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リトライ!!─救国の小女神様、異世界でコーラを飲む─  作者: 山本桐生
神々の手編

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迷いの森の真実とイベント発生

 コノハナサクヤヒメ。

 気付いた時には、傍らに一人の魔法使いがいた。子供を持つ、温和な女性の魔法使い。

「森の中の集落で大勢の人と暮らしていたのですが、水の確保として拙者が必要だったのでしょうな」

「あの……この話は……」

「うん。そうだと思う」

 ハリエットと俺は顔を見合わせた。

 森の中に移り住んだ魔法使いの話。俺達はこの話を最近聞いている。

「シノブちゃん、何か知ってるの?」

 リアーナの言葉に頷く。

 少し前、流浪の旅で大陸を回っていた時、その途中で小さな集落に立ち寄った。そこにルイーズという女性がいた。そのルイーズの母親こそが魔法使い。

 五十年以上も前の悲しい話。

 その事をリアーナ達にも伝える。

「そんな……ルイーズさんが可愛そうだよ……」

「そうね……でもできる事が何も無い。話を聞いただけでも歯痒いわ」

「ねぇ、ヒメはずっと同じ森にいたの?」

「はい、拙者、生まれも育ちもあの森育ち。森から出た事はございません」

「そうなると迷いの森こそ、魔法使いが隠れ住んだ森だな。迷いの森は僕も知っているけど、だったら森の特異性はその魔法使いと何か関係あるんじゃないか?」

「確かに。ヒメは何か知ってる?」

「あの場所が迷いの森と呼ばれている原因、もちろん知っていますぞ。あの森に隠れ住んだ住人のほとんどは子供達で、その子供達を守る為の結界だと魔法使いは言っていましたな」

「結界?」

「結界は攻め込まれるのを想定した結界でして。その時に攻め込んでくる者はほぼ大人。そんな時、大人は惑い、子供は簡単に森を抜けられる。そういう結界なのですぞ」

 大体は迷うけど、たまに抜けられるのはそういうわけか!!?

「シノブさぁ、魔法使いの悲しい話だったのに、なんか目がキラキラしてない?」

 と、シャーリー。さらにユリアン。

「迷いの森を確実に抜けられれば、帝国との運搬が安価で楽になる、とか考えている顔だろ」

「シノブは人でなしですわ」

「大人と子供をどうやって分けているの?」

「……無視をしました……」

 呆れたようにハリエットは言う。それはそれ、これはこれ!! 我が商会の為にぜひ知りたい!!

「性交の有無」

「ん?」

「性交。交尾。まぐわい、営み。砕けて言えばエッチですな」

 くっ、あの可愛かったコノハナサクヤヒメからそんな単語を聞きたくなかった。名前も便座衛門とかに変えてやろうか。

「……つまりリコリスとユリアンは完全に駄目じゃん」

「確かにですわ」

「シノブ、今、それを言う必要は無いよな?」

「お二人ともご心配されるな。このコノハナサクヤヒメ、魔法使いより魔力を与えて頂きましたので、結界自体を消す事はできませんが、その条件を変える事くらいはできますぞ」

「ひゃっほう!!」

 それって大人でもちゃんと通れるようにできるって事だろ? つまりコノハナサクヤヒメがいる限り、迷いの森のショートカットを独占して使いたい放題。凄いよ!!

「ヒメ、質問があるんだが」

「ミラン殿。拙者の分かる事なら何でも答えましょうぞ」

「迷いの森の条件付けができるなら、最初から大人だけを入れないように遮断すれば良かったはず、それはできなかったのか?」

「もちろん可能でした。ただ魔法使いはいつ寿命が尽きるか分からなかった故に。森の中の集落には少数ながら大人も居ました。大人の侵入を遮断する結界は、同時に集落の大人を閉じ込める事にもなります。その状態で魔法使いが亡くなってしまえば、永遠に閉じ込める可能性もあったのです。その解決法として魔法使いは拙者に魔力を与えていたのでしょうな。結界の調整ができるように」


 迷いの森の真実。そういう事だったのか。

 新たな情報を得て、我が商会は前途洋々だね!!


