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リトライ!!─救国の小女神様、異世界でコーラを飲む─  作者: 山本桐生
女神の微笑み編

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233/244

不可能と持久戦

「シノブちゃん!!」

「シノブ!!」

「ごめん。やらかした。二人でお願い」

 あの巨大マンドラゴラが具体的に何をするつもりなのかは分からない。けど放置する事もできないだろ。

「うん。任せて」

「リアーナ。作戦は走りながら」

 リアーナとロザリンドは駆け出した。

「ヒメ。二人を手伝ってあげて」

 服の下からにゅるんと姿を現すコノハナサクヤヒメ。

「お二人で可能でしょうか?」

「……何で?」

「シノブ殿の能力は世界でも比類なき力。竜にも並ぶ力で倒せなかったマンドラゴラを倒す事など可能なのでしょうか?」

「知らん。知らんけど、いつも私がいるわけじゃないんだから。やってもらわなきゃ困る。でも大変なのは確かだからヒメも手伝ってあげてね」

「承知!!」

 コノハナサクヤヒメも二人の後を追うのである。


★★★


 そしてこれは後から聞いた話。


「リアーナ殿ぉぉぉぉぉっ、ロザリンド殿ぉぉぉぉぉっ」

「ヒメちゃんもきてくれたんだ」

「シノブの方は大丈夫なの?」

「シノブ殿には怪我も無く、手伝うように言われた故に!!」


 そしてマンドラゴラが町に辿り着く前に、その後ろ姿を捉える。

「まずは様子を見るから。ヒメちゃんはとりあえずこっちに」

 リアーナは胸元の服を少しだけ引っ張る。

「いえ、拙者はロザリンド殿の方へ。そちらの方が隙間ありそうですので」

「……」

 ロザリンドは黙って胸元を開けるのだった。


 リアーナは巨大マンドラゴラの前へと回り込んだ。そして魔導書を開き詠唱。炎の壁が立ち上がる。

 背後からはロザリンド。刀、その刀身は内側から赤く輝き、炎を纏う。火炎系の魔法を乗せていた。そして跳躍。突き出された一撃はマンドラゴラの腰部後ろに突き刺さる。そしてすぐさま引き抜き距離を取る。同時に刺し傷からは炎が噴き出した。焼き焦げるにおいは香ばしい。炎がマンドラゴラの全身を包んでいく。

 これで倒れる簡単な相手ならばシノブだって倒せたはず。

 さらにリアーナの火炎魔法が追撃、炎はさらに大きくなる。

 ロザリンドの刀が纏う炎は巨大な刃を形成した。炎の刃で何度もマンドラゴラを斬り付ける。

 周囲一帯を焼く尽くすような灼熱地獄。通常の植物なら消し炭さえ残さない。

 リアーナはさらに爆発するような火球を飛ばす。無尽蔵のような魔力で何度も何度も魔法を撃ち込んだ。その横に並ぶロザリンド。

「一度離れるわ」

「うん。そうだね」

 二人はマンドラゴラから離れ、様子を見守る。

 やがて火勢が衰えると……

「フンッ」

 マンドラゴラの気合と共に炎が消し飛ぶ。

「……まったく効いていないように見えるわ」

「でも相手がマンドラゴラなら限界はあるはずだよ」

 畑から逃げた通常のマンドラゴラは栄養という名の体力が尽きると、そのまま力尽き倒れる。

 二人の考えではこの巨大マンドラゴラを倒すのは不可能。対抗手段があるとすれば、それはマンドラゴラの体力を削る事だけ。つまり持久戦。

「我の体力を削るつもりだろうが……容易ではないぞ」

 マンドラゴラが振り向き、視線を向けた先のリアーナとロザリンド。

「こっちの作戦が分かっているのに付き合ってくれるかな?」

「分からないけれど、自らの体力が尽きるとどうなるかを分かっているような口振りだわ」

「……体力の限界があるのに、人を滅ぼそうって事だよね」

「ええ、それが可能な程の体力なのか、もしくは途中でそれを補充する術があるのか……ただの無知で、この大陸の大きさを知らないのなら楽なのだけれども」

 そこでマンドラゴラの大声が響く。

「非力なものだ、人間よ。お前達に我を止める術は無い。その目で世界が終わる姿を見るが良い」

「まずは私が行くわ」

「ロザリンドちゃん、気を付けて」

 最初に立ち向かうのはロザリンド。リアーナは後方へと距離を取る。


 再びロザリンドの刀が炎を帯びる。

「お前のその炎ごと叩き潰してやるぞ!!」

 マンドラゴラの巨大な拳が振り下ろされる。その腕に弧を描くような軌道で水の槍が撃ち込まれ、拳の軌道が変化した。もちろんコノハナサクヤヒメだ。指示は出していないのに……本当にヒメは優秀なのね。

