一理あるわね」

「待って。ロザリンドちゃん。シノブちゃんのその顔は嘘付いてる」

「余計な事を!!」

「シノブ……今度はさっきより強くいくわよ?」

「ちっ……秘薬が『子供になる』って効果だったの。だったらロザリンドの子供の頃の姿とか見てみたいじゃん。それだけ、ちょっとした好奇心」

「らしいけど、どう?」

「違うよ。これは多分えっち関係」

「……シノブ」

「ふんっ。ろりえっちしたい」

 グリグリグリグリグリグリグリグリグリグリ

「ぎゃぁーーーーーっ!!!!!」

「シノブちゃん……私も止める気にならないよ……」


「……一晩で戻るよ」

「全く……黙って変なものを飲ませないで」

「だって」

「だってじゃないでしょう」

「ううっ、口惜しやぁ……」

「……素直に言ってくれれば、それくらい付き合ってあげるわ。だからそんな顔をしないの」

「えっ!!? マジ? 今度から素直にお願いする!!」

「ふふっ、まったく」

「私もよく言われるけど、ロザリンドちゃんもシノブちゃんに相当甘いよね?」

「そ、そうかしら?」

 取り合えず明日もギルドの依頼があり朝早いので、今日は何もせず。ベッド一つに三人で転がるのだった。

 ちなみにであるが、リアーナを裸にひん剥いてみた。微かな膨らみに戻った胸。陰毛の生えていない下半身。これらにより、俺達は10~12歳の間であると推測される。

「何で私で確認するの?」

「だって昔、身体測定の時に見たし。つるつるだったのそれくらいの歳まででしょ」

「そ、そうだったかなぁ……」


★★★


「依頼……ちょっと取り消してもらおうか……」

 体が元に戻らない。

「……でもさ、私のせいじゃないよね? だって手帳の文字が汚いせいだもんね?」

 文字が汚く分量を読み違えた。元の体に戻る事はできるが、それがかなり先になりそう……

「シノブ」

「……うん。分かった。どうぞ」

 グリグリグリグリグリグリグリグリグリグリ

「ぎゃぁーーーーーっ!!!!!」

「今日は服とか買いに行かないとね。さすがにこんな大きな服じゃ動きづらいし。依頼も少しお休みだね」


 ふわぁぁぁぁぁっ

 かわいいよぉぉぉぉぉっ

 小さいリアーナと小さいロザリンド。大人じゃ着れないようなヒラヒラした服も遠慮無く着る事ができる!!

 臙脂色のワンピースの胸元を黒く細いリボンで締める。黒いタイツと黒い革靴、この背伸びした感じのリアーナがかわいい!! まるでお人形、持ち帰りたい!!

 この胸元全体を隠すほどの大きなリボンの白いブラウス。ベストとスカートが一体化した黒いジャンパースカート!! 普段のイメージとは違うロザリンドがこれを着ると愛らし過ぎる!! 長い黒髪もツインテールにしましょうね。

 そして俺。白いシャツに濃紺色のネクタイとベスト。同じく濃紺の膝下までのハーフパンツのセット。髪の毛も長いから男の子か女の子かの判別が難しい中性的なスタイル。ついでに服装に合わせた中折れ帽もかぶってみる。

 結果……あああああっ、俺を含めてみんなかわいいぃぃぃっ!!

「リアーナもロザリンドもかわいい!!」

「うん、ありがとう。シノブちゃんもかわいいよ」

「全部、お買い上げで」

 これは臨時の出費。我が商会から出そう。

「シノブ……確かにかわいいわ……でもこんな事をしている場合ではないような……」

「良いんだよ!! 気分転換、休みだって必要なんだから。それに全部、私のせいだからお金の心配はしないで。ご飯とか泊まる所とかも元に戻るまでは私が出すから。それとすみませ~ん、こっちの服と靴も一緒にくださ~い」

 他にも何着か買う。いっぱい買う。着せ替え楽しいので!!


