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リトライ!!─救国の小女神様、異世界でコーラを飲む─  作者: 山本桐生
神々の手編

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狼と未知の相手

 もし敵勢がいて、襲撃があるならそろそろだろ。

 ある程度に森の中を進んで、簡単には逃げられない。俺が相手を襲撃するならそろそろだし。


 ほらね。

 日が暮れてから、闇夜に紛れての襲撃。

「シ、シノブさん、来ます!! お、狼みたいな魔物です!!」

「もっと詳しい情報をちょうだい」

「は、はい……か、数は多過ぎて分かりませんが、数百を越えます。姿形はヴォルさんを少し小さくした程度で、ふ、不思議なのは急に現れた事です……も、もっと遠くまで警戒していたつもりですけど、いきなり目の前に飛び出た感じです。方向は正面から左方向、さ、さらに後方に掛けてです」

 キオの目が襲撃を事前に察知する。

「みんな撤退!! 私を先頭に撤退するよ!! ミラン!!」

「任せろ」

「お兄様、私も一緒に」

「フレアとアリエリもお願い」

「はい。かしこまりました」

「うん、分かったよ」

 ミラン、フレア、アリエリ、守りに優れた三人。そしてハリエットが加わる。ここを最後尾にして襲撃を阻止してもらってと。さらにそこへ。

「リコリスも。みんなの目になって」

「分かりましたわ!!」

 獣人でもあるリコリス。その視力はただの人間より遥かに優れ、夜目も利く。それは竜との獣人でもあるユリアンも同じ。ユリアンを隊列の真ん中に入れて、全員がバラバラにならないよう注視してもらう。


 ザザザザザッ

 草木が踏まれ揺れる音。そしてトットットッと地を蹴る足音。低い唸り声と荒い呼吸音。それが何十、何百と重なり地面が震える。

 ガアアァァッ!!

 大口を開けて飛び掛かる狼の群れ。その先頭の一匹をミラン自身が隠れる程の大盾で殴り返す。

「お兄様、素敵です!! 格好良過ぎます!! 最強です!! 大陸最強の騎士です!! お兄様!! お兄様!!」

 ハリエット大歓喜。

「一発殴っただけなんだが。少し集中しろ」

「油断をしないお兄様も素敵です!!」

 次々に狼は現れ、その牙を剥く。

「ハァァァァッ!!」

 リコリスの以前とは比べ物にならない程の速さだった。まさに一瞬。

 突きと蹴り、複数の狼を同時に弾き飛ばす。そして振り下ろした踵落としが狼の頭を砕き潰した。その瞬間、狼が砂のように崩れ去る。

「これは何ですの!!?」

「こちらもです!!」

 近接戦では糸を使って戦うハリエット。糸を狼の首に絡めて、一気に切り落とす。その瞬間に狼は砂へと変わる。

「二人とも今は余計な事を考えるな。目の前の狼を倒す事だけ考えろ」

 ミランは狼を盾で叩き潰し、長剣で斬り倒す。やはり狼は砂のように消えてしまうのだ。

 そしてフレアの防御魔法が壁のように展開し、アリエリの見えない力が狼の進行を阻む。


 その防御網を突破した狼を真ん中でユリアンとドレミドが迎え撃つ。

「おりゃっ!!」

 ドレミドの鋭い剣閃は全く苦にせず狼を斬り飛ばす。

 それはユリアンも同じ。さらに剣を振るいながら周囲の状況を確認する。そして前方の俺と後方のミランの距離が開き過ぎないように声を上げる。

「ミラン、離れ過ぎだ!! シノブ、速度落とせ!! 後ろが付いて来られない!!」


 先頭を行くのは俺。まぁ、みんなには申し訳ないが、俺だけヴォルフラムの背中なんだ……すまぬぅ。

「シノブ、どうする? 僕も援護に行くか?」

「ごめん、ベリーの魔法は目立ち過ぎる。シャーリー、シャーリーも魔弾は撃たないで」

「それじゃ、あたし役立たずじゃん」

「そんな事は無いって。きっと役に立つ時が来るにゃん」

 ベルベッティアに言われて、シャーリーは不満そうに頷く。

 タックルベリーの魔法も、シャーリーの魔弾も光を帯びているので、この暗闇の中では目立ち、狙い撃ちにされる可能性がある。なるべくなら使いたくない。

 数は少ないが狼はこちらにも向かって来る。その大半をホーリーの防御魔法が防ぎ、残りをキオが斬り倒す。

 そのキオだけど、もう歴戦の戦士のようじゃん。

 片刃の細い直剣を二本。踊るような滑らかな動きで狼を切り倒しつつ、カトブレパスの瞳を周囲に走らせる。

「キオ、敵を見るんじゃなくて、地形を見て」

「ち、地形ですか?」

「そう、例えば……」


★★★


 ミランの無尽蔵とも思われる体力。

 剣を振るい、巨大な盾を振り回し、後退をしながら狼の進行を阻む。その中でハリエットは気付く。

「お兄様、先程から攻撃方向が偏っている気がします。これは誘導されているのでは?」

「気付くのが遅い。相手にこれだけの数があるんだ、本来なら囲んだ方が効率良いだろ。多分、向かう先は罠だろうが、そんな事はフレアも気付いてるぞ」

 ハリエットの視線に気付き、フレアはニコッと笑う。

「だったらどうして? どうしてシノブはそのまま罠の所に向かうのですか?」

「そこは少し自分で考えてみろ。それがシノブから学ぶって事だ」


 地形を探っているキオ。

「……こ、この先です……森が途切れて、見晴らしが良くなります……す、少しだけ小高い丘みたいになっています……」

「その辺りをよく見て。絶対に何かあるはずだから」

「は、はい」

 キオの左目、何色もの光が混ざり渦を巻く。

「……な、何か変です……あの、く、空間が揺れて……クテシアスさんの時と同じような……」

 それはユニコーンのクテシアスと出会った時の事。

「ベリー探索魔法を飛ばして!!」

「やっと僕の出番だな」

 すぐさまタックルベリーは自らの魔力を飛ばす。周囲へ静かに広がる魔力が生物、もしくは魔力を宿した存在の有無を探していく。

「……シノブ、確かにいるな。かなりの数が」

「やっぱりね」

 倒せば砂へと変わる未知の相手。出会い頭で突破するしかねぇって事かよ。

 そうして俺達は森を抜ける。そしてその俺達にミラン達が追い付いた。

「大丈夫? ミラン」

「これくらいは余裕だな」

「キオ、他に景色に違和感がある所は?」

「あ、ありません」

「じゃあ、みんな、ここが罠の終着点って事で。これからが本番みたい」

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― 新着の感想 ―
[一言] もしもヴォルの小さい姿だけ、見てる人だと子犬の大群が押し寄せるの想像してそう。
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