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リトライ!!─救国の小女神様、異世界でコーラを飲む─  作者: 山本桐生
神々の手編

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戦闘状況とビスマルク隊

 いくつ目かの国境都市。

 深夜になっても俺は一人、地図と睨めっこを続ける。

 周囲に毒を撒き散らす女の情報がある。これはさそり座に相当する女、確か名前はアンタレス。距離的に考えて、コイツは俺達を追っては来られないだろ。


 おうし座に相当する女はプレアデス七姉妹を使い、情報伝達、索敵を主としていて戦闘能力は皆無。漫画の中では常に主人公の傍に立ち、戦いに出る事は無いし。

 かに座もだ。これは主人公の最終兵器。現時点では動かないだろうな。

 それでこっちを攻撃しているのはおとめ座のペルポルセー……セポルモセー、ん、ポルポルペー?……名前は覚えていないが、確か死者を操るキャラだ。スケルトンを操るアルタイルと能力が被っているが、向こうは腐乱死体を操るという。やっぱりコイツも距離が遠い。すぐには動けないはず。


 つまり現状で動向が分からないのはふたご座であるアンとメイ。それとおひつじ座、みずがめ座とうお座。だが敵の手札を知っている、これはとんでもない優位だぜ。


「シノブ様。お茶をお持ちしました」

「あ、ホーリー、ありがとう。フレアも」

 ニコニコとしたフレアはお皿にお菓子を乗せていた。

「頭を使うと甘い物が助かるぅ~」

「少し休まれたらいかがですか?」

「この状況で? 無理でしょ」

 俺は苦笑いを浮かべる。

「……みんなの様子は?」

「それは……」

「隠さなくて良いよ。だいたい分かってるから」

「はい……少し戸惑っている様子かと……」

 その気持ちは分かる。結局は後手後手だからな。

「ホーリーは?」

「私はシノブ様のメイドですから」

「フレアは?」

 フレアは微笑みを浮かべたまま。

「ありがとう。ところでさ、二人に聞きたい事があるんだけど。絶対に嘘を付かないで答えて」

「はい、もちろんです」

「二人ってさ……本当に処女?」

「……」

「……」

 そうして夜は更けていくのである。


★★★


 比較的安全に国境都市から国境都市へと移動していたわけだが……

 大量の、無限とも思える数量の狼が背後に迫っていた。おひつじ座、金色の羊が操る狼の群れ。

 くそっ、思った以上に足が速い!! このままだと群れに飲み込まれる!!

「ドレミド、アリエリ!! お願い!!」

「任せてくれ!!」

「私達もね、危なくなったら逃げて大丈夫なの?」

「そう、あくまでも足止め、無理はしないで」

「うん、分かったよ」

 ドレミドとアリエリが第二本隊を率いて足止めへと向かう。


★★★


 そして目の前の国境都市。ここが最後、ここを中継して帝都へと向かう。ちなみにもう少しだけ上に行くと大森林。エルフの町も近い。

 だからだろう。地理を利用される。

「エルフの町に……」

 王国の防衛網を潜り抜けたのだろう、少数のアルテュール軍がエルフの町へと向かっていた。報告では水瓶を持つ金髪の美少年。

 エルフの町にもお父さんを含めて警備隊がいる。相手が少数ならば、ある程度の時間は防ぐ事ができるだろう。

 ただ、どうしてこのタイミングなんだ? どうして少数である相手の動向を捉えられたんだ? 答えは簡単。これは相手からもたらされた情報だからだ。つまり俺に対してのプレッシャー。

