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リトライ!!─救国の小女神様、異世界でコーラを飲む─  作者: 山本桐生
崩壊編

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正解ルートと本当の指揮官

 第一都市、東側。

 そこから攻め込むのはガイサルだ。しかしその進行距離はビスマルク達の半分以下。こちら側はゴーレムと敵兵の数が圧倒的に多い。

 先頭に立つガイサル。

 その剣が目の前のゴーレムを斬り飛ばした。

「このガイサルの前に立つ事は死を意味する事と思え!!」

 その気迫に怯み、後退する敵兵。

 しかし意思を持たないゴーレムは躊躇無く向かって来る。ギリギリの戦いだった。

 鉄と鉄がぶつかり合う音。そこに混ざる怒号と悲鳴。建造物やバリケードが進行を阻む市街戦。その中をガイサルは進み続ける。向かうのは議会場。

 そのガイサルの元に駆け付けるのは……

「ガイサルさん!!」

「シノブか!!? それにミラン!!? 無事だったか!!?」

「簡単に死ぬつもりは無いからな。親父も無事だったんだな?」

 ミランはヴォルフラムの背中から飛び降りた。

「もちろんだ。ただ話は後にするぞ。今は少しでも早く議会場を目指す」

「ああ、分かった」

「それじゃ、ヴォル。僕は必死にしがみ付くから後はよろしく」

「了解」


 半日だ。

 それから半日掛けて俺達は議会場へと辿り着く。

 しかし辿り着いた時には、議会場を占拠していた反乱者達はすでに逃げ出していたのだった。

 これで帝国領第一都市は解放されたわけであるが……


★★★


 そこに集められたのは俺、ビスマルク、ガイサル、副官、ミラン、そして北側を任されていた部隊長。

 ミランにはすでに今までの経緯を伝えてある。

 副官は今回の被害を報告する。

「東側、ガイサル隊長の部隊と、城壁外のゴーレム撹乱部隊の被害が一番激しく、ほとんどの隊員が使い物になりません」

 副官の所も半分以上の隊員がリタイア。部隊長の所は八割方リタイア。俺ん所も主要メンバーは大丈夫だが、リアーナ隊とロザリンド隊の隊員が半分以上はしばらく動けないだろう。

 副官は絞り出すように言う。

「……残った戦力だけでは……帝都の解放は不可能です……」

 逃げた反乱者は帝都に向かい、こちらの大体の被害状況を伝えるだろう。

 帝都に攻め込む事など到底不可能。

「……親父。ここに来たのは俺を助ける為か?」

「そうではない」

「帝都からすぐに攻めて来るぞ。今、この戦力じゃここを守り切る事もできない」

 帝都のママトエトエからすれば、これはチャンスだ。こっちは圧倒的に戦力が足りないのだから。

 さらにミランは続け、言葉を荒らげる。

「こうなる事なんて予想ができたよな? それでもこっちに来たのは俺を助ける為、それしか考えられない。つまり俺を助ける為に国を見捨てたって事か?」

「ちょっと、ミラン、落ち着いてよ」

 俺の言葉にミランは言う。

「これで帝都が崩壊したら、また昔のように国土が荒れるんだぞ。俺一人の為に何万人もの命が失われるかも知れない。それで落ち着けるか!!?」

「あら、真面目」

「うるさい、黙っていろ」

「はいはい」

「……ガイサル隊長……これからどうするつもりなんですか?」

 副官はガイサルを見る。

 そのガイサルは俺を見て言う。

「……シノブ。これで良いんだな?」

「はい、上手くいって良かったです」

 俺はニコッと笑った。

 そしてガイサルは副官に視線を移す。

「お前を拘束する」

「……拘束? 誰を? 私をですか? 私を拘束するって言ったんですか?」

「今回の作戦を自分の部下に伝えたか?」

「……いいえ。伝えていません」

 そこで俺。

「でも東側だけ明らかに敵の戦力が偏っていましたよ。まるで東側の防御をわざと固めるみたいに」

 俺が最初、都市の東西南北を観察していたのは、敵の戦力の集まり具合を観察する為。

「私が作戦を漏らしたと言うのか?」

 副官が俺をキッと睨む。そして吐き捨てるように続ける。

「作戦の事なら知るのは私だけじゃないだろう?」

 副官は部隊長にも視線を向けた。

 ガイサルも部隊長に視線を向けて問い掛ける。

「お前は私の作戦をどう聞いていた?」

「あ、わ、私は第一都市には攻め込みやすい経路があると。ガイサル隊長を含めて、帝国兵があえて陽動隊となり、攻め込みやすい西側からシノブさんが攻めると聞きました……」

 部隊長の言葉に副官は狼狽する。

「わ、私には東側が攻め込みやすいと……」

「ちょっと待て。どういう事だ?」

 と、ミラン。

 その言葉を聞いて俺は笑う。

「いや、こっちの情報が向こうに漏洩していると思ったからね。罠を張っていたんだよ」

 第一都市を進行しやすい正解ルート、それをバラバラに伝えていたのだ。

 つまり東側に敵が偏っていたのなら、それは正解ルートを東側だと思っている副官が情報を漏らしたから。


「ま、待って下さい。第一都市の造りを見れば、攻めやすい経路がある事に気付く者だっているはずです。そこに多く兵を配置していたのでは?」

 副官の言葉にガイサルは首を横に振った。

「第一都市にそんな経路は存在しない」

「えっ、そ、そんな……じゃあ、最初から……」

「作戦だ……シノブのな」

「キラッ」

 親指、人差し指、小指を立てつつ俺は満面の笑み。

 副官も部隊長も驚きの表情。当然だ。全ての作戦はガイサルの指示で行われていると思っていただろうから。

 しかし残念、俺でしたぁ!!

 全ては俺が考えたものでしたぁ!! ひゃっひゃっひゃっ

「連れていけ。一瞬でも目を離すな」

 ガイサルに命令された部隊長が副官を拘束して連れ出した。副官は何も言わず、無抵抗に項垂れているのでった。


★★★


「先に第一都市を解放するのを決めたのもシノブって事なのか? つまり今回の本当の指揮官はシノブ?」

「そう、みんなで良い立案ができたからね」

「とは言うが、ほとんどはシノブだろう。全く、恐ろしいくらいだぞ、ガハハハハッ」

 ビスマルクは笑う。

「確かにあれでミランと同じ歳とは……見習えとも言えないな」

 ガイサルも笑う。

「でも何で副官が情報を漏らしているって分かったんだ? それで裏切り者を炙り出す為にわざわざ第一都市を攻めたのか?」

「可能性は高いと思っていたけど分かっていたわけじゃないよ。それに第一都市を解放したのは別の理由で、正直、裏切り者が見付かろうが見付からなかろうがどっちでも良かったの。ついでだよ」

 裏切りってのはトップに近い奴がやる程に効果的。反乱分子が帝都の乗っ取りを本気で考え、裏切り者を送り込むなら、それは皇帝やガイサルに近い位置へだ。

 つまりガイサルの直属の部下、副官や部隊長への疑いが強かった。でも帝国側の裏切り者の炙り出しなんぞ後でも構わなかったんだよ。

 ただ帝都第一都市を解放するついでにね。

「分からないな。第一都市を解放したのは良い。でももう帝都を相手にする程の戦力は揃っていない。攻める事もできない、攻められたら守る事もできない。この状況でどうするつもりだ?」

「まぁ、もうちょっと待ってよ。面白い物が見られると思うから」

 うぷぷぷ、どうなるか楽しみだぜ。

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