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リトライ!!─救国の小女神様、異世界でコーラを飲む─  作者: 山本桐生
神々の手編

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白い翼と女天使

 頭上に流れ星。

 夜空に一筋の光が流れる。そしてちょうど俺達の真上。

 流れ星は弾け、頭上から無数の光の矢が降り注ぐ。

 フレアとホーリー、二人の防御魔法が展開された。


 ドドドドドドドドドドッッッ!!


 鼓膜が破れるかと思える程の衝撃音。反射的に耳を押さえるが、それでも頭の中にガンガンと響いてくる。大気と地面とが震え、平衡感覚も狂いそうだ!!


 ドドドドドドドドドドッッッ!!

 ドドドドドドドドドドッッッ!!


 さらに続けて二回。

 凌ぎ切る。

「シノブ様、大丈夫でしょうか?」

「頭痛い……ホーリーの方こそ大丈夫?」

「大丈夫ですが、今の攻撃、通常の魔法攻撃ではありえない程の威力です。相当に警戒すべき相手かと」

「もう……私は日々平穏にダラダラ過ごしたいだけなのに」

 小高い丘の向こう側に視線を向ける。まるで日の出のような明るさだった。光と共にその大軍は姿を現す。

 白を基調としたドレス姿、そして手に武器を持つ大軍。特徴的なのは全員が女性であり、背中に白い翼を持つ。俺の印象として、それは天使。美しい女天使の大軍。

 さらに森の中からは数え切れない程の狼が現れる……うん、そうね、これ挟み撃ちだ。

「シャーリーも乗って」

「あいよ」

 ここからは乱戦になる。近接戦には向かないシャーリーもヴォルフラムの背中に乗せる。

 そして……


 連携して戦う訓練をしていたわけではない。しかしお互いに何度も手を合わせていたからこそだろう。ミランとドレミドの連携が強過ぎる。

 背中の白い翼をはためかせ、地面スレスレを飛びながら突進する天使。そこから繰り出される剣戟。

 それをミランが盾と剣で受け止める。そして次の瞬間、止めた相手をドレミドが斬り倒す。攻守に分かれ専念する事により凄まじい強さを引き出していた。

 そこへタックルベリーの魔法が加わる。

 やはり天使も狼と同じ、致命傷を与えると砂へと変わり崩れ落ちた。


 体格の小さな狼は小回りが利き、速さに優れている。それに対抗するのは同じく機動性に優れるリコリスとユリアンだった。

 リコリスなんてもう嵐みたいなもんじゃん。その手数の速さは上下左右360度全方向への攻撃を可能にしていた。近付く狼は殴られ、蹴られ、弾け飛んでいく。

 そしてユリアン。振るう剣に無駄が無い。一振りで狼を仕留め、返す剣でまた仕留める。こちらもまた速く強い。


 キオ、アリエリ、ハリエットも天使と狼を相手に戦いを有利に進め、フレアとホーリーが全体のサポートへと回る。

 その乱戦の中をベルベッティアが駆ける。


 俺とシャーリーを背中に乗せたヴォルフラムは戦わず、ひたすら回避。

「シャーリー、絶対いるはずだから!!」

「そんな簡単に見付からないって!!」

 これだけの大軍だ、現場で指揮する者が絶対にいるはず。それを探し出す為に、ベルベッティアも駆け回っているんだからな。


 視界の端、キオがハリエットを連れて森の中に飛び込んで行く姿が見えた。きっと何かを見付けたに違いねぇ。キオが自分で判断してそう動いたなら、俺は信用して待とうじゃないか。

「つーか本当にいるの!!? てかヴォル吐きそうなんでもう少し動き抑えて!!」

「いや無理。止まったら一気に襲われる」

「ちょっとシャーリー、もう少し踏ん張んな!!」

「そもそもシノブが指揮官なのに、その指揮官が逃げ回ってるっておかしくない!!?」

「だからこそでしょ!! 指揮官ってのは最後まで絶対に残らないといけな……いんだから……」

「シノブ?」

「……シャーリー、助かったよ、ありがとう」

「え、何、どういう事?」

「ヴォル、ベルベッティアを拾って、すぐベリーのトコ行って!!」


 タックルベリーを捕まえる。

 そして小さな声で囁く。

「ベリー、魔法使って。威力は無くて良いから、とにかく広範囲で派手なヤツ」

「広範囲で派手なら何でも良いんだな?」

「うん。ついでに魔法を使う時に大袈裟な身振りでお願い。凄い攻撃魔法を使うような感じで。ヴォル、シャーリー。ベリーの魔法に反応して身構えたり逃げようとした奴を見付けて。ベルベッティアはみんなにもそう伝えて。説明は後」

 狼も天使も、仲間が倒されているのに全く怯む様子が無い。多分それはゴーレムに近いものだからだろう。ならその中で逃げようとしたり、防御しようとした者がいれば、そいつがこの場での特別な存在、指揮する者である可能性が高い。


