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リトライ!!─救国の小女神様、異世界でコーラを飲む─  作者: 山本桐生
プロローグ

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14/251

階段と協定

「ねぇねぇ、リアーナ。ちょっと放課後、行きたい所があるんだけど一緒に良い?」

「うん。大丈夫だよ。どこ行くの?」

「それは秘密。だけど凄く気になってる所なんだよ」

「分かった。手ぶらで大丈夫?」

「大丈夫だと思うよ」


 学校終わり。ヴォルフラムも合流して三人で向かった先は……

「ここ……私が教えた道場があった所だよね?」

「そうだよ、リアーナに爆発した話を聞いて気になって来てみたの」

 目の前には爆発で吹き飛んだ道場の残骸が山ほど積まれていた。そう、ここはあのド変態師匠が住んでいた道場。

 道場を吹き飛ばした後、とりあえず自分のパンツだけは回収しようとした結果に見付けたのだ。

「ちょっとこっち」

「あっ、シノブちゃん」

「リアーナ、頭に気を付けろ。シノブもぶつけたから」

 残骸の中に潜り込む。

「えっ? 危ないよ?」

「大丈夫、崩れそうになったらヴォルが巨大化して弾き返すから」

「俺ならこれぐらい大丈夫」

 そうして残骸の中を進むと、少しだけ空いたスペースが現れる。それは俺とリアーナとヴォルフラムでいっぱいの狭いスペース。その足元。

「リアーナ、見てよこれ。こんな所に扉があるんだよ」

 最初は壊れたドアノブが転がっているだけかと思ったが、床部分が扉になっている事に気付いたのだ!! そしてドアノブを回して持ち上げると……

「シノブちゃん……これ地下への階段だよね?」

「どう? ワクワクして来るんじゃないの!!?」

 こんな所に地下の階段が!! この何気ない扉が地下大迷宮への入口なのか、もしくは地獄に通じる悪魔の口か、隠された財宝に通じる秘密の扉かも知れない。

 浪漫だよ!! 今、俺達の目の前にあるのは浪漫の扉なんだよ!!

「野菜とかの地下貯蔵庫とかかな?」

「夢が無ぇ!!」

「そ、そんな事言われても……」

「俺の鼻には埃の臭いしかしない」

「じゃあ、確かめよっか」

「今から中に入るの?」

「うん。そのために来たんだから。一応ロウソク」

 そしてこの取り出したる火打石。魔力を持つ者が打つと簡単に火が付く優れ物。

 カチカチ

 よし付かねぇ。

「リアーナ。お願い……」

「う、うん……」


★★★


 ロウソクの頼りない灯り。その火で足元の階段を照らし、埃臭い闇の中をゆっくり慎重に下りて行く。

 階段は綺麗に成型された物が使われていた。図ったように切り取られ、表面を磨いて凹凸を無くしたような石の階段。

 左右を囲む壁。手で確認するがこっちもやはり同じような石材が使われている。随分としっかりとした造りをしてやがんなぁ。

 そして異変にはすぐ気付いた。

「ねぇ……シノブちゃん、この階段……」

「嫌な予感がする」

「うん……戻った方が良いかも」

 リアーナの言いたい事も、ヴォルフラムの予感も分かる。

 だって……もうかなりの段数を下りているのに、全く階下に着かない。100段までは数えていたんだけどな。

 こいつはヤベェ、普通じゃねぇ。リアーナも一緒だし、浪漫とか言ってる場合じゃねぇ。

「まだロウソクの火も残ってるうちに戻ろう」

 と、俺は階段を戻り、上がって行くのだが……

「シノブちゃん!! どこ行くの?」

「どこって、戻るんでしょ?」

「……下りてるぞ」

「……」

 言われて気付く。俺……階段を下りてる……おいおい、不思議のダンジョンかよ?