 そんな買物の途中。面白い話を聞いた。

 闇に溶け込むような漆黒の鎧に身を包んだ、沈黙の黒騎士。彼、または彼女はアイザックの時もアルテュールの時も、ただ一人だけで脅威と戦っていた。俺達が仲間と協力して戦っていた相手にだ。話が本当なら、その力は竜に近いものがある。

 そんな黒騎士がこの街を訪れているというのだ。こりゃ一目見るしかないっしょ。

「……でもさぁ、武器とか必要?」

「うん、一応ね」

「それに無いと落ち着かないわ」

 せっかくみんなかわいい恰好なのに……リアーナはハルバードを、ロザリンドは刀を、二人とも武器を背中に背負っている。オシャレした幼女が背負うもんじゃないだろ……

 黒騎士も有名人。すぐ見付ける事はできた。

 後世に技術を伝える為か、大陸を移動しながら剣技を教えて回っているらしい。

 街外れの廃道場。沈黙の黒騎士はそこにいた。黒く輝く光沢の鎧は頭を含めて全身を覆っている。その表情は確認できない。しかし大柄な身体、胸板の厚さ、腕や足の太さ等から、相当の筋肉量を持っているのは分かる。

 黒騎士は待っていたかのように手招いた。俺達三人の気配を事前に感じ取っていたというのか……

「あなたが沈黙の黒騎士と呼ばれる剣士様でしょうか?」

 黒騎士は頷く。さらに手招き。こっちに来いって事か?

 リアーナとロザリンドは頷く。まぁ……何かあれば俺の能力もあるからな。

 廃道場には似合わない立派な石造りの階段で地下へと移動する。石畳だけが広がる何も無い空間。サンドンのトコの地下神殿に似ている。

 そこで黒騎士は剣を抜いた。俺の背丈以上もある長剣。それを片手で小枝のように振り回す。

「あの、私達は別に稽古を受けにきたわけではありません。ただ黒騎士様がどのような方なのか気になっただけで……」

 黒騎士は手で俺の言葉を制する。そして再び手招き。

 とにかくまずは手合わせを、そういう事か。

「どうする?」

「気にはなるかな。全然、強そうな感じがしないから」

「そうね……私もある程度の雰囲気で相手の強さは分かるけど……」

「つまり本当に沈黙の黒騎士かも怪しいって事だよね。分かった、二人とも怪我とかしないようにね」

 リアーナはハルバードと魔導書を、ロザリンドは刀を構える。

 体が小さくなって、従来の間合いや筋力に差異はある。しかしそれは二人も確認して修正済み。いつもと近い動きができるはず。


 リアーナの詠唱、その周囲にいくつもの魔法陣が浮かぶ。そして魔法陣から青白い熱線が撃ち出された。直線、曲線、操作された熱線が四方八方から黒騎士を狙う。

 そしてその熱線を追うようにロザリンドが突進する。次の瞬間にロザリンドが弾き飛ばされていた。

 黒騎士が立っていた場所にその姿が無い。

 俺には何が起こったか全く見えない。後から聞いた話だが、黒騎士の動きは単純。ただ魔法攻撃を避けて、ロザリンドに突進し攻撃を加えただけ。

 それは圧倒的な速さ。

 ロザリンドでなければ防御さえ間に合わない。

 さらに黒騎士はリアーナへ。振り下ろされた長剣をリアーナのハルバードが頭上で受け止めるが……

「あっ、うぐぐぐぐぐっ……」

 リアーナは両手で受け止める。黒騎士は片手で振り下ろす。

 圧倒的な力で、リアーナは片膝を付き潰される。

 ロザリンドが助けに入るべく再び突進。その刀には風の魔法が宿されているが……関係無い。すでにその場に黒騎士はいないのだから。

 リアーナとロザリンドは顔を見合わせた。

 再びリアーナの魔法。炎の障壁が黒騎士との間に立ち上がる。そこに刀を振り下ろすロザリンド。風の刃が飛ばされた。

 風が交わり、まるで炎の嵐。そこに見えない刃が加わる凶悪さ。二人だからできる特殊攻撃。これを防ぐ術はこの広いだけの空間では何も無いと思われた。しかし。

 黒騎士は両手で長剣を振り上げた。そして足元の地面を横薙ぎ。ドザンッッッッッ、鈍い音と共に石畳に亀裂が入る。その亀裂に長剣の先を差し入れた。

 大地震のような激しい揺れに、俺は尻餅を付いて転ぶ。

 黒騎士は足元の石畳ごと地面を刳り貫くように掘り上げた。大量の瓦礫や土砂が壁となり二人の特殊攻撃を防いでしまう。

 そして呆然とするリアーナとロザリンドの後ろ。そこに黒騎士は立っているのであった。

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