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リトライ!!─救国の小女神様、異世界でコーラを飲む─  作者: 山本桐生
神々の手編

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突撃と鉄格子

 ハリエットの策。

 それは罠。

 砦の周囲に魔法陣の描かれた紙と糸とを張り巡らせていく。

 ヴォルフラムの足を使い、できるだけ広範囲、様々な場所に仕掛ける。これでまずは相手の初動を妨害する。逃げる際の時間稼ぎにもなるだろう。

「ハリエット」

「はい」

「ありがとうね」

「……はい」


 そしてベルベッティアが戻る。その報告。

「確かに調査団はこの砦に捕まってたよ。でもみんなほぼ無傷に近いみたい」

 ベルベッティアから伝えられた人数と、ニーナから得た調査団の人数は一致していた。それは良いが……無傷で? お姉ちゃんを代表とした調査団を無傷で? それってかなりの戦力差が無いと無理なんだけど。

 ベルベッティアが言葉を続ける。

「それとこの砦に援軍が送られるらしいの。あまり時間の猶予は無いと思うよ」

 どの道、お姉ちゃんを助け出すなら今がチャンス。危険はあってもやるしかねぇ。

「じゃあ、まず。上半身が人間で下半身が馬の奴。あの相手はミランとドレミドでお願い。多分、普通じゃない相手だから絶対に気を抜かないで」

「ああ、任せろ」

「分かった。私も最初から全力で相手するぞ」

「フレアとアリエリは、ミランとドレミドが戦いに集中できるように、その周りの相手をお願い」

「はい。お任せ下さい」

「うん。分かったよ」

「ベリー、リコリス、ユリアンの三人は敵の陽動。できるだけ派手に暴れてよ」

「陽動ってのはこちらの意図を誤認させるものだと思うんだが、あの砦を攻めたら調査団を助ける事が目的なのは明白。それを陽動と言うのだろうか?」

「ベリー、細かい事をうるさいですわ」

「まぁ、暴れて少しでも混乱させてやるよ」

「ベルちゃんとキオは調査団の救出。ホーリーも一緒にお願い」

「任せるにゃん」

「が、頑張ります!!」

「はい。ですがシノブ様の護衛は大丈夫でしょうか?」

「うん。大丈夫だよ。ヴォルがいるし、私は待機組だから。ハリエットも一緒だし」

「シノブは俺が守る。心配するな」

「本当は私も一緒に行きたいのですが、罠を発動する操作がありますから」

「ねぇ、あたしは? あたしは何すんの?」

「シャーリーも待機組だよ」

「ええ~またぁ?」

「だってさ、シャーリーの能力って一点物なんで切り札になる気がするんだよ。だから相手に見せたくない」

「うーん、シノブがそういうなら待ってるけどさ。他の人が頑張ってんのにモヤモヤすんだよねぇ」

「大丈夫、シャーリーにも頑張ってもらう機会が絶対にあるから」

「まぁ、今回は我慢するけどさ」


 そうしていざ突撃である!!


★★★


 少しだけ離れた所で爆発音が聞こえた。

 始まったのだ。

 この目で状況が確かめられないのが辛いが、今は信じて待つしかねぇ。みんな、頑張ってくれよな!!