「ヴォルも、リアーナも、階段を上がって」

 二人とも怪訝な表情を浮かべながら……階段を下りた。

「え? え? どうして?」

「シノブが階段の上に居る……」

 同じ事を2、3度繰り返して分かった。

「……戻れねー」

 本人達は階段を上がっているつもりだが、実際は下りてしまう。バラバラに上と下に歩き出してみても、全員が階段を下りてしまっている。片方が一歩階段を下りて、もう片方が上から引き上げるつもりでも、引っ張り上げる方が階段を下りてしまう。

「ヴォル、私達の匂いは階段の上にちゃんとある?」

「ある。上からずっとここまで繋がっている」

「どうしよう?」

 不安そうな表情を浮かべるリアーナ……かと思ったら……

「ごめんね、こんな事に巻き込んで……って、リアーナちょっと笑ってない?」

「えっ、そう?」

「そう見えたけど」

「えっと、自分の意思とは関係無く登れない階段なんてちょっと面白いなって。どうせ登れないなら滑り台みたいにしてくれたら楽なのにとか考えてたよ。あっ、もちろん怖い事は怖いんだよ?」

「こんな長い滑り台、お尻が擦り切れるよ」

 その言葉にリアーナは笑う。

 昔のリアーナは一歩引いたような所があった。しかし色々と連れ回していた結果、最近のリアーナは物事に対して積極的になってきたような気がする。

「とにかく戻れない以上、する事は一つ、とことん階段を下りるよ!! それで本当にどうにもならなかったらアバンセ呼ぶから」

 つい先日、変態師匠に力を使ってしまった為、俺の力はまだ使えない。使えるよう回復するにはまだ数日必要とする。

「ヴォル、私とリアーナの二人を乗せて走れる?」

 ヴォルフラムの体が膨らむ。大型犬のサイズから一気に馬や牛のサイズへと姿を変える。

「もちろん。二人ぐらいなら余裕」

「でもヴォル、ロウソクの火が消えちゃうと思うけど大丈夫? 見える?」

 ただ問題は灯りだ。ヴォルフラムの背に乗るとなればロウソクの火などすぐに消えてしまう。夜目の利くヴェルフラムであっても、まったく光源の無い場所では何も見えないんじゃないか?

 しかし俺がそう口に出すと……

「マジか……」

 階段自体が青白く発光する。明るいわけではないが、階段を確認するには十分な光源だった。こんな石材は見た事が無い。

「本当に行くのか?」

「だって私達の話を聞いて『来い』って言ってるみたいだし」

 そしてその背中にリアーナと共に乗って。

「行くぞ。しっかり掴まれ」

 ヴォルフラムは階段を駆け下りるのだった。


★★★


 どれ程の地下深くに下りたのだろう。

 突然に空間は開かれた。

 何本もの、彫刻された石造りの巨大な柱。天井へと延びるがその姿は途中から暗闇に溶け、その高さは分からない。淡く青白く発光する石畳の床は磨かれたように滑らかで美しい。

 そして場所の雰囲気からリアーナが的確な感想を述べる。

「神殿みたい」

 厳かで神秘的な別世界。

 そしてその奥から声が響いた。

「ガーガイガー以外の人がここに来るとは珍しいの」

 それは落ち着いた老人の声だった。しかしその声を聞いた瞬間。

 ヴォルフラムの全身の毛が逆立つ。

「ヴォル!!?」

 そしてヴォルフラムはそのまま下りて来た階段へと向かうのだが……

「シノブちゃん、階段が無いよ!!?」

「匂いは!!?」

「ここで途切れている」

 そこは何も無い空間。

「……逃げないと不味い。アバンセと同じような存在がいる」

 ヴォルフラムは牙を剥きながら周囲の様子を探る。

 アバンセと同じようなって……害意がある相手なら、今の俺達には為す術が無い。すぐアバンセに助けを呼ばねぇと!!

