表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リトライ!!─救国の小女神様、異世界でコーラを飲む─  作者: 山本桐生
神々の手編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

180/244

想像の斜め上と砲撃戦

 全てが順調に進めばそれが一番良いわけだが、もちろん想定外の事も起こる。ただちょっと待て、これは想像の斜め上ってヤツだろ。


「王都が攻められてる!!? 誰に!!?」

 もちろんアルテュール軍。しかも大軍。

 どういう事だ……周囲の防衛都市は警戒をしていた。少数ならすり抜ける事も可能かも知れないが、大軍がどうして?

 そもそもできるならどうして最初からそれをしなかった?

 思い付くのは一つ。

 それをできるのがかに座の能力。

 

 ちなみにベルベッティアとロザリンドは別行動中。二人は島国へ。


★★★


 そして久しぶりの王都。

 うおぉぉぉぉぉっ!! だっせぇ!! スゲェけど、だっせぇ!!

 報告を受けた通り、そこにアルテュール軍はいた。

 王都の上空。そこに浮かぶのは巨大な船。その船体にプロペラが回る。これ、前世の国民的ゲームで見た事があるぜ……ゲームの中では飛空挺と呼ばれていたか。

 ただその船首に蟹のオブジェが!!

 前世で見た有名な飲食店。あの店頭のオブジェがそのまま船首に飾ってある!! しかもデケェ!! これ絶対にかに座の能力だよ!! だって蟹付いてるし!! しかしだっせぇ!!


 そんなアルテュール軍に俺は対抗する。そっちが船なら、こっちは城だ!!

 天空の城、発進。

 後々に色々と問題は起こるだろう。だけどこのピンチに使わずいつ使う?

 玉座の俺。その隣に護衛として立つのはリアーナ。

「凄いね。シノブちゃんが城主なんでしょう?」

「そそ。しかもただ空に浮かぶだけのお城じゃないんだよ。食堂とか無限に食材が沸いてくるし、お風呂もいつでも入りたい放題だし」

「でもこんな感じで来たくなかったな」

「私もこんな感じで来て欲しくなかったよ」

 本当ならさ、みんなでゆっくり旅行とかさ、そういう時に利用したかった。こんなふうに戦う為じゃねぇよ。

 目の前にいくつものモニターが浮かぶ。その一つにカタリナの姿。

『城主様。本当によろしいのですね?』

「……うん。砲門開いて。ただ出力は最低限、牽制程度の威力にして」

 さらに別のモニターには空飛ぶ蟹船から無数の女天使がこちらに向かって来る姿が映し出されていた。

『砲門、開きました』

「ねぇ、リアーナ。相手も後が無いと思うからさ、多分、凄く大変な戦いになると思う」

「大丈夫。シノブちゃんは私が守るよ」

「いや、そうじゃなくて。夕ご飯が遅くなっちゃうな、って」

 俺とリアーナは笑う。

 さて。

「じゃあ、行くよ……ってぇぇぇぇぇっ!!」

 砲門から放たれるのは光線。高温、そして触れれば爆発を起こす。抑えてこの威力、怖いわぁ。

 それと同時、蟹船からも砲撃を受ける。高速で撃ち出される徹甲弾。天空の城の城壁を砕き貫くと、爆発、炎を撒き散らす。

 轟音が響き、城全体が激しく揺れる。

「カタリナ、全速力!! 突っ込むよ!!」

 天空の城、前面にフレアとホーリーの防御魔法を盾として展開し、蟹船へと突っ込む。ここで戦えば、真下の王都に被害が出る。分かっているが避ける事はできない。なら少しでも早くこの場所から蟹船を押し出してやるぜ!!

 お互いの距離が詰まる。至近距離での砲撃戦。全てを防御魔法では防げない。

 目の前、いくものモニターが赤く点滅し、耳障りな警告音が鳴る。

「カタリナ!! カタリナ!! 行ける!!?」

『出力低下中。しかし計算上は問題ありません』


 ドッガァァァァァァァァァァッ!!!!!!!!!!


「うわっ!!」

 一際大きな衝撃だった。

 俺は玉座から転がり落ちる。

「シノブちゃん!!」

「だ、大丈夫だから!!」

 天空の城と蟹船がブチ当たる。そして接触すると女天使、狼が城の中へと乗り込んで来た。今度は白兵戦。いくつも浮かぶモニターには各地点の戦況が映し出される。

 んっー!! んっー!!

 みんな戦って、傷付いて、それを眺めているだけで何もできないのがもどかしい!! 俺の能力に制限が無ければこのクソ野郎共を一網打尽にできるのに!!

