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リトライ!!─救国の小女神様、異世界でコーラを飲む─  作者: 山本桐生
崩壊編

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生首と提案

 色々な想定をする。

 例えば、今ここで攻め込まれたらどうなるか? こんな作戦で不意打ちをされたら? なんて色々と。

 しかしこの形は全く予想できなかった。


 美しい金色の長い髪、そして同じく金色の瞳。

 ドレミドがただ一人で俺達の目の前に現れた。ボコボコにしてやったはずだが、どうやら復活したようだな。頑丈な奴だ。

 まぁ、また返り討ちにしてやるけどな!!

 しかし、あの馬鹿と元気が混じったドレミド、その金色の瞳が曇って見えた。その表情も暗い。そして両手で胸に何かを抱えている。

「っ!!?」

 隣のキオが息をのむ。

「う、嘘だろ……」

 それに気付いた時、俺は思わず素で呟いてしまう。

 だって、おい、あれ……ドレミドが胸に抱えているのって……生首だろ……

 胴体から切り離された、三つの頭部。

 しかもそれはローロン、ママトエトエ、ヴァルゴの頭部だった。

 あまりに異様な光景。

「シノブ様、お下がりください」

 ホーリー、そしてフレアが俺の前に立つ。ヴォルフラムも隣に。

 本物か? それとも俺達の動揺を誘う為の作り物、これも作戦か?

「キオ、周りの索敵」

「は、はい」

 言われてキオはカトブレパスの瞳を発動させ、周囲を索敵する。

「そこで止まれ」

 ビスマルクだ。前面に立つ。隣にはリアーナとロザリンド。

 ヴイーヴル、ユリアン、リコリスは後方の警戒。

 同時にフォリオとタカニャが隊としてすぐ動けるように指揮をする。

 他のみんなもすぐにでも戦える体勢だ。

 ドレミドが足を止める。

「何をしに来た?」

「……シノブを殺しに……」

「お前一人でか?」

 ビスマルクの問いにドレミドは黙って頷く。

「……シノブさん……ま、周りには誰もいません……はい……」

 と、キオ。

 全く持って意図が読めん。

 そこで直接に俺が出る。

「ドレミド一人で僕を殺しに来たの? その首は? 本物?」

「本物だ……ヴァルゴは私の代わり……失敗したから、罰として……」

 失敗? 帝都や第一都市を守れなかったからか?

「今までだって何度か戦ったよね? どうして急に罰なんて受けるの?」

「……面白いから」

「は?」

 俺は周りのみんなの反応を見る。当然だが、誰一人としてドレミドの言っている事が理解できない。

 ドレミドが歩を進める。

「止まれと言ったぞ」

 ビスマルクの体毛が逆立つ。今すぐにでも飛び掛かりそうな雰囲気だ。

「……私はどうすれば良い?」

 ドレミドは言葉を続ける。

「私にだって分かる。一人でシノブを殺す事なんてできない。でもやらないと、次はアリエリとミラベルが同じ事をされる。私は良いんだ。でも二人をどうしても助けたい。私はどうすれば良いんだ? 教えてくれ」

 そこでドレミドは崩れ落ちた。瞳から涙がボロボロと落ちる。

 それは機械仕掛けのゴーレムではない、普通の女の子のように見えた。

「……ビスマルクさん、拘束できる? できるなら話をしたい」

「ああ、分かった」

 ドレミドは抵抗などしない。素直に拘束されるのだった。


★★★


 ドレミド相手に役に立つのかは分からないが、魔封じの縄で両手を縛る。

 そのドレミドの正面には俺とキオ。キオはカトブレパスの瞳を発動させ、嘘があれば見抜けるようにする。その俺達に何重もの防御魔法を掛けるフレアとホーリー。

 ドレミドの両サイドにはリアーナとロザリンド、背後にはビスマルクが立つ。そのビスマルクが言う。

「少しでも危害を加える様子を見せればそこで終わりだ。分かるな?」

 黙って頷くドレミド。

「ローロン、ママトエトエ、ヴァルゴの首。あれは本物なの?」

 ドレミドは頷く。

「それをやったのはアイザック?」

 もう一度頷く。

 こんなにアッサリと……やはり何かの罠なんじゃ……

「ドレミドが一人で私を殺しに行くよう指示したのもアイザック?」

 これにも頷くドレミド。

「それでもしドレミドが私を殺せなかったら、アリエリとミラベルを殺すってのもアイザック?」

 やっぱり頷く。

 ……アイザック、とんでもねぇな。

 ドレミドにとっては八方塞がり。そしてドレミドの言葉を信じるなら、それを面白がっている。そしてそれに対する俺達の反応も楽しんでいるのだろう。

 こいつぁ極上のクソ野郎だぜ。

「それでドレミド自身はどうするつもり?」

「……シノブに……死んでくれるように頼むつもりだった」

「絶対に頼まれないよ!!」

「ううっ、じゃあ、どうすれば……うわぁ~ん」

「号泣じゃん……」

 しかしどうする?

