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リトライ!!─救国の小女神様、異世界でコーラを飲む─  作者: 山本桐生
プロローグ

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ロリゴンとリアーナ育成計画

 このエルフの町には二つの学校がある。

 5歳から14歳まで、俺が通うこの初等学校。そして15歳から20歳まで、お姉ちゃんが通う高等学校。

 初等学校はエルフの町の義務教育。それに対して高等学校は任意であり、初等学校で優秀な者が通う学校。そして進学する生徒は全体の半分程度。

 そして俺はと言うと……

「進学? しないけど。リアーナはするんでしょ?」

「私はそのつもりだけど……シノブちゃんは頭だって良いのに……進学しないの?」

「お父さんもお母さんも進学しろって言うけど、私は仕事を探すよ。それで少しお金を貯めて何か新しい仕事を立ち上げるつもり。それに私は実技が全くダメだから進学できないと思うし」

 まぁ、知識自体は学校じゃなくても学べるしな。このエルフの町を出て、もっと大きい街で暮らすつもりなら学歴も必要だろう。けど俺はここでスローライフを満喫するんじゃい。

「リアーナは何か将来、やりたい仕事とかあるの?」

「笑わない?」

「笑わない」

「絶対に?」

「絶対」

「私は……冒険者みたいな仕事がしたい」

「あははははっ」

「酷いよー、笑わないって言ったのに!!」

「ごめんごめん。だってリアーナから『冒険者』なんて出るとは思わなくって」

 学校の帰り道。

 リアーナと並んで歩く。

 あと2年で自分の将来の行く道を考えないとならない。

 冒険者とはその名の通り、険しきを冒す者。富、名声、求めるモノは様々だが、冒険者は未知の世界に稀有な体験を求める者が多い。そして多くの失敗の中、驚嘆され歴史に名を残す者もいる。

 一見して自由に見えるその世界。だがそこは実力が全ての世界であり、力の無い者は命すら落とす。

 まさかあのリアーナがそんな事を考えているとは思わなかった。

「でもそう考えるようになったのはシノブちゃんのせいでもあるんだよ?」

「私? どうして?」

「シノブちゃんと一緒に居たら想像出来ないような体験が出来たから。アバンセさんの背中に乗って空を飛んだり、サンドンさんと地下でゲームしたり、普通だったら絶対に出来ないような素敵な体験」

 たまにアバンセと空中散歩をする時がある。初めてアバンセの背中に乗った時のリアーナの顔、キラキラと輝いて見えた。空高く舞い上がった時の怖さと嬉しさが混じった表情は印象的で今でも鮮明に覚えている。

「まぁ、あの不死身のアバンセと古代竜・冥界の主サンドンと友達なのって絶対に私達だけだろうし。貴重な体験ではあるよね」

「他にもね、色々な体験をしていたら、もっともっと知りたくなったの。私の知らない世界を」

 こりゃ本気だ。

 リアーナの気持ちは分かるが……

「冒険者なんて危ないよ。誰かと戦って死んじゃう事だってあるんだよ? 良い事ばかりじゃないよ」

「うん。だから『冒険者みたいな仕事』って言ったの。例えば行商人みたいな。そういう世界中を見て回る仕事をするのが私の今の夢。だから少しでも勉強して、強くもなりたいなって」

 その為の進学か……確かに世界中を移動する仕事はいくつかあるだろう。でも冒険者程に危険ではないとしても、普通に町の中で暮らすよりは格段に危険が付き纏う。

 本当だったら危険性を説いて止めるのが正しいかも知れない。でも俺は……

「よし、分かった。リアーナはワシが育てちゃる」

「シノブちゃん?」

「待ってろ!!」

 そうして俺は一人その場から駆け出すのだった。


★★★


 アバンセを呼び出す。アバンセは周りに自分を見えなくするような魔法を使い、姿も小さいので今では目立って騒ぎになるような事は無い。

 話がある事を伝えると、どうもアバンセの方にも話があったらしく、場所を変える事になった。

 そしてここは竜の山の山頂付近。アバンセの住居である。場所自体は殺風景な岩山だが、そこからは絶景が見える。地平線の向こうまで広がる森の海。

「シノブ。お前の話とは何だ?」

「リアーナの事なんだよ」

「リアーナがどうした?」

「うん。将来、冒険者みたいに世界を回るような仕事がしたいんだって」

「ほう。あのリアーナが。シノブの影響じゃないか?」

「うっ……誰の影響かは置いといて、アバンセにも協力して欲しいの」

「協力? 出来る事ならしてやるが……」

「ほら、分かると思うけど、リアーナがやりたい仕事ってメチャ危ないでしょ? だからアバンセに色々と教えて欲しいんだよ。例えば魔法の事、世界の事、リアーナの為になるような色々な知識と技術。私達より長生きのアバンセの方が経験豊富だと思うから」

