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リトライ!!─救国の小女神様、異世界でコーラを飲む─  作者: 山本桐生
プロローグ

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19/244

その後と直接勧誘

 わぁー、校長、教頭、担任、その他の全教師が揃い踏み。

 これが就職で言う圧迫面接かぁ、就活した事が無いんで分からんけど。 

 呼び出されて教師達の質問攻め。

 三つ首竜と轟竜が現れた、あの日。俺とリアーナは学校から行動を起こした。魔法を使ったら分かる仕掛けのある制服のままで。

 つまりリアーナと俺がバンバン魔法を使った事が先生達にはバレていた。

 リアーナはまだしも、魔法を使えないと思われていた俺が、使える者すら少ない強大な魔法を湯水のように使っていたのだ。

「アバンセです。私の力はアバンセから一時的に借りたものです。全てはアバンセの計画行動です。とにかく後はアバンセに聞いてください」

 でもこれで乗り切ったけどな。

 もちろん先生達にも疑問はあるんだろうが、アバンセの名前を出されると頷くしかない。不死身のアバンセという存在は基本的には触れてはならない存在だと思っているんだろう。


 そんな教師の質問責めも大変なんだが、それよりもっと大変なのは……

「二人とも凄いよ!! この町を救ったんだもんね!!」

 教室に入るなり、クラスメイトが俺とリアーナの周りに集まる。

「リアーナが大きな狼の背中に乗って、町を襲ったゴーレムを全滅させたんだよね!!?」

「聞いた聞いた!! ハルバードを振り回しながら、凄い魔法で全滅させたって!!」

「それを指揮していたのはシノブだって聞いたぞ?」

「シノブそういうのは得意そうだもんな」

 町中でゴーレムと戦った姿が伝えられていた。

「まぁ、何て言うか……私とリアーナにとっては実に簡単な仕事だったよね」

「シノブちゃん、調子に乗るとまた怒られるよ?」

 あの後、お父さんとお母さんにリアーナの見ている前でメチャクチャ怒られた。


 さて余談。ゴーレムは町の周囲にもかなりの数が現れていたが、それに一人で対処していたのがアデリナさんだった。

 さすが森の主。ヴォルフラムのお母さんだぜ。


★★★


 その後である。

 竜の山、頂上。

「ねぇねぇ、シノブちゃん、可愛いねぇ~」

「まぁ、確かに可愛いけど」

「これが竜とは思えない」

 胸に抱えられる程に小さい四人の竜。アバンセ、サンドン、ヤミ、パル。みんなコロコロとしたヌイグルミみたいで確かに可愛い。ヴォルフラムの言う通り、これが世界の頂点に君臨する竜達とは誰も思わないだろう。