★★★


 そしてこれは俺が確かめられなかった内容。


 木製の扉の前に立つ女天使の門番。その足元には狼。その目の前で突然に爆発が起きた。その威力に天使も狼も弾け飛ばされ、そして砂のように崩れ去る。

 少し離れた位置。キオがいた。その左目、カトブレパスの瞳が光り渦を巻く。その力が爆発を起こしたのだ。

 それを合図としてミラン、ドレミド、アリエリが飛び出した。そして少し遅れてタックルベリー。

 そのタックルベリーの魔法が砦の扉を破壊する。

「死にたくなければ私の前に立つな!! 誰であろうと斬り倒すぞ!!」

 先頭を走るドレミド、行く手を遮る天使と狼を斬り飛ばした。

 それに続くミランが言う。

「人間と獣人は原住民の可能性がある。分かっているな?」

「もちろんだ。なるべく大怪我はさせないぞ」

 ドレミドは言いながら目の前の人間と獣人を蹴り飛ばした。派手にゴロゴロと地面を転がる。

「ドレミドはね、馬鹿なんだからね、もっと力を加減して。馬鹿なんだから」

「酷い!! 二回も馬鹿って!!?」

「ドレミド、あいつだ」

 ミランは視線の先にケンタウロスを見付ける。そのケンタウロスの上半身、弓を引くような姿勢を取る。次の瞬間、光の矢が放たれた。

 光の矢の前に飛び出すのはフレア。その防御魔法は斜めに展開される。受け止めるのではなく、上へと逸らす。

 衝撃音。

 光の矢は進行方向を変えるが、それは遥か上空、雲をも貫いた。とんでもない威力。

「助かった」

 ミランの言葉にフレアはニコッと微笑むのだった。

 そのミランとドレミドが一気にケンタウロスとの間合いを詰めるのだ。


 魔法を連発するタックルベリー。

 その姿を見てユリアンは呟く。

「凄い」

「ベリーの事かしら?」

 リコリスの言葉にユリアンは頷く。

「そう。同じ魔法でも、相手によって威力を変えているんだ。咄嗟の調節はかなり難しいはずだぞ」

「全く。黙っていれば美青年の天才ですのに。でも負けていられませんわ」

「そうだな」

 リコリスとユリアン、陽動として派手に動き回る。

 その姿をアピールするように、リコリスは飛び跳ねながら攻撃を繰り返す。そしてユリアンはその背中の竜の翼で飛び回るのだった。


 混乱する砦の中、すり抜けるように駆けるのはベルベッティア、キオ、ホーリー。

「こっちだよ、こっち」

 ベルベッティアは先行して建物の中に入り込む。

 もちろん建物の中にも天使はいた。カトブレパスの瞳で索敵しながら、天使を双剣で斬り倒す。

 そして屋内の戦いでこそ真価を発揮するのがホーリーだった。防御魔法で壁を作り上げ、相手の行動を極端に制限する。

 やがて木造だった屋内が石造りへと変わる。さらにその先。

「まずはここ」

 その部屋に飛び込む。

 天使ではない、人間と獣人。武器を手に襲い掛かって来るが……まさに一瞬。踊るように回転するキオ。その片刃の直剣で峰打ちにする。

 そして部屋を見回すベルベッティア。

「牢の鍵と……リアーナちゃん達の武器も保管されているみたい。ホーリーちゃんにはこの部屋の確保と、相手の阻止をお願いできる?」

「お任せを。ベルベッティア様もキオ様もお気を付け下さい」

「ありがとう、お願いね。キオちゃん、行くよ」

「は、はい」

 そうして進んだ先。


「ベルちゃん? それにキオちゃんも?」

「きっとシノブもいるのね」

 そこにリアーナとロザリンドはいた。他にも数人の調査団員。

「うん、助けに来たにゃんっ」

 そう言ってベルベッティアは笑った。

「い、今、開けますね」

 キオが牢の鍵を開ける。リアーナもロザリンドも手足の拘束はされていない。それでも逃げ出せなかったのは、この鉄格子に理由があるのだろう。

 鉄格子には見た事の無い文字が刻まれていた。その文字が薄っすらと発光している。それは長く生きるベルベッティアでも見た事の無い鉄格子。

 そして別の場所にはビスマルクとヴイーヴル。

「助かったぞ。礼を言う。ありがとう」

「ベルちゃんも~キオちゃんもありがとうね~もしかしてユー君もリコリスちゃんも一緒なのかしら~?」

 もちろんユノも。

「ありがとう。助かったよ。調査団の団長としては情けない話だけど」

 確かにほとんど大きな怪我は無い。それでも何人かは衰弱していた。この状態では全員を連れて逃げ切るのは無理だったように思う。

 さらにその奥、巨大な狼にキオがびびる。ヴォルフラムのお母さん、ユノと行動を共にしていたアデリナ。

 とにかく全員を解放するのである。

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