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リトライ!!─救国の小女神様、異世界でコーラを飲む─  作者: 山本桐生
鬼ごっこ編

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交換と切断

「見付けたのはあたしの能力」

 シャーリーは素直に話す。

 ユリアンは内心で舌打ちするが、それは自分自身に対する不甲斐無さにだ。この場を乗り切る術を思い付かない。

 言葉を続けるシャーリー。

「あたしの事どれくらい知ってるわけ? 少しは調べたりしてんでしょ?」

「魔弾だったか。戦場での話も聞いたが、自在に操作ができるのだろう?」

「そう。だけどそれが全てじゃないんだよね。操作もできる。それと対象に向けて撃てば何処までも勝手に追跡する。相手を追跡して曲がっていく魔弾の話とかも聞いてんじゃない?」

「ああ、聞いている。その魔弾で俺達を見付けたという事か?」

 シャーリはベレントを指差す。

「最初うちのお店に来た時。いかにも問題起こしそうな感じだし、魔弾撃っといた。気付かなかったでしょ。あたしは魔弾の位置が分かるから、それで見付けた」

「別行動をしていた理由は?」

「魔弾の追跡効果を何日も続けて、距離も離れた相手を見付けるのはメチャクチャ体力を使うから。反動で魔弾自体しばらく使えないから別行動。ユリアンはあたしの護衛」


『ねぇ、シノブさぁ、赤い魔弾の事がバレそうになったらどうすれば良いと思う?』

『本当と嘘を混ぜれば良いよ。全部を隠そうとするからボロが出るんだし』

『バレても良いような事は素直に話して、本当に隠したい事だけ嘘にするとか?』

『そうそう。それでダメなら……』

『ダメなら?』

『あきらめろ』

『あきらめんの!!?』


 シャーリーは堂々とベレントに嘘を吐く。


「ふむ。一応の説明は付く」

「一応とかじゃないんだけど」

「つまり現時点でシノブが俺達の場所を特定する事はできない」

「できてたらもう助けに来てるって」

「……」

「……他に何か?」

「……休憩は終わりだ。歩くぞ」


★★★


「ここにアビスコの右目があるけど。はい、リコリスならどうする?」

「わたくしですか?……ベレントは他の部位を持っていますわ。右目があれば相手を見付ける事ができるのだから奇襲。わたくしならそうします」

「はい。50点」

「50……100点満点中50点……厳しいですわ」

「1000点満点中50点だよ」

「1000点……」

「リコリスちゃん、相手は私達がどの部位を持っているか分からないかも知れない。けどそれが右目だった場合の想定もしていると思うの。つまりね、単純に右目を使って追い掛けたら罠があるかもだよ」

「そ、そういう事ですのね。でも本当は分かっていましたわ」

 リアーナの言葉にリコリスは頷く。

「分かってたらあの回答は出ないだろ」

「ベリーは死ねですわ」

「何でだよ?」

「シノブならそれを逆手に取って何か思い付きそうだけれど」

 ロザリンドは俺へと視線を向ける。

「そりゃもちろん。でもビスマルクさん、ヴイーヴルさん、もしかしたら二人とも王立学校を辞める事になるかも知れません。責任を取らされて最悪無職に」

「シーちゃんが何をするつもりかは分からないけど~私は別に構わないわ~そもそも大人は責任を取る為にいるんだもの~」

「そうだな、気にするな。無職、それも気が楽だ、ガハハハハッ」

「ちょー!! パパが無職なんて御免ですわ!! 学費もありますし!!」

「そんなん私が出すから心配しなさんな」

 そう言って俺は笑った。


 そして……


★★★


 指定された場所は広~い広~い平原。丘陵の起伏も無い、もちろん隠れるような場所も無い。

 俺の両サイドにはビスマルクとヴイーヴル。二人とも一つずつ木箱を持つ。


 そんな俺達の目の前には大男の鬼、ベレント。その後ろに鬼二人、その鬼二人に拘束されているユリアンとシャーリー。


「二人に拷問なんかしてないでしょうね?」

「もちろんだ」

「だったら良いけど」

「アビスコの体はその木箱の中か? 見せてもらおう」

「ダメ。まず二人を返して」

「中身の確認が先だ」

「交換するアビスコの体二つは私達がすぐ用意できる二つ。それと海底洞窟、先に行ってましたよね。それはあなた達がアビスコの体の位置が分かるから。だったら分かるでしょう? この木箱の中身が」

 ベレントは背後の仲間へ視線を向けた。視線を向けられた鬼は頷く。

「二人を返して」

「……」

「……」

「……木箱を下に置け」

「置いてください」

 木箱を地面に置く。

「連れて来い」

 ベレントの指示でユリアンとシャーリーの二人は解放された。

「シノブ、助かった」

「さすがのあたしもいつ殺されるかってドキドキしてたよ」

 確かにベレントの言う通り、拷問などはされていないようだぜ。してたら殺す。

「そのまま退け。安心しろ。俺達はお前達の姿が見えなくなるまでは動かない」

「随分と親切だね」

「わざわざアビスコの体を持って来て貰ったからな」

「嫌味も言えるんだ?」

「当然だ」

 ベレントの表情は変わらない。相変わらずの無表情。しかし声が少しだけ楽しそうなのは気のせいか……

 そうして俺達はその場所から離れるのだった。


★★★


「ユー君もシャーリーちゃんも無事で良かったわぁ~」

「二人共、大きな怪我など無いな?」

「それは無いけど……ごめん、シノブ。俺達が捕まったせいで……」

「いやいや、完全に私のせいなんだけど。別行動の指示したの私だし。でもシャーリーの能力的にすんなり解放されるとは思わなかったよ」

「あっ、それあたしの機転!! だよね、ユリアン?」

「まぁな。横で聞いてたこっちは生きてる心地しなかったけど」

「その話は後で聞くとして。ビスマルクさん、ヴイーヴルさん、ほら大成功でしょ?」

「ガハハハハッ、まさかあんな手を考えるとはな」

「本当よ~聞いてしまえば単純だけど~発想が普通じゃないわ~」

 俺は自分で笑ってしまう。

「また悪知恵。シノブ、笑ってるし」

「ちょっとシャーリー、人聞きが悪い」

 でもホントに笑っちまうぜ。

 ベレントのデカ野郎が木箱の中身を確認した姿を想像するとよ!! うひゃひゃひゃひゃっ


★★★


 そのシノブが想像しているベレントの実際の姿は……


 木箱の中身を確認してもベレントのその表情は変わらない。表情は変わらないのに……くっくっくっ……小さく笑っていた。

 そんなベレントの姿を見るのは仲間でも初めて。

「シノブか……想像以上に手強い」

 ベレント達、鬼はアビスコの体がいくつに切断されたかを伝え聞いていた。そして所持していたアビスコの左目で他の部位の大体の場所が分かる。

 だからシノブの言う通り、すぐに用意ができそうな二つを要求したのだが……木箱の中身は……

「まさか左足一本だけとはな」

 そう、シノブは左足一本を切断し、別々に木箱へと収めていたのだ。

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