 事の次第の説明。

「シノブは神々の手なのね」

 ヤミは言う。

「まさか俺より強いなんて、神々の手って奴は凄ぇーな」

「いや、竜を倒す程の力を持っているのは神々の手でもシノブくらいさ」

「ジジイは他の神々の手を知ってるのかよ?」

「その辺はヤミの方が詳しいじゃろ」

「ああ、ララの事? ララ・クグッチオ。魔法を生み出した大天才ではあるけど戦闘能力的には竜に及ばないわね」

「……いや、もう分かっただろ。帰れ」

 アバンセは呆れたように言う。

「あーお前はリアーナだっけ?」

 パルが俺の前に。

「リアーナは隣。私はシノブ。最初に名乗ったでしょ?」

「ふーん、シノブか。よし、お前、俺の妻になれ」

 ……

 …………

 ………………

 全員、言葉を失う。

「はぁ?」

「強い女だ。俺に相応しい」

「ちょっとパル、本気なの? まだシノブは子供よ?」

「今じゃねぇよ。それにコイツは将来的にとびきりの美人になるだろ。今から婚約しといても問題無ぇ」

「それはお主が決める事ではないよ。シノブ自身の意思もある」

「んな事は分かってんだよ。シノブ、俺と一緒になれ」

「……駄目だ」

「ああん?」

「駄目だと言ったんだ」

「ちょっとアバンセ、あなたまでまさか……」

「お前の許可なんて求めてねぇよ。シノブに聞いてんだよ」

「シノブはな……俺の妻になるんだ!!」

「ふざけんな!! シノブは俺のもんだ!!」

「パル、貴様こそふざけるな。シノブを幸せに出来るのはこのアバンセただ一人。誰にも渡さんぞ」

 いがみ合うアバンセとパル、呆れるヤミ、面白そうな顔をしているサンドン。

「ヴォルちゃん、見て、シノブちゃんをめぐって男の人二人が争ってるよぉ」

 リアーナの目がキラキラとロマンスに輝いていた。

 やはり男の大半はロリコンなのかも知れんな。

「いや、私、一緒になる人って決まってんだけど」

「誰だ!!?」「誰だ!!?」

 アバンセとパルの声が重なる。

 その目の前で俺はリアーナに抱き付いた。

「リアーナだけど」

「わ、私?」

 その姿を見て、ヤミは微笑んだ。

「良いと思うわ」

 その微笑みを見て思った。ヤミ……コイツはコイツで特殊な性癖を持ってそうだぜぇ……

 ちなみにこの場に三つ首竜はいない。

 基本的にアバンセ、サンドン、ヤミ、パルは敵対しているわけではない。ただ三つ首竜だけは別。本気で他の竜を排除したいと思っている節がある。

 馴れ合う事は無く、さっさと退散した。

「シノブ、お前にはこれをやる」

 パルが取り出したのは銀色の体育教師ホイッスル。

「必要無い。俺が渡した笛だけで充分だ」

「うるせぇ。ほら、シノブ受け取れ」

「ありがとう」

 まぁ、持ってて悪いもんじゃないから良いだろ。

「くっ、何故に受け取る……」

「ではリアーナには私の笛をやろう」

「ありがとうございます」

「じゃあ、私のはヴォルフラムにあげようかしら」

「俺はいい。それもリアーナに」

「そう? じゃあ、リアーナ。はい」

「あ、はい、ありがとうございます」

 サンドンとヤミも同じような銀色の体育教師ホイッスルを取り出す。

 全部、銀色のホイッスルじゃねぇか。後で名前を書いておこう。

 こうして俺達はヤミとパルとも知り合いになるのだった。


★★★


 それからさらに数日後。またも俺とリアーナは校長室に呼び出された。

 今度は何じゃろな、っと。

「二人に王立学校から勧誘がありました」

 俺達がゴーレムを撃退した事、それがどうも王立学校に伝わったらしいのだ。結果として編入試験を受ける事が出来るらしい。

「私とシノブちゃんが王立学校……」

「ああー先生、私は辞退でお願いします」

「えっ、何で?」

「いやいや、リアーナにも言ってんじゃん。私は15歳になったら働くって」

「でもせっかく王立学校から話があったのに……」

「そもそも向こうの勘違いでしょ」

 ゴーレムを実際に倒したのはリアーナだし、俺が使った力だってアバンセからの借り物という事になっている。

 要するに俺が勧誘される理由が何も無い。

「ともかく二人とも、ご両親と相談して決めなさい。シノブもせっかくの話なんだからそんな簡単に決めないで、もう一度しっかりと考えなさい」


「ってわけで、お母さん。なんか私にも王立学校から勧誘があった」

 家に帰ってさっそく伝えてみる。

「凄いじゃない!! 王立学校なんて滅多に入れない所なのよ? 姉妹揃って王立学校なんて、お母さん周りに自慢して来ようかな」

「ちょっと止めて。私、行くつもり無いよ」

「王立学校よ? お姉ちゃんもいるのに」

「お姉ちゃんと一緒の学校なのは良いけどね。それよりお母さん、良い仕事先はあった?」