 その中で特に無茶苦茶な戦いをしているのがドレミドだった。


★★★


「大丈夫。私はゴーレムだ。普通の人間よりは耐えられる」

 そう言うドレミドに答えるのはタックルベリー。

「いやいや、聞いた話だとほとんどの部分は生身、ゴーレムの部分の方が少ないんだろ?」

「ベリーは心配性だな。あいつの相手は私に任せろ。その代わり回復を頼むぞ」

「全く。無茶苦茶だ」

 顔を顰めるタックルベリーにドレミドは笑った。そして二人が視線を向けるその先。

「今度こそ、今度こそ、アルテュール様の為に……殺す殺す殺す殺す殺す……」

 毒を撒き散らすさそり座の女。

 その口元からダラリと涎が滴り落ちる。それは足元の石畳を変色させ、溶かし、崩してしまう。強酸だ。

 だがドレミドはそれに怯まず近付いて行く。

「……うぐっ」

 ドレミドは小さく呻き声を漏らした。

 さそり座の女は周囲に毒を纏う。それはドレミドの体を蝕む。さらに女は自らの体を傷付け、血液を投げ飛ばす。その血液に触れたドレミドの肌が焼け爛れる。

「うぐぐぐぐっ」

 それでもドレミドは歩を進める。

 そしてその後ろで唱えられるタックルベリーの魔法。回復量は多いが、魔力消費量も半端ではない高位回復魔法。魔法は絶え間なくドレミドに向けられていた。

 損傷と回復……それを繰り返してドレミドは向かうのだ。

 それでも体に掛かる負荷は大きく……鼻血が垂れ落ちる。

「死ね!! 死ね!! 死ね!! 死ね!! 死ね!!」

「死なないぞ」

 ドレミドの伸ばされた左手が女の喉元を掴む。その左手に滴り落ちる女の涎。

 タックルベリーの回復魔法が間に合わない。左手、皮膚は焼け、肉が爛れ落ちる。目からも、耳からも、口からも、出血。

 ただその中でドレミドは……

 トスッ

 剣を女へと突き立てた。

「すまない」

「あっあっあっあっあっ……」

 さそり座の女は膝から崩れ落ちた。そして一枚のイラストへと変わってしまう。

「ドレミド!!」

 タックルベリーはすぐさまユニコーンの角の粉末を混ぜた水をブッ掛ける。

「……」

「おい。大丈夫か?」

「私とアリエリに似ているんだ」

「今の奴とか?」

 ドレミドは頷く。

「私達にはシノブがいた。だから今もこうして生きている。もしこの場にシノブがいたなら、何か違ったのか?」

「さぁ? 分からん。けど僕は助かったぞ。あんな厄介な奴を相手するのは御免だからな」

「そうか……そうだな、ベリーを助けられて良かったぞ」

「はいはい、助けて下さってありがとうございます。でもまだ終わったわけじゃないからな。回復したんなら次行くぞ」


★★★


「ドレミドぉぉぉぉぉっ!! ドレミドぉぉぉぉぉっ!! フォーーーーー!!」

「シ、シノブちゃん?」

「ちょっと見てたリアーナ今の!!? どうなる事かと思ったけどドレミドがやってくれたよぉぉぉ!!」

「うん。ベリー君もね。ベリー君の回復魔法が無かったら無理だったよ」

 それととにかくユニコーンの角だ。死ななければ傷は全快する。それによりこちらは捨て身の戦法が取れるし、主要メンバーに脱落が無い。

 これはとんでもないアドバンテージ、アルテュールには思いも付かない出来事だろうな、へへっ、バーカ。

「シノブちゃん、こっち見て、ヴォルちゃんが!!」

「ヴォル!!? ヴォルがどうかしたの!!?」

 モニターの一つ。

 そこに移っていたのは金色のひつじの喉元に喰らい付くヴォルフラムの姿だった。

「ヴォルぅぅぅぅぅっ!! ヴォルぅぅぅぅぅっ!! フォーーーーー!!」

 さそり座に続き、おひつじ座も撃破である。

 そしておひつじ座がイラストに変わると同時に、狼の軍団も同時に全てが砂と崩れ落ちた。


 さらに天空の城は蟹船を王都上空から押し出すべく少しずつ前進をしていた。もう時間の問題、そう思っていた矢先。

『城主様、敵方の砲台が真下へ、王都に向いております』

「下に潜り込んで!! フレア!! ホーリー!! 真上に防御魔法を展開!!」

 モニターに向かって叫ぶ。

 クソッ!! それ俺が想定した中で一番嫌なヤツぅ!!

 天空の城が蟹船の下へと移動。

 それを見計らったかのように蟹船から砲撃が真下に向かって放たれる。こちらとしては真上から砲撃を喰らう形だ。

 防御魔法で受け止める。そこから逸れた砲撃が城に直撃。轟音と共に激しく揺れる。炎が渦を巻き立ち上がった。

「お、王都は!!?」

「全部は止められないよ!!」

 俺とリアーナの目の前のモニター、そこには王都の様子も映し出されていた。いくつかの砲撃が王都にも直撃、黒煙が上がっていた。

 避難は進んでいるだろうが、完全に終わってはいない。どれくらいの被害と犠牲が……俺はギリッと唇を噛む。

 アルテュールのクソ野郎。王都を狙えばこっちが盾になる事を見越してだろう。

 しかしこちらが真下だからこそ、砲撃射線上に王都が無いからこそ行える。

「カタリナ!! 砲撃、全力で撃てぇぇぇぇぇっ!!」

 さっきまでとは比べ物にならない程の強力な砲撃。城から放たれる光線は蟹船を貫き破壊する。こちらが下ならば蟹船が落ちたとしても受け止めれられる。

 もちろんこちらも無事では済まないが……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