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リトライ!!─救国の小女神様、異世界でコーラを飲む─  作者: 山本桐生
大陸のアイドル編

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処罰と行方不明

 ディン・ロイドエイクがシノブを暗殺しようとした事件。

 それはニーナによって明らかにされる。

 ただ事が事だけにニーナの調査だけでは真偽の判断は難しいと思われた。しかしその判断の後押しをしたのがモア商会、メリッサだった。ラムニタ海商がシノブ襲撃の金銭的な支援をした、その事実を突き止めたのだ。

 これにより真相は確定。

 しかしロイドエイク家、協力したボーレー家は共に名家であり、計画実行をしたのは息子であるディン・ロイドエイクとトーヘル・ボーレーという個人。処罰は内々に行われた。

 両家とも遠く離れた地を治めるという名目での追放刑。

 ディンももう自ら動く事は無いだろう。下手したら本当に家が潰される。そうなったらプライドの高い親兄弟から殺される可能性だってあるのだから。


 ラムニタ海商は支援した金銭の使用目的を知らなかったと主張したが、代表のジャンスが解任へと追い込まれた。その後任はドミニクス。モア商会の人間だ。

 モア商会は実質的にラムニタ海商を取り込んだ事になる。

 つまりメリッサはこうなる事を見越して、真相の調査をしたという事だ。

 俺にとってはドミニクスという不安材料が残るが、そこは今回の事を考慮してメリッサが押さえ込むだろ。


 つまりこれで襲撃事件は解決したという事。

 全く、良くも悪くも大陸のアイドル様は大変だぜ!!


★★★


「……」

 閉店間際、お客さんのいない時間帯。

 それはこのお店に似つかわしくないお客さんだった。身長が二メートル近い大男。年齢的には三十代後半から四十代後半か。あの傭兵風の男よりさらに分厚い筋肉を鎧が包み、背中には巨大な棍棒を背負う。そして黒に近い褐色の肌に、深い黒髪。    

 そして額の上、髪の毛の生え際辺りに二本の角を持つ。燃え上がる炎が形作ったかのような赤い角。

 こんな種族は知らない……でも俺が知らないだけで、何処かの少数種族か?

 とにかく直近に同じような事があったんで嫌な予感がするぜ。

「……」

 男は周囲を見回し……

「……シノブか?」

「はい、私がシノブですが。何か商品をお探しでしょうか?」

「ただ顔を見たかっただけだ」

 大男は表情を変えず、静かにそう言った。

「顔ですか?」

 自他共に認める大陸のアイドル様だしな!!

「思ったより幼いな」

「……ま、まぁ、年齢のわりには幼く見えるかも知れませんね」

「救国の小女神」

「……そう呼ばれる事もあります」

 表情を全く変えない大男。ただその目は俺をジッと見詰めていた。何を考えているか分からないって、ハッキリ言って怖い!!

「ふむ」

 大男が頷いた、次の瞬間。

「……」

「シノブ様」

 フレアとホーリー。二人の防御魔法が幾重も俺の眼前に展開していた。

 そしてドレミド。男の正面に立つ。

「ドレミドちゃん」

 アリエリの頭の上に乗るベルベッティア。

「はい」

 そのアリエリが剣をドレミドに投げ渡す。

「どういうつもりだ?」

 ドレミドは静かにそう問いながら、受け取った剣を抜いた。

 大男は自分の背後へと視線を向ける。

 そこには全身の毛を逆立て、低く唸るヴォルフラム。そして商品棚に隠れるようにしてシャーリーの魔弾が大男を狙っている。

「全員が優秀だ」

 囲まれているこの状況にも、大男は全く表情を変えなかった。そして続ける。

「試しただけだ。今は争うつもりも無い」

 試した、って……俺には分からないが、みんなの反応を見れば何かがあったのだろう。それよりも『今は』って言ったよな?

「あの、面倒事とか御免なんですけど」

「それは無理だな」

「このまま帰すと思うか?」

 ドレミドだ。

「こちらはまだ何もしていない……この店はそんな俺に剣を向けるのか?」

「……シノブ。どうする?」

 大男から視線を一瞬たりとも放さないドレミド。

「本当にシノブの顔を見に来ただけなんだが」

「ここは私達のお店だし。ここにいるの全員身内だし。なんかでっち上げて拘束してあげるよ。で、シバいてやれば何か喋りたくなるでしょ」

「面白い。これがシノブか」

 面白い……と言うわりに全くの無表情。

 大男がそう言うと同時。

 外から、ショーウィンドウを突き破るように何発もの火球が撃ち込まれた。

 またか、また火球か!!? どうして俺ってのはこんな事ばっかりに巻き込まれにゃならんのだ!!? 今度は誰だってんだ!!?

 火球はアリエリの見えない力が包み打ち消してしまう。もちろん防御魔法も展開されているので危険はほぼ無い。

 ただその攻撃の最中。 

「逃げられた。追うか?」

 ヴォルフラムの鼻なら確かに追える。けど相手は俺の知らない未知の種族。それにシャーリーの赤い魔弾もある。

「追わない。ちょっと危ないかも知れないから」

 そう言う俺の胸元、服の下からコノハナサクヤヒメがスルスルと現れた。

「今回は拙者の出番がありませんでしたな」

「……いつも思うんだけどさ、どうやって隠れてんの……」

 服の中に隠れているような違和感も全くねぇの、このスライム。

 しかしあの野郎、店をブッ壊しやがって。絶対に土下座させてやるからな。


 ちなみにヴォルフラムが言うには、大男は殺気を発したらしい。とにもかくにも、この俺、大人気。

 全く、全くもって大陸のアイドル様は大急がしだぜ!!


★★★


 とある日。

「すいません!! シノブさんはいらっしゃいますか!!」

 それはこのお店に似つかわしくないお客さんだった。軽装の皮鎧を装備した男。店の中に飛び込むと同時にそう叫ぶ。

 もう!! また!! あーもう!! あーもう!! 何、何なん!!? いつもいつも!! 俺は!! 日々平穏に仕事をしたいだけなんだよ!! 男の胸倉を掴み上げ、前後にガタガタと揺らす……妄想をしつつ。

「はい、私がシノブですが。何か商品をお探しでしょうか?」

「ロザリンド様が……」

「ロザリンド?」

「はい。ロザリンド様が行方不明になりました。竜に襲われ、そのまま……」

「レオさん。お店をお願いします。みんな、すぐにでも動けるように準備だけはしといて」

 相手は白雷と呼ばれる竜、バイソンである。

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