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リトライ!!─救国の小女神様、異世界でコーラを飲む─  作者: 山本桐生
神々の手編

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その後の顛末ともっと前から

 その後の顛末。


 リアーナと合流した俺達。エルフの町へ。

 俺から仲間を引き離す為の、小規模な編成の相手。俺が合流してしまえば、ここで戦う意味は無い。敵は退却。


 そして同じ頃。

 劣勢だったロザリンド隊だったが、そこにミラン達が合流。アフロ、エロスのアルテュール軍は予想外の援軍に半壊、そして敗走。


 俺達はさらにロザリンド隊、ミラン達とも合流、そこから散らばった仲間を集めながら南下を続ける。どこもアルテュール軍の方から撤退を始めていた。

 そしてそれは一番最初の国境都市でも同じ。ネメア達は占領した都市を放棄して撤退するのである。そうして数十日ぶりでまたみんなでここに集まる事ができた。


 その国境都市では大騒ぎである。

 当然だ。結果として救国の小女神があらゆる場所のアルテュール軍を退けたのだから。そりゃもう英雄様のご帰還よ。


 一日しっかり休んで、と。

「キオ、周囲の索敵、しっかり見て。ベリーは探索魔法で周囲の確認。フレア、ホーリー、防御魔法を広げて。ヴォルとベルちゃんも集中して。姿を消す、見えない奴がいるはずだから」

 そうして隠れている奴を見付け、ヴォルフラムが瞬殺。イラストの描かれた紙切れになったそれはプレアデス七姉妹の一人だろう。

「これでよし。いやさぁ、姿を消してこっちの様子を監視してた奴がいるの分かっていたから。なかなか言いたい事も言えなくて困ったよ~」

「いやいや、だったら今みたいに最初からすれば良かったじゃん」

 と、シャーリーは言うのだが。

「いや、だってこっちが迷走するトコ見せたかったし。それも作戦だよ。敵を欺くにはまず味方から、ってね」

「ねぇ、シノブちゃん。それって最初から全てが作戦だったって事?」

「そうそう、向こうの目的は私なの予想できたから。だから相手の作戦に乗るふりして逆にハメてやったわ!!」

「シノブの目的は最初からアンとメイだったのね?」

 ロザリンドの言葉に俺は頷く。

「アンとメイ、二人がアルテュール軍の中心なんだよ。作戦の立案も決定的な仕事も、最後はあの二人」

 さらに説明を続ける。

「向こうは私を孤立させてるつもりだったんだろうけど、私にしてみればアンとメイだけを孤立させてるようなもんだったの。つまりお互いに目標だけを孤立させる事が目的なんだから、その点では五分五分だよね。ただ私には大きな優位がいくつもあった」

 一つ、アルテュールの能力、その仲間の数を知っていた事。だからこそギリギリのラインを見極めて、戦力の配分ができた。

 二つ、逆に俺の能力が隠されていた事。大黒炎の時にも力を使ったが、これをアバンセの力の借物と説明していたのも功を奏した。

「三つ、コノハナサクヤヒメがいた事」

「拙者でございます!! 今回の作戦は拙者が重要だったんですぞ!!」

 コノハナサクヤヒメがピョンピョンと飛び跳ねる。

「あーはいはい、偉い偉い」

 俺はコノハナサクヤヒメを撫でる。黙ってれば可愛いんだが。そして言葉を続ける。

「みんなも知ってるでしょ? 迷いの森の結界の話」

 基本的には大人の移動を制限し、子供だけが自由に移動できるようにされた結界。その結界は性交の有無で大人と子供を判別し、その条件をコノハナサクヤヒメなら変えられる。

 アンとメイが人として認識されるか疑問だったが、以前、タックルベリーが探索魔法を使った事がある。その時にアルテュール軍は反応をしていた。つまり相手は魔力を持つ。魔力を持つならば人として認識されるだろう。

「それを利用してね、アンとメイを閉じ込めたんだよ。処女は結界を通れるけど、非処女は結界を通れないように」

「アンとメイが非処女であると判断したのは、ベルベッティアの言う物語からか?」

 と、ミラン。

「そう。物語の中の主人公は仲間の女性全員と肉体関係を持つ内容だったし。アルテュールは男だし、能力から考えても肉体関係があって当然だよ」

「分かる」

 強く頷くタックルベリー。

「それに物語の中でも最後の重要な仕事はアンとメイがしていたから。最後の最後、絶対に顔を合わせると思ったし」

「つまりアルテュールは最初の国境都市をアストレアに襲撃させた時にはシノブの作戦に嵌っていたわけか」

「本当に凄いわ~シーちゃん、天才よ~」

 ビスマルクの言葉にヴイーヴルも感嘆の声を上げる。

「駄目だ……凄過ぎる……全く追い付ける気がしない……」

「ユリアン、シノブが異常過ぎるのですわ」

「……俺も色々な戦場に参加して色々な人間を見てきたが……」

 フォリオは大きく息を吐く。

「とんでもない傑物だよ、シノブは」

 タカニャは大きく笑う。

 なんてみんなは褒めてくれるが……

「もっと前から」

 ……

 …………

 ………………

「どういう事?」

 少しの間が合って、リアーナ。

「どうして私を孤立させようとしたのか……シャーリーさぁ、最後に相手と一対一になるとするでしょ。その相手がビスマルクさんだったらどうする?」

「いやいや、無理でしょ。ビスマルク強過ぎるし」

「だよね。つまり、アンとメイが私の前に姿を現したのは自分達が圧倒的に強いと思っていたから。だから弱い私の周りの戦力を削ぐ作戦を取った。だけどどうして私を弱いと思った?」

「……確かにそうね。救国の小女神とまで言われるシノブなのだから、能力を隠していたとはいえ、何か特別な力があると警戒するのは当然だわ」

 ロザリンドの言葉に俺は頷く。

「そこでリアーナ。最初にアルテュールと会った時の事を覚えてる? ほら、未開の土地から船で脱出する時。その時のホーリーの言葉」

「う、うん。確かホーリーさんは……」

 あの時、俺を守る為に前に進み出たホーリー。そしてこう言った。


『シノブ様という頭脳があれば戦力なんて後からどうにでもなりますから』


「アンとメイは頭が良いからね。この言葉の裏を勝手に勘繰ってくれると思ったよ。『シノブは頭脳だけ、周囲が戦力』って」

「はい。未知の敵が現れた場合、そう言うように以前から申し付けられておりました」

「もちろん、この作戦の為に用意したわけじゃないけど、結果としては大正解。アンとメイは私の前に無防備で立ってくれたんだから。つまりね……アルテュールは私と最初に会った時にはもう作戦にハマっていたって事だよ」

 ……

 …………

 ………………

 全員が言葉を失う。

「……あれ、どうしたの、みんな?」

「……シノブちゃん……どうしたの、じゃないよ……」

「リアーナの気持ちも分かるわ。私もシノブと付き合いは長いけども……ここまで驚かされたのは初めてよ……」

 リアーナもロザリンドも驚きの表情を浮かべていた。呆れたようにも見えるその表情。

「でも、ごめんね。作戦とはいえ、わけの分からない指示に従わせて。でもこれからは大丈夫だから」

 そう言って俺は笑うのだった。

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