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リトライ!!─救国の小女神様、異世界でコーラを飲む─  作者: 山本桐生
神々の手編

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水都襲撃と獅子獣人

 水都襲撃。


 ふおおおおおっ!!

 空に巨大なスクリーンが!! 本当に水都が襲われてやがる!!

 しかも今度は俺!! 俺が映ってるぅ~!!

 アルテュールのあの様子を見るに、多分大陸中に映像が映されているのだろう。

 ポーズ決めとこ。キラッ

「ほら、キオも。大陸中に見られてるみたいだから格好付けときな」

「わ、わわ、私が、あ、ああ、あんなに大きく……はず、はず、恥ずかしいです……」


 水都に向かう俺。まぁ、実際に走っているのはヴォルフラムなんだけどね。そしてキオも一緒に乗っていた。

 隣に二匹の小型飛竜が並ぶ。ニーナから借りている飛竜の背に乗るのはリアーナとロザリンド。そしてその俺達の後に続くのがフォリオとタカニャを含めた遊撃隊200人。

「シノブちゃん、凄く余裕だね?」

 リアーナは言う。

「もちろん油断するつもりは無いよ。けどわざわざ動向を教えてくれてるんだからやり易い。ロザリンド、水都の周りをお願い」

「ええ。任せて」

 ロザリンドは飛竜の速度を上げる。

「リアーナ。私達はヤミのトコに行くよ」

「了解」

 キオの索敵で周囲に敵が居ない事は確認済み。それに戦いの映像をご丁寧にも流していた為、相手の動きがよく分かる。こちらとしては戦い易い。

 アルテュール、お前の好きにはやらせんぞ!!


 まずはロザリンド。

「……やっぱり許せないわね」

 飛竜から飛び降りる。身体強化の魔法を使うロザリンドは飛竜よりも数段速い。そして腰の刀を抜いて、そのまま女天使の軍団の中へと飛び込んだ。

 瞬時に何体かを斬り伏せる。

 四方八方から天使は飛び掛かるが、それら攻撃の全ては受け止められ、次の瞬間にその体は分断された。圧倒的なロザリンドの刀捌き。

 そこに遅れてフォリオが上空から急襲。その鋭い爪のある足で天使を貫き投げ飛ばした。

「これが今回の相手か。技量的に恐れる相手ではないが、それでも一人で突っ込むな。分かったか?」

「そうね……ごめんなさい。少しだけ冷静さを欠いているようだわ」

「……俺は負傷者の回収に当たる。敵の相手は任せる。良いな?」

「ええ」

 ロザリンドの攻撃力はまさに圧巻、遊撃隊も加わり、敵の殲滅も時間の問題である。


★★★


 水都内に侵入した敵の相手はタカニャと遊撃隊に任せる。そして獅子獣人の相手はリアーナとキオが受け持つ。

 神殿の前で相手は待っていた。

 まぁ、空のスクリーンには俺達の姿も映し出されていたし、背後から攻撃するのは無理ってもんよ。

「お前がシノブか?」

「ここまで来て隠すのも無理だと思うんで。私がシノブ。あなたは?」

「ネメア。アルテュール様の元では最高の戦力を持つと自負している者だ」

「最高の戦力ね。その力はアルテュールよりも上なの?」

「馬鹿を言う。俺が束になったとしてもアルテュール様には敵わない」

「まぁでも、両方とも雑魚だろうから比べても意味無いか。ざーこ、ざーこ」

「挑発して隙ができる相手だと?」

「一応ね」

「ただ不快ではある」

 獅子獣人……ネメアの獣部分、その上半身の毛が逆立っていく。俺一人だったら一秒後にミンチだぜ。

 ただしかし。

「シノブちゃんは下がってて」

「私達が相手をします、はい」

 リアーナとキオが俺の前に立つ。

 いつもの優しいリアーナの温和な雰囲気、何処かオドオドしたようなキオの頼りなさ、それらは一切消えていた。リアーナの右手にはハルバード、左手には魔導書。キオは片刃の直剣二本を構える。その表情は戦う者の顔。

