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リトライ!!─救国の小女神様、異世界でコーラを飲む─  作者: 山本桐生
神々の手編

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転機と悪手

 アルタイルは持っている骨片からスケルトンを生み出す。

 だったらゾンビを生み出す、おとめ座だって同じ事が可能なんじゃないのか? だとしたらおひつじ座だって。そう考えれば、この戦場にいなかった理由も説明が付く。

 こうやって背後に大群と共に突然現れて奇襲をする為だ。

 ちょうどそこに伝令で駆け回るベルベッティアが戻る。

「シノブちゃん、もうハリエットちゃんは所定の位置で待機してるよ」

「分かった。じゃあ、作戦通りに」

「にゃん」


 想定済みだっての。

 こっちはわざと最後尾に控えて、その後ろを薄くしてんだ。

 背後。爆発、爆発、爆発、爆発の連続。奇襲するならそこからだろ。何重にも張り巡る罠、ハリエットが入念に準備をしている。

 狼、そしてゾンビの大群が無残に弾け飛ぶ。

 そしてそこにミラン隊から早い段階で分かれたドレミドが攻め込むのだ。


 俺達に向かって来る女天使軍だが、元々は背後の奇襲に合わせて挟み撃ちにするつもりだったのだろう。しかしその奇襲の先手を制され、単独で攻めるような形に。

 これならばヴォルフラムとホーリー、コノハナサクヤヒメで充分に対処できる。

 アンとメイがいないとはいえ、単調過ぎる。別の思惑があるかも知れない。もちろん油断しないぜ。

「……」

 ただ現時点で不安が一つ。

 シャーリーの魔弾が止まっている。

 魔力切れならまだいい。まさか……という不安が首をもたげる。伝令が入るのはそんな時。

「シノブ様!! シャーリー様とキオ様が大怪我を負われました!!」

「シャーリー!!? キオも!!? 大丈夫なの!!?」

「は、はい。報告では命の危険はありません。ただお二人とも意識は無く、アルタイル様がお守りしながら後退しているようです」

「ホーリー、すぐアルタイルを迎えに行って。ここにはヴォルがいるから大丈夫」

「かしこまりました」

「それと報告ではシャーリー様とキオ様の二人で水瓶を持つ少年を倒したそうです」

「マジか!!?」

「マ、マジです」

「マジかぁ……そっかぁ……そっかぁ。二人でね……」

 主要部下である、みずかめ座の野郎を倒したというのか……でかした!!


★★★


 ドロリとした鮮血。頭から出血し、額から頬、そして顎から滴り落ちる。荒い息をするリコリスはその場に崩れ落ちた。

 同じく血に塗れたミツバ。しかし笑う。

「ざまぁみろだ」

 そのミツバの目の前。獅子獣人のネメアは前のめりに倒れる。そして体は砂のように崩れ去り、一枚のイラストだけがその場に残される。

 ちょうどそこにフレアと共に負傷者回収をするアリエリが現れた。

「ミツバ」

「ああ。俺より先にリコリスを頼む」

 その場で膝を着くミツバ。

「うん。でもね、ミツバもね、一緒に連れていくから」

「お、おい」

 ミツバとリコリスの体が空中に浮かび上がる。そうしてアリエリに回収されるのだった。

 そしてこれが戦況の転機となる。


 ネメアが排除された事により、ビスマルク隊が大軍のより中心へと入り込んだ。そして内側から外側へと向かって攻撃を始める。

 その動きは外側から攻めるリアーナ隊と挟み撃ちの形となる。

 そうなると挟まれたアストレアの女天使軍はロザリンドの壁を突破できない。結果としてアルテュール軍を包囲した形に。その中で相手をボコボコにしてやる。

 叩くだけ叩いてそろそろか。

 壁となっていたロザリンド隊が進路を開ける。同時にリアーナはアストレアから離れ、相手を自由にする。

 戦場を確認するプレアデス七姉妹の最後の一人がいるはず。だったら分かるだろ、このまま戦い続けてもアルテュール軍に勝ちは無い。こちらとしてもこれ以上の被害を抑えたい。

