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リトライ!!─救国の小女神様、異世界でコーラを飲む─  作者: 山本桐生
大陸のアイドル編

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夢魔の置物とスケベ宿屋

 ベッドの上。

 小さな体の上に覆い被さる大きな体。二人とも裸だった。

「っ!! シノブ!!」

「ちょっと待って!! で、でもまだ最後まではできないからね!! んんっ」

 アバンセにキスで口を塞がれた。

 その強い力に抵抗はできない。そして抵抗する気も無かった。

「本当にダメか?」

「……」

「……」

「……ううん、ダメじゃないよ……」

 そして二人は最後まで経験してしまうのである。


「っ!!」

 飛び起きると、最初に目に入ったのは薄暗い自分の部屋。まだ日が昇る前。

 暗闇の中に浮かび上がるヴォルフラムの姿。

「どうしたシノブ、大丈夫か?」

「えっ、ヴォル? 私……夢?」

 ……確かに途中まで経験をしている。けどさすがにそこまではしていない。

 やっぱり夢か。

「ちょっと変な夢を見ちゃって。ごめんね、起こしちゃって」

「問題無い」

 再びベッドの中に体を沈めるが……

「……ちょっと汗かいたから拭いてくる……」

「?」

 不思議そうな表情を浮かべるヴォルフラムだった。


★★★


 それから数日。

 朝。

「……」

「シノブ」

「ヴォル。おはよう」

「おはよう。どうかしたか?」

「別に。どうもしないよ」

「……なら良いけど」

 いや、実は良くない。

 ドスケベじゃ。ドスケベな夢を見るんじゃ。

 ここんとこ毎晩、いくらなんでも異常。とはいえ毎日のようにスケベな夢を見るなんて相談してもな……そこで今夜はこれだ。


「しかし急に何なの、泊まりにきてとか」

「いや、こうやってシャーリーと二人でお泊り会とかしたこと無かったなって」

「そうかもだけど、ベッドも一緒なの?」

「嫌だった?」

「別に嫌じゃないけど狭い」

「まぁまぁ」

 シャーリーを呼び出し、事情を伏せて一緒に寝てみる。

 ……

 …………

 ………………

 最初は背中同士を合わせていたが。

「……シャーリー。まだ起きてる?」

 シャーリーへと向き直るシノブ。

「起きてるけど」

 シャーリーも寝返り。向き合い、見詰め合う。お互いの呼吸音はもちろん、心臓の音まで聞こえてきそうな近い距離。

「……ねぇ、キスしてみる?」

「シノブって時々バカだよね」

「確かに。たださぁ、かわいい女の子を目の前にして何もしないってのもどうかなって」

「だからって……そういう事はアバンセやパルとすれば良いじゃん」

「女の子は別腹」

「いやいや、意味が分からないんだけど」

「シャーリーが嫌じゃなければしたい。嫌?」

「それも……別に嫌じゃない」

 シャーリーとのキス。

 お互いの柔らかい唇が重なる。

「まさか、あたしの最初のキスがシノブになるなんてね」

 少しだけ困ったように笑うシャーリー。

「私は嬉しいよ」

 再びキス。

 やがて二人は……


★★★


 翌朝。

 スッポンポンな俺とシャーリー。

「シノブ……あたし、本当にしちゃったの?」

「……多分、夢なんだけど」

「夢!!? 夢ってどういう事!!?」

 シャーリーは飛び起きた。

「いや、実はね」

 事情説明。


「マジでバカ!! バカアホエロ小女神じゃん!! 巻き込まれたこっちの身にもなれっての!!」

「ごめんごめん、だって他に検証のしようがないんだもん」

「だからって、事前に説明ぐらいしろ!!」

「ちなみに何処までが現実で、何処からが夢か曖昧なんだよね」

「えっ!!? じゃあ、あたしとシノブが本当にキスしてた可能性も……」

 まぁ、全部が夢だったら二人して全裸のはずないんだけど。だがそこはあえて指摘しないでおこう。