「……リアーナ、タカさん、お願い」

「シノブちゃん……」

「本当に良いのかい?」

 リアーナとタカニャも状況は分かっている。ここでエルフの町に戦力を割く。それは必要じゃない。まさに愚考。

「……」

 愚考と分かっていてもロザリンドは反対しなかった。島国を占領されたロザリンドは故郷が攻め込まれる苦しさを知っているから。

 フォリオは確認をする。

「シノブ。状況は分かっているな? その上でリアーナ隊をエルフの町に送るんだな?」

 俺は黙って頷くのだった。


★★★


 すでに残っている戦力はフレアとホーリー、そしてロザリンド隊のみ。ああ、それとコノハナサクヤヒメ。

 ただ最後の国境都市は目の前だ。ここから帝国領に入ってしまえば、帝都も近い、アルテュール軍も目立った動きはできない。

 あと少しだ。


 そして同時期。これは各々の戦闘状況。


 地図では一番下に位置する国境都市周辺、その山林の中。

「もうシーちゃんは帝都に着いたのかしら~」

「そうだな、そろそろだとは思うが」

 ビスマルクの予想ではかなり帝都に近付いているはず。

「でもあの天使ちゃんを逃がしちゃったからね~邪魔してないと良いけど~」

「私達だけでネメアとアストレア、二人同時に相手はできない。シノブなら対策を取れるはずだ」

「そうね~シーちゃんだしねぇ~」

 なんて会話をしているビスマルクとヴイーヴルだが、二人の周囲で女天使が殴り蹴り飛ばされ、斬り倒されて砂となる。そう、戦いながらなのである。

 そこに伝令が入る。

「ビスマルク様、前衛の負傷者が半数を越えました。もう少し戦えそうですがどうしますか?」

「無理はしなくて良い。すぐに後衛と入れ替えろ。ただ後衛にはヴイーヴルを入れるから数は半数で構わない。残り半数はそのまま待機。そういうわけだ、ヴイーヴル、頼むぞ」

「はいは~い」

 ネメアの足止めを直接する為、ビスマルク達は国境都市から出撃するしかなかった。そして防御の手薄になった国境都市は相手の手に落ちる。

 その中でビスマルク達が取った作戦はゲリラ戦。山中に潜んで散発的に国境都市を狙う。国境都市からネメアが姿を見せればこうして攻撃を加えるのだ。


「みんないいかしら~ネメアの相手はミツバちゃんがしてくれているから~私達は周りの天使だけを相手にすれば良いのよ~」

「し、しかしヴイーヴル様、相手の数がこれでは……」

「だ、駄目です、退きます!! これ以上は!!」

 負傷者が増えていく。それでも少ない数でビスマルクがここを任せたのはヴイーヴルの力を知っているから。

「大丈夫よ~私が一人で飛び込むわ~みんなは私が崩した所を徹底的に攻めれば良いから~」

 まるで何事も無い日常会話のような口調。

 ヴイーヴルはそのまま一人、敵陣の中に飛び込んだ。

 木々の隙間を埋めるように次々と女天使は現れる。それらをヴイーヴルは木々ごと薙ぎ倒した。大きな岩が転がっていようがお構いなし、砕き飛ばす。

「死にたい奴から掛かって来な!! なんてね~」

 圧倒的な大剣クレイモアの破壊力。山林の中の障害物など無視したその攻撃、女天使達の密集するような隊形が崩れる。

 そしてそこを狙ってビスマルク隊と国境都市兵が集中攻撃を浴びせるのだった。


 少しだけ離れた場所。

「うおらぁぁぁぁぁっ!!」

 全身全霊、持てる力を全て込めたミツバの投擲。巨大な戦斧がネメアの胴体を狙う。風を切る轟音がその威力の凄まじさを想像させる。

 しかしその渾身の一撃をネメアは……

「はぁぁぁぁぁっ!!」

 全身の筋肉が膨れ上がるようなネメア。鋭い爪の生えた手で戦斧を受け止める。金属が混ざるような打撃音、ネメアはその足元の地面を抉りながら、後方へと押し込まれる。

 それでも止めたのだ。

「ちっ」

 ミツバは舌打ち。戦斧に繋がった太い鎖を引くが、全く動かない。

「知っているぞ。ドワーフのミツバ。単純な力ならばビスマルクを凌ぐ程とも言われる。そして画期的な数々の作品を手掛ける名工とも。その力、アルテュール様の為に使ってみないか?」

「構わないぜ。棺桶でも作ってブチ込んでやるよ」

「なぜそこまでシノブに肩入れする? お前達の戦いは劣勢、この状況を招いたのはシノブだ。つまりアルテュール様の方が優秀だという証。いずれ大陸はアルテュール様のものとなる。新しい世界で名工として名を成してはどうだ?」

「くだらねぇな。優劣だけで人を見てねぇよ」

「……名工としての技術、実にもったいない。しかし愚かな主人には愚かな部下という事か」

「……愚かなのはてめぇの主人かも知れねぇぜ?」

 二人の間でギリギリと鎖が軋むのであった。

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