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リトライ!!─救国の小女神様、異世界でコーラを飲む─  作者: 山本桐生
神々の手編

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封じ込めと誤算

 山林の中、片翼でありながら滑るように木々の間を抜けて行くアストレア。それを追うのはリアーナ。

 アストレアは漫画の中では剣と槍、武器の達人でもある。が、それにリアーナも引けを取らない。幾度となく互いの武器で打ち合う。

 リアーナの武器と比較して間合いの短い剣を持つアストレア。自分の間合いに持ち込みたいのだろうが、リアーナはそれを許さない。間合いの長いハルバードで突き離した。

 一度距離を取るアストレア。その動きを狙っていたかのようにリアーナは突進した。ハルバードがアストレアの首を狙う。

 そのリアーナが孤立しないように、タカニャも二人を追う。そして追いながら笑い呟く。

「全くとんでもないね。この大陸であの子に勝てるのが何人いるんだい?」

 すでにリアーナはそういうレベルにいた。

 リアーナの一撃をアストレアは受け止める。しかしその攻撃と同時、すでに片手で魔道書を開き、魔法の詠唱を始めている。

 飛び退くアストレア。地面から岩の槍が狙うが、それはアストレアに打ち砕かれた。飛び散る岩の槍の破片。その破片を目くらましとしてリアーナが突撃をする。

 リアーナ、とんでもない。

 敵が近付こうとすれば間合いの長いハルバードで突き離す。敵が距離を取ろうとすれば一気に突進して間合いを詰める。そして遠かろうが近かろうが魔法を放つ。攻撃の手が一切緩まない。

 このまま行けばアストレアを倒せるのではないかと思われたが……

 対アストレアに集中するリアーナに代わり、周囲の状況を観察していたタカニャ。

「リアーナ!! 戻りな!!」

 すぐにアストレアから離れ戻るリアーナ。

「どうかしましたか?」

「ああ、おかしい。国境都市から離れ過ぎだ」

 どのタイミングで小国と挟み撃ちにするつもりなのかは分からない。しかしここまで国境都市と離れてしまうと、すぐさま行動には起こせない。

「別の目的があるって事でしょうか?」

「分からない。ただこれ以上の深追いはマズイかも知れないね。どうするつもりだい?」

「……追います。ここの指揮官があの人なら自由にさせる事はできません。タカさんもお願いします。ただ状況をシノブちゃんに伝えて、指示があるならそれに従います」

「分かったよ」

 そうして再びリアーナ隊はアストレアを追うのだった。


★★★


「どうする?」

 俺の元にユリアンからの報告が入る。アストレアを追うリアーナ。

「そのまま追ってもらって。ただ無理してまで倒す必要は無いから。できるだけアストレアに付いて、向かう先を確認して」

 すぐにユリアンは飛び出す。

「シノブ。アストレアの動きは確かにおかしいわ。罠に誘導されている恐れがある。私も行った方が良いんじゃないかしら?」

 待機を続けるロザリンド。

「リアーナなら大丈夫だよ。罠の気配があれば絶対に気付くから」

「……分かったわ」

「キオ、周囲の索敵、私達の後方も忘れないで」

「は、はい」


★★★


 国境付近で待機中のミラン隊。

 そこに偵察で出ていたベルベッティアが戻る。

「動く様子は無いみたいだよ」

 それは小国の動向。国境付近で待機はしているが動く様子は無い。

 そこへリアーナ隊にシノブの命令を伝えたユリアンが合流する。

「アストレアはリアーナが追ってるけど、国境都市から離れてる。むしろこっちに向かってるような感じだけど」

 どういう事だ……ミランは心の中で呟く。

 アストレアの行動が読めない。

 ただ、どうなるにしろ、目の前に小国の兵がいる以上はここから動けない。


 そして少しの時間の後、ユリアンと入れ替わるように飛び込んで来たのはリコリスだった。

「今、シノブ達が後ろから攻撃を受けていますわ!!」

「シノブが待機している後方から、って事か?」

「ええ。ただキオが事前に気付いた事で、ロザリンド隊が余裕を持って対応しています。シノブは、パパ達が国境都市に入る寸前なので、そちらへ合流する予定ですわ」

 どうしてシノブの後方からなのか。答えは明白、最初から狙いはシノブだったのだ。

 シノブが狙いだからこそ小国は動かない……と分かりつつも、その小国が派兵をしている為、万が一を考えここを離れる事もできない。

 リアーナ隊も引き離された。

 周到に用意された作戦。狙いがシノブならロザリンド隊だけで防ぐ事はできないだろう。つまりシノブは国境都市へ向かうしか選択肢が無いのだ。


★★★


 山林、上空から戦況を確認するフォリオ。

 生い茂る木々に遮られ、ハッキリとした数は分からない。しかし相当数の女天使が後方から現れたのは確かだった。シノブの言う主要メンバーは見当たらないが、ロザリンド隊だけで打ち破るのは難しい。

 ただアルタイルのスケルトン軍団の助けもあり、被害は極小で抑えられるだろう。

「シノブが国境都市に着くまでの間だけよ。落ち着いて対処すれば何も問題無いわ。ただお互いの距離は保って孤立しないようにして」

 ロザリンドは周囲を確認しながら刀を振るう。女天使の攻撃を受け止め、返す刀で斬り倒す。

 木々が遮蔽物となり女天使の攻撃は散発的、対応するのは簡単。

 そうしてロザリンド隊も少しずつ後退するのだった。


★★★


 やがて。

 国境都市内、中心となる城砦。

 アストレア軍を撃退した救国の小女神として歓迎と共に迎えられた。この話はすぐに大陸中へ伝えられるだろう。あのシノブがまた王国の窮地を救ったと。


 隊員を監視の為に残し、ミランやドレミドにも戻ってもらう。

 そしてリアーナも。


 国境都市の人々は喜んでいるが、この一室の空気は重い。

 みんなが集まったその一室。

「随分と高く評価されているようだな」

 そう言うのはビスマルク。

「光栄なんだか、迷惑なんだか。でもごめん。私の誤算」

「ちょっとどういう事? あたしとドレミドにも分かるよう説明して」

「だからシャーリー、私を巻き込むな」

「その前に。リアーナ。アストレアは?」

「うん。国境を越えて帝国領に入ったみたい。だからそれ以上は追えなかったよ」

 帝国領に争いを持ち込むような行為は現状できない。

「……全ては私をこの国境都市に封じ込める為の作戦だよ。今回の相手が取った行動はね」

 みんなに説明をする。まぁ、ビスマルクとかミランは分かってるだろうけど。

 まず事前の戦況は俺をここに誘い出す為のもの。そして相手の目論見通り、俺はこの国境都市に向かい、結果としてここにいるわけだ。

 今、国境付近ではアストレアと小国。そして国境都市周囲、アルテュール軍が包囲を始めていた。その指揮を執るのは自称アルテュール軍の最高戦力、獅子獣人のネメアだった。キオの索敵がしっかりと捉えている。

 つまり王国と帝国の分断、国境都市の占領、そんな事よりも俺の排除を最優先に考えた作戦だ……俺を封じ込める為、本当にここまで大掛かりな仕掛けを用意するなんてな。

「つまり姐さんが頭脳戦で負けたって事っすか?」

「うぐっ、ま、まぁ、ミツバさんの言う通りだけど……ごめん……」

 俺は大きく溜息を吐くのだった。

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