「でもさ、私とだったら嫌?」

「……嫌ではないけど」

「だったら良かった」

 とりあえず身支度を整えて。


「とにかくこれでハッキリした。ここでスケベな夢を見る事が。そこで相談役に同性のこちらの方々に来て頂きました」

 フレア、ホーリー、ベルベッティアに来てもらったわけだが、そのホーリーが早々に。

「シノブ様、こちらの置物が原因だと思われますが」

 机の上の小さな置物。ホーリーはそれを手に取る。

 木彫り馬の置物。黒く塗られたそれ。あんまし机の上は片付いてないし、小さいので気付かなかった。けど……

「何それ、私、そんなの知らないんだけど」

「あーそれ、あたしあたし。行商の人からタダで貰ったんだけど、幸運の置物なんだって。シノブに良い事があったら、『実はあたしがこれを置いたおかげだ』って言おうと思って」

 シャーリーは言う。

「確かに微かだけど魔力を感じるよ」

 ベルベッティアの耳がピクピク動く。

「フレアは?」

「はい。ベルベッティア様と同じく。それとこれは夢魔ではないでしょうか?」

「夢魔……確かに……」


 淫魔……女性型の淫魔はサキュバス、男性型の淫魔はインキュバスと呼ばれる。共に性的な夢の中に現れ、人の精を糧にすると言われていた。

 それらを含めて夢の中に現れる悪魔の総称を夢魔と言い、その姿は黒い馬の姿で描かれるのである。


「シャーリィィィィィッ、お前が原因かぁぁぁっ!!?」

「ちょ、ま、待って、私はシノブの為にと思ってさぁ!!」

「あはっ、タダで貰える物には何かしら理由があるんだね」

 ベルベッティアは笑う。

「では、こちらは私の方で処分をしておきます」

「……待って。ホーリー」

 これは……良い商売になるんじゃないか?

 確かにこれが夢魔の力を宿しているのなら、一晩ごとに精を抜き取られているのだろう。しかし一日二日なら何の問題も無い。

 つまりだ……スケベな夢の見られる宿屋を開店すれば、男性客が集まってくるのではないか!!?

「スケベ宿屋の開店だ!!」

「シノブがトンでもない事を言い出した……」

 シャーリーはもちろん、全員が呆れた表情を浮かべるのだった。


★★★


 しかし後日。

 お母さんと向き合う。その顔を見れば一目で分かる。怒っている。

 二人の間のテーブル。ドンッと置かれた夢魔の置物。

「あの……お母さん……どうしてそれを?」

「『どうしてそれを?』じゃないでしょう?」

「それ、シャーリーからのプレゼントなんだよ。でもちょっと趣味が悪いよね~あはは~」

「スケベ宿屋」

「っ!!?」

「男性に変な夢を見せる宿屋をやろうとしているそうね?」

「た、確かにその置物でそんな夢を見るかも知れないけど、スケベ宿屋なんてもちろん冗談で言ったんだよ?」

「だったらどうしてすぐ処分しないの?」

「えっ、あっ、もしかしてフレアとホーリーから聞いたの?」

「そうね、シノブが変な仕事を始めようとしているって。だから止めてくださいって」

「あの裏切り者共めぇぇぇっ!!」

 お母さんがドンッとテーブルを叩く。怖い!!

「二人ともシノブの為に言ってくれたんでしょう!!」

「は、はい、その通りでございます!!」

「でも本気じゃかったのよね?」

「もちろんだよ!!」

「ミツバさんに良い空き物件がないか確認したんじゃない?」

「……ごめんなさい」

「シノブ」

「でも本気2割冗談8割くらいの感覚だったんだよ!!」

「2割も……これはちょっと本気で怒らないとダメみたいね」

「だから、ごめんなさい、って言ってるのにーーーっ!!」

 以後、説教は深夜まで続くのである。

 夢魔の置物?

 もちろんお母さんに処分されたわ。

 しかしまさかあの夢魔の置物が、この後にとんでもない事態を引き起こすとは……今はまだ思いも寄らないのである。

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