★★★


 とある夜。

 就寝する時間帯。シャーリーに呼び出された。

 辺りに人の気配が無い事を確認する。

「ねぇ、シノブ、これ見て欲しいんだけど」

「ん、何? どしたの?」

「私さ、魔弾を撃つ時に指先を回すじゃん。クセみたいなもんで右回りなんだけどさ」

 クルクルと右手人差し指を回すシャーリー。あれ……右回り……じゃない?

 その指先、赤色の小さい光。

「それ、色違うよね?」

「そそ。私も特訓で魔力量が上がったんだけど、それで何気無く反対の左回りで指先を回したらさ、これ」

「魔弾とは違うの?」

「違う。攻撃力は全く無いし、一発使うとしばらく使えない。普通の魔弾も撃てなくなる」

「随分と燃費が悪いね」

「そうなんだけど……たまになんだけどさ、リコリスとユリアンが揃って抜け出してんの知ってる?」

「知ってる。まぁ、二人とも若いし、エロエロな事でもしてんじゃない?」

「多分ね。今も姿が見えないし。そこでこれ」

 眼鏡をクイッと上げ、シャーリーが二ヤッと笑う。

 そして放たれる赤い魔弾。

 それはゆっくりと地下神殿の中を進んで行く。

 地下神殿内は広い。しかも全てのスペースを把握しているわけじゃない。まだ進んでいない通路、知らない空間が多く存在している。

 その中を赤い魔弾は進むのだ。

 それを追うように少し歩いて。

「ここっぽいね」

 シャーリーは足を止める。と、同時に赤い魔弾は消えた。水に砂糖が溶けるように霧散する。

 そして身を隠すように通路の奥に視線を向ける。

「ほら、シノブも見てみ」

 囁き掛けるような小声。

「何か見え……っ!!?」

 辺りに光源は無い。しかしサンドンの力なのか、それでも神殿内は薄っすらと明るく周囲を確認する事ができた。その俺とシャーリーの視線の先。

「普段の二人なら、あたし達の気配に気付くんだろうけど、やっぱり興奮してると気付かないのかね」

 そこにリコリスとユリアンの二人が居た。しかも……キスしてんじゃん……

 エッチなイベント発生である。


★★★


 リコリスとユリアン、周囲はもちろん、親も公認の恋人同士。

 二人はキスを交わす。

 最初はお互いの唇をつつくようなキス。やがて少しずつ強く唇を押し付け合う。そして二人の舌が絡み合う。

 唾液が混ざる濡れた音。

 唇を離すと唾液の糸が伝う。

「キスが大好きですわね」

「リコリスは違うのか?」

「いえ、わたくしも大好きですわ。ユリアンとするキスは」

「俺もだ」

 そして再びキス。

 もちろんこれから行われる行為は俺もシャーリーもまだ体験した事の無い行為。二人は抱き合い、そして……


★★★


「シノブ、見て見て、めっちゃキスしてる」

「見てるって、めっちゃ見てる」

「凄っ、キスがエロ過ぎる」

「待って。シャーリーが見るにはまだ早過ぎるんじゃない?」

「いやいや、二人とは同い年だし。でもあたしもすんの? 想像できないんだけど」

「相手いないでしょーが」

「まぁ、そうだけど。シノブは? アバンセとかパルとか。しないの?」

「最後までする気は全く無し。そもそもさ、私の体で最後までしたら腹裂けて死ぬと思う」

「あー、確かに……って、リコリスの胸デカ!!」

 ……

 …………

 ………………

 俺達は喋りながらも、その行為から目を離す事ができなかった。それ程までに行為は興味を掻き立てる。

 しかし同じ姿勢で集中していたせいだろう。日々の筋トレの疲労もあったのかも知れない。

 ピシッ、ふくらはぎが攣る。

「っ!!?」

 体勢を崩す俺。咄嗟にシャーリーの体を掴む。

「ちょ、ちょっと、シノブっ!!?」

 シャーリーもバランスを崩す。

 そして二人揃って転び出てしまうのである。リコリスとユリアンの前に。

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― 新着の感想 ―
[一言] 一人エッチ含む経験を知れる森とは、迷名物になりそうな判定だったのか。 これは恋人達からの、お仕置きコースですわ。もしくは見逃されてたか・・・
[一言] 便座衛門…土下座衛門みたいに座薬の商標で引っかかって名称変更させられたみたいな名前だわ
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