「シノブ。下がるぞ」

 ヴォルフラムは一歩後ろへと下がるのだった。


 キオの左目、瞳の中で虹色の渦が回る。次の瞬間だ。ドンッと空気が震える爆発音。ネメアの体が炎に包まれた。それはカトブレパスの瞳の力なのだろう。

 しかしネメアは炎に包まれたまま突進。突進しつつ自らの体の炎を振り払う。

 それに合わせるようにリアーナも突進していた。鋭くハルバードを突き出す。

 ネメアの獣の体毛、それ自体が鋼のような強度なのだろうか、ハルバードの刃の部分を素手でそのまま弾き飛ばしてしまう。

 リアーナは弾かれたハルバードを回転させ、柄の部分でネメアの頭部を殴り付けた。そしてそのまま今度は後ろに飛び退くのだが……

 ネメアはそれでも突進を止めない。そのままリアーナとの間を詰める。

 しかしその突進を止めたのはキオだった。

「やあぁぁぁぁぁっ!!」

 横から飛び込む。その剣が狙うのはネメアの両目。

 さすがに目まで鋼というわけではないのだろう。ネメアは足を一瞬止め、間一髪でその攻撃を避ける。だがその一瞬で充分だった。

 リアーナのハルバードが横薙ぎにされ、ネメアの体を捉える。

「ふっ!!」

 さらにそのまま腕力で振り抜いた。

 ネメアの巨体がボールの様に飛んで行く。そのネメアの体が爆発、キオだ。そのまま石畳に叩き付けれたネメアに今度はリアーナの魔法が打ち込まれる。


「二人とも凄いじゃん。これ楽勝?」

「そうとも言えない」

 ヴォルフラムの言葉通りだった。何事も無いようにネメアは立ち上がる。


「かなりの強さではあるが、その程度の攻撃で俺は倒せない。諦めたらどうだ?」

「私達は貴方が倒れるまで攻撃を続けるだけ。だよね、キオちゃん」

「はい。思い通りにはさせません。絶対に」

 そして戦いが再開される。

 傍目で見ても、その攻防は常人離れしているのが分かった。攻撃が交差する度に俺は息を飲む。見ているだけで寿命が縮むような緊張感。

 それが幾度となく繰り返されるのだ。

 やがて。


 長く、艶やかな黒い髪をなびかせ彼女は俺の横を駆け抜けた。

「みんな離れて」

 ロザリンドだ。

「ヴォルちゃんももっと」

 その場から飛び退くリアーナとキオ。リアーナの言葉で俺達もさらに後方へ。

 一閃。

 ロザリンドの刀がネメアの体を捉える。

 次の瞬間、それは刃の嵐だ。

 刀に宿された魔法。風の刃が嵐となり周囲を斬り刻んでいく。建物だろうが石畳だろうが関係ない。物質の抵抗さえ感じさせない鋭利な斬撃が広範囲に飛ばされる。


「凄ぉ。何あれ、あの威力。ちょっと凄過ぎない?」

 ロザリンドを中心にして瓦礫の山が。斬られた建物や石畳はまるで積木みたい。その瓦礫の山の中、立ち尽くすネメア。

 薄汚れた野良猫みたいになってやがるぜ。獅子の毛もバサバサ、体中至る所に傷口がある……のだが、そこから血液が流れ出ていない。ただパックリと割れているだけ。

「周りも落ち着きつつあるわ。ヤミはもちろん、この水都を貴方だけで制圧をするのは不可能。それでもまだ続けるつもり?」

 ロザリンドの言葉にネメアは周囲を見回した。

 俺も周囲に視線を走らせる。そして気付く。空にネメアとの戦いが映し出されていない。そして続けて映し出されていた他の映像も不意に途切れた。

 さらにロザリンドは言葉を続ける。

「まだ抵抗をするつもりなら、私達は最後まで付き合うわ」

 リアーナも、キオも再度前へと進み出た。

 最高戦力と自負するネメアである。もちろんこれで終わる程に簡単では無いだろう。しかしリアーナ、ロザリンド、キオ、さらにもう少し経てばタカニャとフォリオもやって来る。これらを倒して一人で水都を制圧する事は不可能。

「……確かにこれ以上の戦いは無駄なようだな。ただ一つ聞かせろ。なぜ水都が狙われると?」

「普段なら無視して教えてあげないけど、今回は私の力をアルテュールに分からせる為にもね、教えてあげるよ。それはこの水都の位置」

「水都の位置……ここは戦いが始まった場所とは王都を挟んで反対側だ。ここの攻撃が可能なら、王都も狙えるだろう?」

「何言ってんの? 最初から王都を狙っているくせに」

「……」

「まず戦線の広がりが陽動なのは分かっていたよ。それと普通では考えられないけど、内陸、例えば王都を直接攻撃する事も可能だと思った。貴方達の力なら」

「つまりここも陽動だと?」

「そうだよ。王都を攻める為には、ある程度の戦力を削ぐ必要がある。その為に王都の近くの都市を攻める。そうすれば王都としては見逃す事ができないから兵を割く。そうして王都の兵を減らして攻めるつもりだった。だから実は王都の周りにはアルテュールの仲間が分散して隠れている。でしょ?」

「近ければ水都である必要は無いな」

「だから私の他の仲間は近くの重要そうな所には散ってるけど」

「ははっ」

 ネメアは小さく笑う。

 それは作戦を見破った俺を称える笑み……じゃ、ないんだろうな。

 本当に笑いたいのはこっちなんだけど。しかたねぇ、俺は心の中で笑うのだった。

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