 タックルベリーは大声を張り上げた。

「みんな、僕が魔法で周囲を一気に片付けるから動くな!! 下手に動いたら死ぬぞ!!」

 そして魔導書を片手に詠唱へと入る。

 その手から生み出された一つの光球。それは打ち上げ花火のように空へと打ち上がっていく。そして空高く上がるとそこで四方に弾けた。派手な色と音を伴って。いやいや、これ完全に打ち上げ花火じゃん。

 その中で……

「シノブ、身構えた奴が一人いた」

 ヴォルフラムの目がその姿を捉える。

「どこ?」

「今リコリスとユリアンが向かった」

「ねぇ、それと向こう!! ドレミドが行ってる!!」

 シャーリーは別方向に視線を向けていた。


 タックルベリーの打ち上げ花火。その中で一瞬だけ動きを止めた女天使がいた。

「ユリアン、あれ!!」

「了解」

 他の天使達の隙間を縫うようにリコリスとユリアンはその場から駆け出した。

 まずはユリアンの一撃。その一撃を受け止める女天使。その天使の表情には焦りがあった。それは他の天使とは明らかに違う反応。

 ユリアンと何度か剣を合わせて、天使はその場から後退、そのまま翼で空に飛び立つが……

「逃がしませんわ!!」

 リコリスは一瞬の跳躍で天使の頭上へ。そして強烈な蹴りが天使を蹴り落とす。

 その落とされた天使を待ち構えていたユリアンが一閃。

 斬った瞬間に天使の体は一枚の紙切れに変わる。

  

 タックルベリーの打ち上げ花火。その中で防御姿勢を取った女天使がいた。

「お前だな」

 ドレミドが駆ける。

 そして本気の一撃。威力、速さ、共に申し分ない一撃だったが、その女天使は手に持つ槍で受け止める。

「……この大軍の中から私を見付けるとはさすがですね。これもシノブという優れた指揮官がいるおかげでしょうか?」

「当然だ、シノブは凄いんだぞ。この大陸を救った事もある英雄なんだからな」

「救国の小女神……噂は本当のようですね。見た目は子供のようでありながら、その卓越した知略でゴーレムの大群を退けたと聞きますが」

「ああ、その通りだ。シノブはとにかく」

 言い掛けるドレミドの元にアリエリが割って入る。

「あのね、余計な事はね、言わないの。ね?」

 アリエリの見えない一撃が天使を頭上から殴り付ける。

 ドンッドンッドンッと連続で殴られ、その天使は地面の中に埋もれていく。そして何度も殴り付けた後……

 ドバンッと地面が爆発する。そして土埃の中から天使が槍を構えて飛び出す。今度はその一撃をドレミドが剣で受け止めた。

 天使はアリエリへと視線を向ける。

「変わった力ですね。見た目からは想像ができない力。こちらも油断なりません」

 そしてドレミドと何度か打ち合い、天使はその場から飛び退いた。

「逃げるのか?」

「ええ、そうです。役割が果たせそうにありませんから」

 ドレミドの言葉に天使は簡単にそう答えて空へと飛び上がる。

「でも逃がさないぞ。アリエリ」

「うん」

 アリエリの見えない力。それがドレミドを空へと打ち上げる。

「っ!!?」

 それは天使にとって予想外の攻撃だった。その反応が一瞬だけ遅れる。

 空中での剣戟を受け止められたドレミドだったが、同時に天使の手首を掴み離さない。力で強引に引き寄せて、さらに背中の翼を封じるようにその体を抑え付ける。もつれるように自由落下。

 そのまま地面に叩き付けられる。二人ともすぐさま体勢を整えるが、覚悟があった分だけドレミドの方が一瞬速い。

 ドレミドの剣が天使の翼を片方だけ斬り飛ばした。

「つ、翼が……わ、私の、アルテュール様に頂いた翼が!!」

 その天使が向けるのは怨嗟の視線。

 感情は少ないが美しかった表情。その天使の表情が鬼のようへと変化する。

「……この翼は……貴方達のような下等な存在には触る事さえ許されない……それを斬り落とすなんて……殺します……必ず……八つ裂きに……」

 斬り落とされた翼を胸に抱き、天使は声を絞り出した。

 その天使に剣を突き付けてドレミドは言う。

「無理だな。周りを見れば分かる」

 天使の大軍の足並みが乱れていた。この場での指揮官がこの天使なのだろう。そして狼の大群も逃げ始めている。この状態で俺達を倒すのは無理。

 俺はその天使に歩み寄る。

「アルテュール。それが統率者の名前?」

「私達だけではなく、全ての統率者となる御方です」

「この大陸の支配でもするつもり?」

「支配ではありません。統治です」

「私達にとっては支配そのものでしょ。従わない者はどうするつもり?」

「アルテュール様に逆らう者は排除します。結果として殺す事もあるでしょう。しかしその代わりに大陸の平和を約束します」

「余計なお世話過ぎる」

「それだけの力がある御方です。アルテュール様は」

「まぁ、とりあえず拘束させてもらうよ」

 お姉ちゃん達に繋がる情報を何か持ってんだろ。

 そして女天使を拘束するのだった。

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