 だからこそアストレアはロザリンドが開けた進路を退路として敗走。それが俺の目的と分かっていても、目論見通りに行動するしかなかった。

 それに合わせて空中の女天使も退いていく。

 追撃を少ししてやろうと思ったが、アルテュール軍の後方にうお座の母娘が無傷で控えていた。退路を確保する意味で待機をしていたのだろう。なので追撃は諦め。


 そうしてアルテュール軍は撤退。

 さらに主要部下である、しし座ネメア、やぎ座パーン、みずがめ座、の三人を打破。

 こちらの被害はリコリス、ミツバ、キオ、シャーリーが大怪我を負った。それと途中からさそり座の相手を一人でしたタカニャ、全身が重度の火傷を負ったような状態で命の危険もあった。

 しかしそこはユニコーンの角で全回復よ。

 まぁ、控え目に言っても大勝利。


★★★


 それからのアルテュール軍は酷いもんよ。

 何処に攻撃を仕掛けようが連戦連敗。いくらアンとメイがいないからって、これは酷い。

 そしてその中でゾンビを操るおとめ座の女が倒される。倒したのは、闇に溶け込むような漆黒の鎧に身を包んだ、沈黙の黒騎士。

 以前の大陸変動の時にも活躍していた単独の騎士だ。たった一人でおとめ座とゾンビの大群を片付けたと聞く。こりゃ実力的にはビスマルクより上と考えるべきか。

 上には上、まだまだとんでもない存在がいやがるぜ。


 さらにうお座の母娘。それを討ったのは王国軍の獣王と戦乙女。

 そう、これ!! これはお姉ちゃんなんだよ!! さすがお姉ちゃん、ヘッポコ王国軍の中で一際輝く存在!!


 またも主要部下を失い、戦力を大幅に減らすアルテュールは焦ったのだろう。そこで最低最悪の悪手を打つ。


 みんなを集めて、受けた報告を説明する。

「えーと。アルテュールなんだけど、島国から徴兵したみたい」

「馬鹿な」

 ビスマルクも呆れる。

「ただこれで帝国も動くだろうな」

 ミランの言葉に俺も頷く。

「さてアホの子代表のシャーリーとリコリスとドレミドにも分かりやすく説明するね」

「ちょっと!! 今回あたし死にかけるくらい頑張ったんだけど!!」

「わたくしもですわ!!」

「みんな!! シノブが酷いぞ!!」

「はいはい、お静かに」

 王国はアルテュールと対立したが、全ての都市や地域が積極的に王国と協力したわけではない。

 アルテュールの演説では大陸を支配した後も、自治を認めるような発言をしていた。それに外敵から守るとも言い、それは戦いから守る事も意味している。

 だからこそ静観していた者達も多かったはず。

 ただ今回の島国での徴兵は、その全てを反故にするような行為だ。アンとメイならば絶対に認めない愚行。これによって多くの勢力が反アルテュールに傾くだろう。

 多くの小国を抱える帝国もこれを機に打倒アルテュールへと舵を切る。

「つまりね、アルテュールは大陸全土を敵に回した、って事」

「じゃあ、もう自滅じゃん。後は王国に任せれば良いんじゃないの?」

 そうシャーリーは言うのだが……

「そういうわけにはいかないんだよ。まず竜脈が抑えられている事。それともう一人、能力の分からない奴がいる」

「それは物語でベルちゃんが知っているんじゃないの?」

 そう言ってリアーナはベルベッティアに視線を向けるが、そのベルベッティアは首を横に振る。

「ううん、ベルちゃんにも分からないの。全部の物語を読んだわけじゃないから。でもアルテュールの主要部下が半数以下になった時、真の能力が発揮される者がいるよ」

「そういう事。その能力次第ではここからが本番の可能性だってあるんだから」

 前世でその漫画はまだ完結をしていなかった。

 だからかに座の能力発動の条件は知っていても、どんな能力なのかは具体的には俺も知らないのだ。

「それでこれからどうするつもり?」

 と、ロザリンド。

「大丈夫。もちろん島国の人達と争うつもりは無いよ。アルテュール軍はかなり戦力低下したでしょ。なのに島国が徴兵に従ったのなら、従うだけの理由があるはず。その理由を叩くよ。まぁ、こっちには潜入の専門家がいるからね」

「うん、ベルちゃんにお任せにゃん」

 そう言ってベルベッティアは笑うのだった。

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