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リトライ!!─救国の小女神様、異世界でコーラを飲む─  作者: 山本桐生
鬼ごっこ編

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朽ちた神殿と復活前

 あっちの方向がデカ鬼のベレントだろ。だったらこっちは別の部位だろ。それが頭部とか心臓とかなら良いんだけどなぁ~

 アビスコの右目を頼りに探してみたんだが……朽ちた神殿が現れる。深い山の森の中、獣道の先。何を支えていたのか分からないが、崩れる寸前の石柱が何本も立っていた。その石柱に隠れるようにして神殿の様子を探る。

 偵察なんで俺とキオ、護衛にヴイーヴルとリアーナ。それとコノハナサクヤヒメ。


「どう? キオ、見える?」

「は、はい、い、入口の所に二人、鬼の人が立っています。そ、それと建物の中……もう一人、だ、誰かいるようです、はい」

「その建物の中のも鬼?」

「え、えっと……」

 キオの左目、カトブレパスの瞳が神殿の中を探る。

「右手……が無い人みたいです……凄く痩せてて……そ、それと……えっ?」

「何? どうしたの?」

「そ、その……りょ、両目が無いみたいで……あっ、な、何か投げ」

 キオが言い掛けた瞬間だった。


 ドゴッ!!

 石の砕ける音。

 キオの隠れていた石柱が砕け、キオが弾き飛ばされた。

 一瞬の出来事。何が起こっているのか、全く分からない。ただ攻撃されたのは分かる。

「ヒメ!!」

「キオ殿はお任せを!!」

 ドゴッ!! ドゴッ!!

 再び石柱が砕け飛び、石礫が飛ぶ。

「シノブちゃん下がって!!」

 リアーナが防御魔法を発動させる。しかし……ドゴンッ!!

「あぐっ!!」

 盾のように展開される魔法陣。その防御魔法をブチ抜き、何かがリアーナを叩き飛ばした。

「リアーナ!!?」

「シーちゃん!!」

 ヴイーヴルだった。その大剣クレイモアを振り下ろす。

 激しい金属音。ヴイーヴルの手から大剣が弾け飛んだ。その時に気付く。ヴイーヴルが叩き返したのは金属バット……のような金棒。

 直前のキオの言葉。この金棒を投げてきやがったのだ。しかも石柱もろとも、物理でリアーナの防御魔法を突き破った、って事か!!?

 フレアやホーリー程ではないが、リアーナの防御魔法だって精度は高い。それを物理って……つまりコイツはヤベェ!!

「ヴイーヴルさん、みんなをお願い!!」

 ここでどうにかしないと絶対にマズい!!

 俺は体内の魔力に火を灯す。淡い光と溢れ出す力。身体能力強化で動体視力も飛躍的に向上する。高速で飛来する金棒は石柱を菓子のように破壊した。その金棒を殴り蹴りで弾き防ぐ。

 くそっ、冗談だろ……金棒のその威力、アバンセやパルの一撃に匹敵する。

 俺は突っ込む。

「巻き込まれたくなかったら逃げて!! 酷い事になるよ!!」

 俺は護衛らしき鬼二人に声を掛けてそのまま神殿の中へと飛び込んだ。奥行きの無い小さな神殿、その存在はすぐ目の前。

 右手と左足の無い黒く干からびたミイラが石の台座に腰掛ける。その両目はミイラと同じく落ち窪んでいた。


 多分、これがアビスコ鬼王。


 その左手が金棒を振り上げる。

「このまま千切ってやんぜ!! ふぐぬぬぬぬぬぅっ!!」

 俺はそのアビスコの左手を捻り上……げられねぇ!!?

 枯れ木のような左手なのに、その力は竜と同等。これで完全復活前。

 そのアビスコからガサガサと掠れた声が発せられる。

「何を言ってんのか分かんねーけど、このまま自由にさせるわけには!!」

 左手を押さえたまま、超至近距離から無詠唱魔法を叩き込む。

 輝く光線。

 撃ち出された無数の光線はアビスコに収束し大爆発を起こす。

 鼓膜が破れてしまいそうな轟音、石造りの神殿をまるで紙クズのように吹き飛ばす爆風、体がバラバラになりそうな程の衝撃。

 その中で俺は魔法を撃ち込み続ける。神殿はもとより地形さえ変える程の威力。散々に魔法を撃ち込み、ダメージを与えたアビスコの左手を今度こそ引き千切って……爆煙でその姿はハッキリと確認できないが、その左手は逆に力で俺を引き寄せようとする。

「うおらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! ざっけんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 爆煙の向こう側、一瞬だけ見えたアビスコの顔面を蹴り放つ。そのまま足を置き、アビスコの左手を力一杯に引っ張る。そしてさらに無詠唱魔法を放つ。

 ブチンッ

 鋼鉄のワイヤーが切れるとこんな音なのかも知れない。重低音と共にアビスコの左手を引き千切った。だがしかし。

 アビスコの頭が眼前に迫る。咄嗟に防御する俺の左腕、その前腕に噛み付かれる。ミシッ、と骨が軋む。

「痛っ!! っの野郎ぉぉぉっ!!」

 眼球の無い、ミイラのような黒い顔。その顔面に右手で拳を叩き込む。

 ドゴッ!! ドゴッ!! ドゴッ!!

 まるで硬いゴムボールを殴るような感覚。今の俺の拳なら鉄の塊だって潰す事ができるのに!!

 ドゴッ!! ドゴッ!! ドゴッ!! ドゴッ!! ドゴッ!!

 ボギンッ

「んぐっ!!」

 前腕の骨が噛み砕かれる。気持ち悪いけどな、そんな事を言ってる場合じゃねぇ!!

 重なった枯れ葉のような感触、俺はアビスコの窪んだ両目の中に指を突っ込む。そして指先から発生させた炎がアビスコの人体の穴という穴から噴き出した。

 そしてそのままアビスコの頭を引き剥がす。同時にアビスコの膝蹴りが俺の腹部にめり込んだ。竜にブン殴られるのと同等の威力で蹴り飛ばされる。

 クレーターのように抉られた地面をゴロゴロと転がる。転がりつつも魔法で折れた腕の骨を回復。

 復活前でこの強さ、綺麗も汚いもあるか!!

 俺は胸元の体育教師ホイッスルを二個とも同時に吹く。

 ピピーピピーピピー

 アバンセとパル、二人の力を借りて今この場でアビスコは倒すべきだ!!

 目の前で火花が散るかのよう。俺の顔面にアビスコの膝蹴りが。片足のくせになんて動きだよ!!?

 一瞬意識が飛び掛けるが、アビスコの体を受け止め、そのまま地面へと叩き付けた。足で何度も踏み、さらに細切れにすべく魔法で風の刃を生み出したが……この野郎、固過ぎる!!

 物理と魔法、持てる全ての力でアビスコに対抗するのだが……


 俺はアビスコの千切った左手を持ち、その場から逃げ出した。


 真っ向勝負で勝てん!! 時間が圧倒的に足りない!!

 俺の能力の制限時間。あの場で途切れたら、その場で殺される。

 そしてそれからすぐだった。

「シノブ!! んっ!!? パル、何故お前がここに!!?」「シノブ!! あん!!? アバンセ、何でテメェがここに!!?」

 アバンセとパル、二人の竜の声が重なる。

「後にして!!」

「あ、ああ」「お、おう」

 だがしかし、戻ってみればすでにアビスコの姿は無いのであった。

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