「それは構わない。俺が教えられる事なら何でも教えてやろう。リアーナも友達だからな。でも止めなくて良いのか?」

「私はやりたい事を止めるより、やりたい事を応援してあげたい。リアーナのやりたい事に危険があるなら、私はその危険を少しでも減らすようにしてあげたいの」

 前世の俺。小説家になりたかった。

 でも夢は叶わなかった、切り捨てたモノも多かっただろう、結局は何事も成し遂げられず、未来には不安だけが残っていた。

 だからこそ俺は夢を追う人には報われて欲しい。夢を叶えて欲しい。そう思うんだよ。

「シノブらしいな。分かった。リアーナを最強の冒険者にしてやろう」

「まぁ、冒険者じゃなくても良いんだけど。で、アバンセの話は? 私に何か話があるんだよね?」

「ああ、その話なんだがな……あのな……」

 言い辛そうなアバンセ。

「そういう言い方をされると怖くなるんだけど」

「ほら……サンドンの所での俺の言葉を覚えているか?」

「……『嫁』ってヤツ?」

「……そうだ……それだ」

「聞き間違いじゃなく、私の事を『嫁』って言ったの?」

「……ああ」

「サンドンに対して何かの牽制的な意味で?」

「……そうではなく……」

「……」

「シノブ」

「……何?」

「俺の嫁になってくれ」

「……もう一度」

「俺の嫁になってくれ」

「……もう一度」

「俺の嫁に」

「お前は子供相手に何言ってんだよ!!? 変態か!!? このロリコンドラゴン!! ロリゴン!!」

「ロリゴン!!?」

「まさかお前、俺をこんな山の中に連れて来て……何する気なんだよ!!? 変態変態ド変態!!」

「違う違う違ーう!! 落ち着け!! 違うから落ち着け!!」

「アバンセに犯される……」

「犯さない!!」

「無理矢理『嫁になれ』って」

「言ってない!! 捏造だ、捏造!!」

「じゃあ、どういう意味なの?」

「お前が大人になったらの話だ。お前を嫁として迎えたい」

「ムリムリムリムリかたつむり」

「かたつむり!!?」

「そもそもそういうのは好きな者同士がなるんだよ?」

「俺はお前の事が好きだ」

「ちょ、ちょっと嬉しいけど……アバンセは友達だけど、男性としては見れないよ。そもそも竜だし」

「この姿なら人として子供だって作れるんだぞ」

 アバンセがそう言うと、その体が光に包まれた。そして次の瞬間、そこにいたのは竜のアバンセではなかった。

 浅黒い肌をした人間の青年がそこにいた。

 日本人のような黒髪、そして俺と同じ赤い瞳。年齢的には20代後半に見える。男らしい整った顔立ちは精悍であり魅力的。

 その肉体は筋肉で引き締まり、生命力が全身から溢れているようだった。

 こりゃ元男の俺から見てもイイ男じゃねぇか。もしかしなくても……

「アバンセ?」

「そうだ。この姿ならお前と一緒になる事が出来る」

「でも私がアバンセの事を好きになるとは限らないし」

「それならそれで諦める。ただこれだけは言っておく。俺はお前を嫁として迎え入れたいのだ」

「……分かったよ。分かったけど……少しくらい前を隠せ」

 こいつ全裸じゃねぇか。しかも立派なモンをブラ下げやがって。

「おっと。これは失礼」


★★★


 翌日。

「そんなわけでアバンセとサンドンには話をしといたから」

 あの後、リアーナ育成計画についてサンドンにも相談した所、無事に協力を取り付けられた。

「えっ?」

「だからリアーナ育成計画」

「えっ? えっ?」

「もちろん私も一緒に参加するからね」

「シノブちゃんの行動力にはビックリするよ……でも、ありがとう」


★★★


「シノブに話があるの」

 リアーナ育成計画の開始が決まったその日、学校が終わり、家に帰るとお姉ちゃんが俺を待っていた。そしてそう話を切り出す。

「話? どうしたの?」

「お姉ちゃんね。王立学校に編入しようと思うの」

「は?」

 それが意味する事は……お姉ちゃんがこの家を出て行く……そういう事だった。

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