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リトライ!!─救国の小女神様、異世界でコーラを飲む─  作者: 山本桐生
神々の手編

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軟禁と十二星座

 はぁ!!? バッッッッッカじゃねぇの!!

「はぁ!!? バッッッッッカじゃねぇの!!」

 心の中で叫び、声に出しても叫ぶ。

 水都防衛成功。その様子のほとんどが大陸中に映し出されていた。つまり王国からの命令を無視した俺の姿も。

 その命令違反をした俺達を拘束連行するとか、後から来た王国兵が言いやがる!!

 いや、もちろんヤミは激怒したね。そのお陰で俺達は水都で軟禁中。今は王国からの正式な沙汰を待っているわけだ。大陸が攻められているこんな時に……バカとしか言えないだろ。

「罰はあるかも知れないと思っていたけれど、まさかこの非常時にとはね。想像ができなかったわ」

 ロザリンドはため息。

「法があり、王国の要請を受けている以上、それを破れば罰を受けるのは当然だ。ただ水都防衛を考慮すれば是非を論ずるのは後回しにされるのが通例だと思うのだがな」

 フォリオの言う通りだろ。水都を占領されたら大変な事になるのは王国側も分かっているはずだし。

「どうする? 今ならまだ逃げられるぞ」

「まぁ、縛り首にされる事は無いさ。このまま待とうじゃないか」

 ヴォルフラムの言葉にタカニャは笑う。

「で、でも、わ、私達、こ、これからどうなるんでしょうか?」

「大丈夫だよ、キオちゃん。命令違反した事より水都を守った事の方が重要なんだから、すぐに解放されるよ」

 リアーナはキオを安心させるように優しく笑みを浮かべる。


 そして確かにすぐ解放された。

 しかしそれはこんな形ではない。


★★★


 シノブに全責任があるという事で、俺はこのまま水都で軟禁。ただ長い期間ではない、ごく短期間の拘束である。一定期間後に釈放され、その後のペナルティは一切無し。

 そしてリアーナ達には何のお咎めも無し。ただそのまま放置するには惜しい戦力である事は、あの映像が証明していた。そこで俺達の軍団は解体、全員が各方面に再配置されるらしい。

 全員が険しい表情を浮かべる。

 リアーナ、ロザリンド、キオは王立学校の生徒でもある。ここで逆らえば、今後どんな影響があるか……

「……まぁ……絶対に私は戻るから。それまでは無理しないでよ」

 そしてヴォルフラムだけ俺の元に留まる。ヴォルフラム自身が牙を剥いたし、王国とも冒険者ギルドとも直接に関係無い事から許された。


 それから数日。

 前は誰が住んでいたんだろうな……俺が軟禁される屋敷はそれなりの広さで書斎まで用意されていた。この屋敷から出られないとはいえ、食事もちゃんと差し入れされるし、快適ではある。

 ただ外の情報があまり入って来ないのが辛い。一体どうなっているのやら……


 さらに数日。

「シノブ。ベルベッティアとヒメだ」

 ヴォルフラムが鼻と耳をピクピク動かす。

「ここ来てんの?」

 俺が部屋のドアを開けると同時だった。

「ジノブゥ殿ぉぉぉぉぉうっ!!」

 無色透明のスライム、コノハナサクヤヒメが胸に飛び込んで来る。ボタボタと水滴が落ちた。何これ、泣いてんの? まさか失禁?

「元気そうだね。安心したよ」

「ベルちゃん!!」

 ベルベッティアもコノハナサクヤヒメも人数として認識されていない。王国に従う事無く、この屋敷に忍び込んだのだ。


「で、みんなは!!? みんなはどうなったの!!?」

「バラバラ、ほとんどが別々の場所に配置されちゃったの。リアーナちゃんとロザリンドちゃんが大変だよ。映像で優秀さを見せちゃったから、最前線で戦ってる。でもその中でも特に厳しいのがキオちゃん、フレアちゃん、ホーリーちゃん」

「どういう事?」

「まずキオちゃんね、その索敵能力の凄さを期待されて、最激戦区に送られる事が決まったの。フレアちゃんとホーリーちゃんは王国にも冒険者ギルドへも登録してないから自由を与えられたんだけど『シノブ様ならキオ様を守るように言われるはずです』って。キオちゃんと一緒に行動しているんだよ」