 そもそもドレミドもアリエリもミラベルも、この大陸を混乱に陥れている張本人。このまま死んでくれた方が良いのかも知れないが、どうも悪人には見えない。

 そもそも俺の知っている限り、誰も殺してはいない。

 大陸を支配するつもりならば、見せしめに殺した方が楽だった事もあったはず。

 そのドレミドから突然に表情が消えた。無表情、その瞳はどこも見ていない。

 異変に気付いた瞬間。

 リアーナのハルバード、ロザリンドの刀がドレミドに向けられる。

「はははははっ」

 今度は突然笑い出す。

 やっぱり何かの罠か!!?

「初めましてと言った方が良いかな? シノブ」

「……本当に……アイザックなの?」

「そう……お前達の予想通り。私がアイザックだ。証明は必要無いだろう? 私のこの特殊な能力があれば。それと人前が苦手なんでね、こうしてドレミドを通して話させてもらうよ」

「話がしたいんなら、てめぇが出向け、この臆病者……って、本音がこぼれてごめんなさい。でも僕も聞きたい事があるから話そうか」

「ははっ、たまに見ていたが、本当にシノブは面白い。よし、知りたい事も多いだろう。何でも質問してみたらどうだ?」

 ドレミド……の姿をしたアイザックは笑う。

「あなたの目的は何なの? 大陸をこんな形にしたのもあなたでしょう?」

「目的? 誰かが言っていなかったか? これは単なるゲーム。お遊びだよ」

「本気?」

「私が紙一重の試練をお前達に与える。それをどうやって乗り越えるかを楽しんでいただけだ。言うなればお前達はゲームの駒だな」

 その言葉を全部信じるわけではないが、本気で大陸を支配する気など無く、ただのゲームだ……そう言われた方がしっくりくるのは確かだった。

 アイザックは言葉を続ける。

「それで今度は面白い事を思い付いたんだ。シノブ、お前が第一都市を解放した姿を見てな」

「……聞かせてよ」

「お前は犠牲を伴う最善の選択肢ではなく、少しの危険性があっても全てを救える選択肢を選んだ。そのお前が今のドレミドを見て、どう行動するのか……ほら、面白そうだろ?」

「悪趣味だね。その為にローロン、ママトエトエ、ヴァルゴを殺したの?」

「自分で作った人形をただ壊しただけだろう」

「人形? 感情もあったように見えるけど」

「それがどうかしたか?」

「……」

「その顔、怒っているのか? いいぞ、その表情、そういう表情が笑えるんだよ、ははっ。シノブのそういう顔が見られるなら殺したかいがあるってものだ」

「随分と僕に固執しているみたいなんだけど」

「当然だろう? 同じ神々の手として」

 俺は溜息を吐く。

「……ララは? ララも神々の手でしょう?」

「ララも面白かったぞ。アバンセ、サンドン、パル、ヤミ……あの竜達を封印した魔法具はララが用意したんだ」

「あなたの仲間だった、って事?」

「違うな。適当に騙して作らせた。同じ神々の手だったからな、喜んで協力してくれたぞ。その自らの魔法具で封印された時のララの顔……笑ってしまう」

 ララは自分と同じ存在の友人を欲しがっているよう、俺にも見えていた。詳細は分からないが、そこを利用されたのだろう。

「本当にムカつく野郎だね。目の前にいたら前が見えなくなるくらいブン殴ってやりたいんだけど。どうやればそこまでひん曲がれるわけ?」

「そういう反応が面白い。もっと私を楽しませるんだ」

「ちっ」

 俺は舌打ち。

 アイザックは笑う。

「私から一つ提案をしよう」

「提案?」

「私はシノブに興味がある。だからそのシノブが死ねば、興味も無くなりこんな事をする意味が無くなる」

「僕が死ねば、全てを終わりにするって事?」

「そうだ、ドレミド達を自由にする。アバンセ達もだ。そして他のゴーレムは全て破壊する。大陸も元の形に戻す。そして私自身もまた姿を消そう。全てを元通りにすると約束しよう」

「僕が死んだ後じゃ、約束を確認できないでしょ」

「だったら提案を無視すれば良い。アリエリとミラベルは死ぬ。お前達はドレミドを殺し、私を探す旅を続けろ。ただ次に放つゴーレムは大陸中を殺戮して回るようにするぞ。女も子供も無差別にだ。お前達はそれを全て防げるかな?」

「……困ったね」

「ははっ、私はドレミドを通して見ているからな。どんな選択をするか……楽しみだ、シノブ。それとお前達の仲間、近くに裏切り者がいるぞ。気を付けるんだな」

 そこでドレミドの体はガクッと崩れ落ち、意識を失うのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 言葉も信用できない上に、どう転んでも喜ぶ面倒な相手が黒幕か。 封印を解除するか、新しい遊びの提案なり行動しないと悪化するやつだコレ。
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