 胸にしまってあった体育教師ホイッスルを吹く。

 ピーピーピー

 連続で。

 後はどうにか時間を稼がないと……

「娘、珍しい物を持っているな」

「シノブ!! 上だ!!」

「気配を消しているはずだが。子供とはいえ、さすがに森の主の血を継ぐ者」

 それは頭上からヒラヒラと落ちて来た。

 子猫のように小さな竜。

 形は竜だが、その体は鱗ではなくフワフワの白い毛に包まれていた。優しげに見える目、そして口の辺りには体毛と同じようにフワフワの髭。まるで可愛いヌイグルミ。

 アバンセの小さくなった姿に似ている。こいつも大きくなったりして……アバンセと同じく……アバンセと同じ……白い竜……それにさっきのガーガイガーの名前にも聞き覚えがある……

「古代竜……冥界の主……サンドン? 何でここに……」

 世界の頂点に君臨する5人の竜。その一人。

「『何でここに』? ここに来たのはお主達だろう?」

「そうですけど。じゃあ、帰してくれますか?」

 まぁ、まだコイツがサンドンと確定したわけじゃないけど。

「人の家に勝手に入り込んで、何の罰も受けずに帰ると言うのかな?」

「ごめんなさい、でも階段を戻れなくて……」

 そう言うリアーナの頭の上で、白く小さい竜はクルクルと回る。

「戻れないなら人の家を荒らして良いと?」

「荒らすなんてそんな……」

 リアーナは言葉を失う。

「罰として……ここで遊んでもらおう。暇なんでな」


★★★


 用意されたボードゲーム。

 将棋やチェスに似た、この世界では一般的な物。

 俺と、リアーナの胸に抱かれたサンドンとの勝負。

「やっぱり若い娘の胸の中は心地が良いのぉ」

「……ここにもド変態が……」

「ん? 何か言ったか?」

「いえ、何でもないです」

 ゲームのコマを動かしながら会話をする。

「そもそもアナタは本当にサンドンなんですか?」

「5人の竜の中で最古。冥界という名の地下世界を統べる竜。それがサンドンならば私はサンドンだな」

「でもここへの入口が、何でエルフの町の中にあるんでしょうか?」

「階段の上には道場があっただろう? ガーガイガーの作った道場にはここへ通じる階段がある」

「ガーガイガー……人間でありながら、その剣技は神にも届くと言われた剣神ですね。聞いた話だと100年以上も昔にサンドンに闘いを挑み、その力を認められて長寿を手に入れたって」

「あやつも面白い奴だ。偶然にもここへ辿り着いたからな、今回のように遊んでいけと言ったのだ。そしたら得意なゲームは決闘だと言う。だから相手をしてやったのさ」

「勝負の結果は?」

「結果か……いや……まだ勝負の最中かな」

「100年以上も?」

「そうだ。私の大事な遊び相手。だから長寿を与えた。ガーガイガーは世界中を巡る冒険者でもあってな。行った先々に道場を開き、剣を教えておる流浪人剣神さ」

「その道場がエルフの町にもあったって事なんですね」

「私とガーガイガーはそんな関係だが、人間の娘よ、お前はアバンセとどんな関係なのだ? あの笛はアバンセを呼び出す為の物だろう?」

「友達です」

「友達!!?」

「友達」

「アバンセに友達!!?」

「本当です。シノブちゃんとアバンセさんはお友達なんです」

「エルフの娘が言うなら信じよう。お前は人間の娘より素直そうだからな」

「ちっ」

「シノブ、舌打ちが聞こえてる」

「森の主の血を継ぐ者。お前がアデリナの息子だな」

「母を知っているのか?」

「大地は地下にも繋がる所だからな。知っているさ。会った事もある」

「ねぇ、シノブちゃん、アバンセさんだけど、どうするの? 呼んじゃったでしょう?」

「どうするって、来たら説明するよ。まぁ、アバンセが地下まで来れるか分からないけどね」

「無理じゃな」

「どうして? アバンセの力があれば不可能じゃないとも思うけど」

「ここが地下という事もある。それに幾重もの結界が張ってある。それを無理矢理に突破するような馬鹿な真似はしないだろう。協定を破る事にもなるからの」

「協定?」

「この世界には強大な力を持つ竜が私を含めて5人いる。強大な力を持つからこそ、お互いがお互いの領域を侵してはならない。もし『誰か』がそれを破れば、残りの竜で協力し、その『誰か』を倒す。それが協定。だからアバンセが来る事は無い。お主達もきちんと帰してやるから少しだけ私の暇潰しに付き合っておくれ」