「一瞬、国王をブッ殺してやろうかと思ったけど、フレアとホーリーが一緒なら……でもなんかちょっと感動して泣きそう」

「それとミランちゃんとハリエットちゃん。二人は身分が分かって、帝国へと帰還を要請されたの。リコリスちゃん、ユリアンちゃん、シャーリーちゃん、アリエリちゃんの四人は年齢のせいで戦いには参加できない、って。みんなこの近くで待機してるよ」

「戦況は?」

「相手の質に、こっちは数で対抗してる状況かな。現状では互角」

「現状では……でもそれって……」

「うん、シノブちゃんの考える通り。ベルちゃんも同じ」

 現状が互角ならば……分が悪い。相手の質は下がらない、けどこっちの数は減っていく。

「帝国は?」

「静観。まだ帝国側に被害は無いし、王国側から援助の連絡は行ってないみたい」

 本来なら協力するべきだが、一方的に助けを求める形では無理か。

 ベルベッティアは言葉を続ける。

「それと今回のシノブちゃん達の編成はニーナちゃんの意向が大きく影響してたみたいだよ。ニーナちゃんがシノブちゃんを尊重して今回の編成をしたけど、気に入らない人間がいるらしいの……そんな噂を王国兵がしてたの聞いたけど」

「権力闘争も絡んでいるのでしょうな。この非常時に、全く愚か」

 と、コノハナサクヤヒメ。スライムに愚かとか罵られる王国の人間って……

「まぁ、そこで私が命令を無視したから都合良く……って事なのかな。ニーナさんに大きな迷惑を掛けてなければ良いけど」

「それでベルちゃん達はどうすれば良い?」

「相手の情報をできるだけ集めて欲しい。数が圧倒的だったとしても、相手を知らなければ絶対に勝てない。今回のはそういう相手だよ。それと竜脈についても調べて」

「竜脈……リアーナちゃん達から別れる前に聞いたよ」

「竜脈を押さえる事はアルテュールにとっても重要な事だから、これがどうにかなれば勝機も見えてくると思うんだよね。サンドンが詳しいから、ちょっとサンドンと話してみて」

「にゃん、ベルちゃんにお任せ!!」

「うん、お願いね」

 俺の肩にベルベッティアが飛び乗った。そして俺にだけ聞こえるように耳元で囁く。

「それとシノブちゃん。獅子獣人がネメア。半人半馬がケイローン。それと女天使のアストレア。アルテュールからイオという名前も出たけど、ベルちゃんはその名前に聞き覚えがあるの」

「マジ?」

 ベルベッティア、その存在は時代も次元も関係無い、ありとあらゆる世界で永遠に生きる者。その長い時の中で得た知識なのだろう。

「マジマジ。シノブちゃんが前にいた世界。ギリシャ神話だよ」

「……」

「……」

「……十二星座!!?」

「にゃん」

 そうだ……オタク心をくすぐる黄道十二星座、その神話について色々と調べた事がある。今まですっかり忘れていたぜ。


 しし座の神話でヘラクレスに退治された獅子が住む森。それがネメアだ。ネメアの森。

 いて座の神話では、そのモデルになったのがケンタウロスの賢者ケイローン。

 てんびん座のモデルである天秤は女神アストレアが持つ物。

 おうし座のモデルは牡牛に変えられた美しい女性、それがイオだ。


 十二星座をモチーフにした、俺が知っている漫画のお話。

 おうし座にはプレアデス星団と呼ばれる散開星団がある。和名では昴。

 そのプレアデス星団の中の特に明るい七つの星は、ギリシャ神話ではプレアデス七姉妹と呼ばれ、漫画の中で描かれる七姉妹はイオの部下であり監視や連絡役を……

 ……

 …………

 ………………俺、その漫画知ってるじゃん。アルテュールが具現化していると思われる漫画。俺はその漫画を読んだ事がある!!

 アンとメイ、あれはふたご座をモチーフにしたキャラだ。俺にとってはもう二十年近く前の漫画だが、一度思い出すと次々に当時の記憶が甦る。

 引き篭もりの主人公が異世界に飛ばされて有能な仲間と一緒に無双する転生作品。連載途中だったが敵の能力とか覚えてるぅぅぅぅぅっ!!

 ちなみに主人公はほとんどの女性キャラと肉体関係を持つハーレム物でもある。


 これ、勝機が上がったと思うんだけど!!

 その詳細をベルベッティアに伝えるのであった。

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