 俺は初等学校を卒業したら仕事をするつもりだ。良い仕事先があったら紹介してもらえるように、お父さんとお母さんには頼んである。

「ねぇ、シノブ」

「ん?」

「お金の心配なんてしなくて大丈夫なのよ?」

 確かに王立学校に通うには金が掛かる。その事で迷惑を掛けたくない気持ちもあるが、それが全部じゃない。俺にとっては本当にあまり必要と感じないのだ。

「本当にそんなんじゃないって。そもそもよく考えて。私は勉強出来るけど、基本的に運動音痴で魔法も使えないんだよ? 向こうの勘違いに決まってるって」

「まぁ、言われてみればそうね」

「酷い!!」


 そう考えているのに、全く世の中とは思い通りにいかないもんだな。

 王立学校に断りの連絡を入れた数日後に彼女はやって来た。


★★★


 眼鏡を掛けた大人の女性。クルンクルンとしたクセのある黒髪、年齢的には20代真ん中くらいか。美人のお姉さんって感じだな。

 女はチオ・ラグラックと名乗った。そして王立学校長とも。直接勧誘である。

「その学校長がどんな御用でしょうか? もしかしてユノに何か?」

「いえ、今日はシノブさんの事についてお話がありまして」

 お父さんの言葉に、チオは言う。

「王立学校の編入を断ったと聞き、私が伺わせて頂きました」

「それでわざわざこんな遠くまで……一体お話とは何でしょうか?」

 と、お母さん。

「なぜ王立学校への編入を断ったのかと」

「それはお伝えしたと思いますが、娘は確かに座学の成績は良いかも知れません。ただ剣術も体術もあまり得意ではありませんし、何より魔法が使えません。町を襲ったゴーレムを倒したと思われていますが、シノブ自身は何もしていませんし、使った魔法も不死身のアバンセの力です。王立学校に通えるものではありません」

「いえいえ、お母様。娘さんは神々の手と呼ばれる特殊な能力をお持ちですよね?」

 ……何で知ってる?

「神々の手? どういう事でしょうか?」

 しかしお母さんは普段の顔で答える。普段と違和感の無い自然な表情。

 お父さんの方は……無心。顔に出るかも知れないのを自分で察して何も考えていない顔だ、ありゃ。

「この先、その能力が原因で様々な問題が起こるでしょう。それらを乗り越える力を王立学校なら与える事が出来ます」

「言っている事は分かりますが、私の娘にそんな能力はありません」

「王立学校は王国が管理しています。能力の悪用を考える相手がいても、簡単には干渉が出来ません。この町で暮らすよりも安全なはずです。王立学校で学び、力を付け、またここに戻れば良いのではないでしょうか?」

「……お話しても無駄なようですね。お引取り下さい」

 チオは大きく溜息を付いた。そして立ち上がる。

「シノブさん、もう一度、私の言葉を考えてみて」

 俺を見ながらチオは言う。

「そうですね。私、編入しても良いです。まぁ、編入試験に合格するとは思えないけど」

「ちょっとシノブ? 王立学校には行かないって言っていたじゃない?」

「さっきまではね」

 ……気に入らねぇ。

 何が俺の為だ。力のある俺を囲って置きたいだけだろうが……こういう奴が一番信用ならねぇ。だったら逆に編入してやる。それで能力は絶対に使わない。お前の『勘違いだった』って事にしてやる。

「私達はいつでも貴女を歓迎しています。後は家族でよく話し合って、全員が納得する答えを出して下さい」

 そう言い残してチオは出て行く。

「……」

 ふんっ、編入させた事を後悔しやがれ。

「シノブ、どうしたんだ? ずっと進学はしないって言っていただろう?」

「どうして急に編入しても良いと思ったの?」

「お姉ちゃんもいるし、リアーナも多分編入出来るだろうから、行っても良いかなって。確かに卒業したらまた戻ってくれば良いんだし」

 編入してチオに嫌がらせをしたいのはもちろんなのだが……

 チオは俺の能力を知っている。つまり俺の能力を知る者が他にもいる可能性がある。だとしたら後ろ盾が必要になるかも。それが王立学校、そして王国になるかも知れない。

 もちろん王立学校が俺を悪い方向に利用しようと考えている可能性もある。それらを含めて、自分で飛び込んで確かめてやる。

 場合によっては……

「ちょっとシノブ? 今、変な事を考えてない?」

「お母さん、鋭いね。場合によっては王立学校を消滅させてやろうかと」

「お前は本当にやりそうな雰囲気があるな」

「その時は酷い事を言うお父さんも一緒にね」

 俺はニコッと微笑んだ。


 こうして俺は編入試験を受ける事を決めたのだった。

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