「そう言えば、あの階段。あの上に上がれない階段もサンドンさんの力ですか? シノブちゃんやヴォルちゃんでも上がれなくて」

「私の力だが、あれは本来、道場の子供達がここに下りれないようにするためのものだ。だからお主達が来た時、すぐに帰してやろうと思ったのだがな。人間の娘、お前に興味があった」

「えっ、子供に興味がある変態!!?」

「若い娘が好きなのは確かだがそうじゃない。お前の中に特別な力を感じてな」

「あーそーそうねー後で説明しても良いかも」

「……後でか……まぁ、良い。それよりまた来てくれるのか?」

「ガーガイガーみたいな遊びは無理だけど、こういうゲームなら」

「約束だぞ」

 そうしてゲームは続いていくものだと思ったが……


 ドズウゥゥゥゥゥンッ!!


 地下神殿が揺れた。

 天井からパラパラと小石が落ちる。

 そしてその地響きは断続的に続く。

「ね、ねぇ、シノブちゃん、これって……」

「絶対にアバンセ!!」

 間違いねぇ、サンドンが掛けたという言う幾重もの結界。その結界と大地をブッ壊しながら、ここに向かっているのだ!!

 我が友達ながら非常識な、そして最高の野郎だぜ!!

「バ、バカな……あやつは何をしているのか分かっておるのか!!?」

 そう言うサンドンは驚いた表情、目を見開き天上を見詰める。

 破壊音は段々と近付き、やがて……

 天井の暗闇の中からアバンセの頭が現れた。鱗に覆われた巨大な顔。赤く血のように輝く瞳、その口から鋭い牙が見えている。

 普段の小さいサイズのアバンセではない。それは世界の頂点に君臨する恐ろしい竜の顔。

「サンドン……シノブ達に何をした?」

 その怒気を含んだ低い声に、さすがの俺もビクッと背筋を震わす。

「お主こそ何を!! 協定を忘れたか!!?」

「答えろ……俺の嫁に何をした!!?」

「えっ?」と俺。

「えっ?」とヴォルフラム。

「えっ?」とリアーナ。

「えっ?」とサンドン。

「えっ? そうじゃなくて」とアバンセ。

 嫁ぇ?

「ちょっと待ってアバンセ!! 誤解だから!! 誤解!! 私達は何もされてないって!!」

「そうなのか? リアーナ、ヴォルフラム、二人とも無事か?」

「うん、シノブちゃんもサンドンさんもゲームをしていただけなの」

「俺も何もされてない」

「とりあえずアバンセも小さくなって!!」


★★★


「シノブちゃん、二人とも可愛いね」

「威厳とか全く無いけど」

 小さいアバンセと小さいサンドン。確かに可愛い。

「どういう事だ? サンドン」

「どういう事だも何も、私は暇潰しで遊んでいただけだ。お主こそどういう事だ。協定を忘れたのか?」

「協定よりも大事な事がある」

「後でどうなっても知らんぞ」

「ごめん、アバンセ。元はと言えば私が悪いの」

 事の説明をアバンセにする。

「シノブは相変わらずだな。そのうち痛い目に合うぞ」

「痛い目に合って人は成長するのさ」

「言う事を聞く感じが全くしない」

「はっはっはっ、アバンセ、お主は本当にこの娘の友達なんだな」

「羨ましいか?」

 少し偉そうに言うアバンセだったが。

「なぜ? すでに私達は友達なのだぞ。そうだな、シノブ、リアーナ、ヴォルフラム」

「まぁ、また後でゲームする約束してるし」

「なっ!! サンドン、貴様!!」


 これが俺達とサンドンとの出会い。新たなゲーム友達。凄いだろ? だって5人の竜のうちの2人と友達なんだぜ? このまま世界征服も出来ちゃいそうだろ、これは。

 しかしこの時の事が原因で、後にとんでもない事になるのだが、それはまた別の話である。

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