 ロザリンドはそのまま直進して刀を横一閃、巨大化した炎の刃がマンドラゴラの胸部を斬り裂いた。さらに炎と水とが交わり、視界を水蒸気が塞ぐ。

 ロザリンドにも周囲は見えないが、相手の的が大きい。刀を振り回せば、炎の刃はマンドラゴラの体の何処かしらへと当たるのだった。

 その中でマンドラゴラは拳や蹴りを繰り出すが、その大振りではロザリンドを捉える事ができない。逆に炎の刃は何度もマンドラゴラを斬り付けた。手に伝わる感触から確実にその体を斬り裂いている。

 その度に立ち上がる炎。吹き付ける熱風へはコノハナサクヤヒメが水の防御膜を張る。

 散々に攻撃を加える。

 少しの疲労を感じ、すぐにロザリンドは退くのだった。


 入れ替わるように今度はリアーナ。コノハナサクヤヒメもリアーナの胸の中へと移動する。

 燃え上がる炎の中でマンドラゴラが怒号を上げる。

「面白い。入れ替わりで絶え間なく攻撃を与え我の体力を削るか。だがお前達の方が先に体力が尽きるのではないか?」

 マンドラゴラは炎を振り払う。

 そこには無傷のマンドラゴラ。遠目でもロザリンドが相当な斬撃を入れているのは分かった。なのに……無傷……

だけど、ここで逃げるわけにはいかない。

「シノブちゃんに頼まれたんだから」

 リアーナはハルバードを使わない。ひたすら遠距離から魔法攻撃を繰り出すのだった。火炎系統の魔法を軸に、様々な種類の攻撃魔法を撃ち込む。どれかが弱点の可能性もあるから。

「ええいっ、鬱陶しい!!」

 マンドラゴラの無差別攻撃。足元の地面を掘り返し、全方向へと土砂を投げ飛ばす。

「お任せを!!」

 コノハナサクヤヒメ、水の壁が土砂を防ぎ止める。

 繰り返す魔法攻撃、マンドラゴラの体表が焼け焦げていた。ただ焼き尽くすまでのダメージは与えられない。

 そしてここでまたロザリンドと交換。


 その際に二人は言葉を交わす。

「ごめん。焦がす程度はできたけど、あんまり効いてないみたい」

「この作戦で相手の体力をどれ程に削れるかは分からない。最悪の状況なら助けを呼ぶわ」

 それは二人が笛を持つパルとヤミ。

 もちろん竜が二人いればこの状況は好転するだろう。ただシノブや竜に頼るだけではこの先かならず自分達は行き詰まる。そう感じていた。


 今度はまたロザリンド。どれくらい削れたのか、相手の様子を確認する。

 マンドラゴラの体中には切創があった。しかしリアーナの言う焼け焦げたような跡が無い。

 ……二つの傷を同時に治す事はできなかった……つまりマンドラゴラの体力は削れている……そういう事ね。勝機があればこちらの気力も持つ。

 そうしてまた攻撃を続け、少しずつマンドラゴラを切り刻んでいく。

 しばらくしてまた交代。


「リアーナ。相手の体力は確実に削れているわ。私も相当に斬ったから」

「分かったよ、だったら勝機はあるね」

「ええ、そういう事よ」


 そしてリアーナ。

 うん、ロザリンドちゃんの言った通り。

 斬った傷は治っているが、焦げた体表はそのまま。これって治癒が間に合っていないって事。体力に限界があるから治癒に回せない。

 再び魔法攻撃でマンドラゴラをその場へと張り付ける。まさにその魔力は底無しのようだ。

 そうして少しずつ火傷の範囲を広げていくのだった。

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