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リトライ!!─救国の小女神様、異世界でコーラを飲む─  作者: 山本桐生
神々の手編

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アストレアとテュポーン

 別の場所。

 アストレアと剣を合わせるのはユリアン。

 空を飛びながら互いに剣を打ち合う。

「ユリアンでしたね。まだ歳若いのに素晴らしいです」

「っ!!」

 剣技ではアストレアの方が上、しかしユリアンも一人でよく抑えていた。片翼のアストレアが機動力で劣る為に同等の戦いができていたのだ。互いの鋭い剣閃が空中で交差する。


 ただ空中戦はハッキリ言って分が悪い。

 なぜならアストレアを含めて女天使の軍団は空を飛べる。それに比べてこちらは自身の翼で飛べるユリアンと、飛竜に乗るリコリス、タックルベリーのみ。

 地上ではキオが予備隊を率いて、小国の進行を妨害していた。


 その地上だが、キオにとっては簡単な戦いであった。

 それは地形の影響が非常に大きい。左右には切り立った岩壁、隣には流れる川。岩だらけの悪い足場は小国の進行を遅らせる。ここは峡谷の底なのである。

 一方向からだけの小国の攻撃。少しずつ後退しながら戦う事により被害も少なく抑えられる。

 戦いの先頭にキオは立つ。

 そこに放たれる弓矢。キオは焦る事もなく二本の剣で全て払い落とす。放たれる魔法は眼前で破裂するように掻き消された。それはカトブレパスの瞳の力。

 遠距離からの攻撃は無駄と小国兵がキオとの間合いを詰めれば、その剣技で返り討ちにされた。片方の剣で攻撃を受け、もう片方の剣で打ち据える。片刃の剣での峰打ち。つまり圧倒的強さなのである。

「み、みなさん、後ろからの攻撃はありません、はい。ま、前だけに気を付けてください」

 しかも周囲の状況を探りながら。

「キオ様、上からの攻撃は大丈夫でしょうか?」

「はい、問題ありません。見ていますので」

 キオの左目、カトブレパスの瞳がキラキラと輝く。


 それに対して空中戦。

 互角の戦いを繰り広げるユリアンとアストレア。こちらの勝敗はすぐに付かないだろう。問題はその周囲。

 曲芸のような動きを見せるのはリコリスだった。

「とりゃぁぁぁぁぁっ、ですわ!!」

 リコリスは飛竜の背中から飛ぶ。

 空中で女天使に何発も拳を叩き込む。そして蹴り飛ばす勢いを利用して次の相手へと飛び掛かる。ズバ抜けたバランス感覚が可能にした技である。

 そしてニーナに借りた飛竜も利口だ。向かう相手のいなくなったリコリスを空中で拾う。

 そんな好戦を続けるリコリスだが、タックルベリーの放つ魔法が当たらない。

 当然だ。片手で魔道書を開きつつ、片手で飛竜の手綱を握るからだ。集中力を必要とする魔法の精度が落ちる。

 空中戦に関してはキオと交代した方が良いのかも知れないが、下は峡谷、視界の狭い場所ではキオの索敵能力が必要と判断したのだ。

 そこをタックルベリーは魔法の使用回数でカバーするが非効率。

「ベリーしっかりしなさい!!」

「うるさい!! 気が散る!! 今とんでもないの使ってやるからな!!」

 だったら広範囲、一気に周囲の女天使を片付ける。

 しかし攻撃範囲の広い大魔法は使う魔力消費量も大きい。長期戦には向かない。いつまで持つのか……そしていつまで持たせれば良いのか……分からなくても戦い続けるしかないのである。


★★★

 

 また別の場所。

「うわっ、キモい!! キモ過ぎる!!」

 遠目に見える怪物テュポーンにシャーリーは声を上げる。蛇のような胴体の至る所から頭が生える。

「……パーンは見えるか?」

 男性と女性、二つの声が重なるアルタイル。

 シャーリーは眼鏡に魔力を通して、周囲を見回す。

「見えないけど、どうする? 一発、強いの撃つ? 撃つと倒れるけど」

「……撃たなくて良い。任されているのは牽制程度。威力ではなく数」

「ふと思ったんだけどさ、アルタイルの声なら一人ハーモニーで歌えるんじゃない? 歌手やる?」

「……」

「威力ではなく数ね。んじゃ、弱いの撃ち続ける。パーン見付けたら強いの撃っちゃって良いんでしょ」

「ああ」

 どこから取り出したのか、アルタイルはいくつもの白い骨片を取り出して放り投げた。一つ一つがスケルトンへと変わっていく。

「キモ!! アルタイルえもんのスケルトンもキモい!!」

 シャーリーは指先をクルクルと回しながら言う。

「……」

「さて。じゃあ、頭を一つ一つ潰していこうか」

 そして放たれる魔弾。一直線にテュポーンの頭を撃ち抜く。

「よし、当たり!!」

 この調子で簡単に攻撃を続ける事ができれば良いのだが、もちろんそんな簡単にはいかない。

 鳴り響くラッパの音。

 テュポーンの巨体がこちらへ向く。

「移動する」

「もう一発くらい撃てると思うけど」

「移動だ」

「へいへい」

 スケルトンを足止めとして向かわせ、アルタイルとシャーリーはその場から移動。

 向きを変えたテュポーンには街から弓矢や魔法が放たれる。

 魔弾、移動、魔弾、移動、魔弾、移動、繰り返す。

「ちょ、ちょっと何でこっちばっか向かってくんの!!? 街からも攻撃を受けてんじゃん!!?」

 二人は街から離れないように、その周囲を移動しながら攻撃を加えていた。街側からも攻撃を受けているはずだが、そちらは無視。

 巨体が火を噴きながら二人に迫る。

「……」

「ヤバイヤバイ、あたしの足じゃヤバイって!!」

 シャーリーも常人より身体能力は高い。それでも相手は逃げ切れる速さじゃない。

「火がくるって、火が!!」

 テュポーンのいくつかの頭、その喉元が大きく膨れる。そして炎が放たれた。

 アルタイルはシャーリーを抱え上げる。思わず目を閉じてしまうシャーリー。

 次の瞬間。

「撃て」

「えっ、はっ、な、何?」

 シャーリーが目を開けると、そこにはテュポーンの後姿。

 アルタイルの言葉で反射的に魔弾を放つ。

「瞬間移動? これもアルタイルの魔法? 古代魔法ってやつ?」

「……これは印を付けた二点を繋ぐものだが一度しか使え」

「うわっ、来た、また来た!! 喋ってる場合じゃない!!」」

「……」

 そうして攻撃を続けているのだった。

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