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リトライ!!─救国の小女神様、異世界でコーラを飲む─  作者: 山本桐生
プロローグ

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身体測定と脱げて落ちたパンツ

 シノブは12歳になりました!!

 この世界は実に前世とよく似ている。1年が約365日あり、春夏秋冬の四季がある。なのでここでの2年間は元の世界での2年間と時間の流れはほぼ同じ。

 育ち盛りのお子様は2年間でどれくらい成長するんでしょうね?

「してないじゃん!!」

 叫ぶ。

「どうしたシノブ?」

「ねぇ、ヴォル。私、少しは大きくなったよね?」

「身長は少し伸びたな。その分、少し重くなった」

 確かに、少し身長は伸びた。確実に成長はしている。ただ、その成長の伸び幅が驚く程に少ない。身長もそうだが、胸がよ!! おっぱいがよ!! 全然、大きくならねぇのよ!! 下の毛も生えないしさぁ!!

 身体測定なんて行事があるのも前世と同じ。今日はその当日。

「シノブは去年も同じ事を言っていた」

「来年はそうならないと良いね……」


 今日の髪型はと……

「そろそろシノブも自分で出来るようにならないとね」

「だってお姉ちゃんみたく上手く出来ないんだもん」

「私がいなくなったらどうするの?」

「えっ、お姉ちゃん、どっか行っちゃうの?」

「行かないよ」

「だったらずっとお姉ちゃんとお母さんにやってもらう~」

 後ろ髪を左右に分けて、後頭部の下部分から編む。そして出来た三つ編みのおさげ二つを両方とも肩の前に出す。この編んだ髪を体の前に出すか、後ろにそのまま落とすかで印象は大分変わるんだよな。今日は前!!

「はい。出来たよ」

「うん。ありがとう」

 そして今日も元気に……

「いってきま~す」


★★★


 もちろん身体検査は男女に分かれてと。

「ちょっとリアーナ。良い?」

「良いけど何?」

 むにゅっ

 むにゅっ

 両方の手で、リアーナの両胸をガッツリ掴む。

 これは断じてセクハラではない。中身がオッサンであろうが、今の俺は12歳の女の子。つまりこれはセクハラではなく、コミュニケーションだ!!

 そもそもリアーナも別に嫌がっていないし。良いよね?

「シノブちゃん、去年もそれやったよね」

「私にはその義務がある」

「どんな義務なの……」

 ってゆーか、リアーナ……

「去年よりまた大きくなってる!!」

「それは大きい声で言わないで!!」

「この野郎、いつの間に……」

「いつの間にって言われても……」

 つい2年程前まで俺とリアーナは背丈も胸も同じようなものだったはず。ただここ1、2年でリアーナの身長は俺より高くなり、女性の体付きに近付いていた。もちろん胸のサイズも。ブラまでしやがってこの野郎。俺はまだその必要が無く、シャツを着ているだけ。

「で、でもシノブちゃんも小さくて可愛いよ」

「慰めになるかぁぁぁいっ!!」

 さて身体検査と言えば下着姿で測定するのだが、その下着事情をちょっと説明。ゴムの存在は知られているが、あまり普及はしていなかった。

 そのためブラやパンツを何で留めるのかと言えば、ボタンやフックや紐。つ・ま・り・ね、この年齢からでもガチの紐パンは一般的な物なんだよ!!

 しかも水玉とかストライプ模様とかプリント柄もあるんだぜ。これは実に嬉しい。

 ちなみに今の俺のパンツはと言うと、形状は女児パンツそのまんま。ただ紐が腰回りに通してあり、それを前面でリボンのように結んで下着が落ちないようになっている。

 シャツ一枚とパンツ一丁になり、さてこれから測定を……リアーナは紐か……

 ちょうどリアーナが紐パンだったもので、つい出来心。片方の紐を引っ張って解いてみる。

 ハラリ……パサッ……

「シノブちゃん!!?」

 咄嗟に下半身を押さえてしゃがみ込むリアーナだったが、俺は見てしまった。

「大人の階段を登り始めたか……」

 俺はまだなのに……

「もう!! 変な事を言うの止めて!!」

 リアーナはすぐさま紐を結び直してしまう。

 そして怒られた。

「あれ? シノブ、それ何?」

 そんな中、別の友達が俺の胸にぶら下がる笛を見付けた。そうアバンセを呼び出す、体育教師ホイッスル。

「うん。笛。大事な物だからずっと身に付」

 言い終える前に……

 ピー

 笛を吹いてしまう。

「ちょっ」

 ピーピーピーピーピー

 しかも連続で吹く。

「うん。笛だね」

「おまおまおま、お前、な、なんつー事を……」

 もちろんそれが何だか知っているリアーナも慌てる。

「ね、ねぇ、シノブちゃん、それ取り消しとか出来ないのかな?」

「わ、分からん……」

 直後である。本当にすぐだった。

 空を舞う巨体、世界の頂点に君臨する竜の一人。赤黒い鱗、鋭い牙と爪、絶大なる力を持つ竜。不死身のアバンセ。

 ギャァァァァァーーーッッッ!!

 教室中どころではない。学校中が一気にパニックへと陥る。泣き叫ぶ者、その場にヘタリ込んでしまう者、下着姿のまま教室から飛び出す者。

「シノブちゃん、どうしよう!!?」

「どうしようって、私が行くしかないよ!!」

 俺は教室から飛び出した。


 廊下では教師も生徒もワーワー何かを叫びながら右往左往。

「ちょっ、ど、どいて!! イタッ、そこ通して!!」

 他の生徒達にぶつかりながら、校庭へと飛び出す。

「アバンセ!!」

「おお、シノブ!! 無事だったか!! 笛が凄い勢いで吹かれたからな。危険が迫っているのかもと心配して急い……だっ!!?」

「それはありがたいけど!!」

 ハラリ……

「ちょっと目立ってるから小さくなって!!」

 パサッ

「あっ!! シ、シノブ……そのだな……」

「早く!!」

「わ、分かった」

 うぐっ、見られているのが分かる!! 視線がグサグサと突き刺さるようだぜ!!

 それも当然だ。またも不死身のアバンセが現れたんだからな!!

 学校中の教師と生徒が今、この状況を見守っているのだろう。

 シュルルルルッと小さくなるアバンセ。

「それでだな、シノブ……」

「話は後で!!」

「それが今じゃないと」

「私は大丈夫、友達が興味本位で笛を吹いちゃっただけだから」

「いや、大丈夫じゃなくて」

「本当に大丈夫だから!!」

「全部丸見えなんだが」

「丸見え? 何が?」

「だから……そのな……前も、そ、その下の方もだな……」

「だから何が!!? ハッキリ喋れ!!」

 そこにリアーナが真っ赤な顔で走ってくる。もちろん服は着ていた。まぁ、下着のまま校庭に飛び出したら、ただの露出狂だからな。ふふっ。

「シノブちゃん!!」

 リアーナが手に持つのは俺の服。そうか……俺は下着姿のまま外に飛びしてしまったのか。露出狂は俺だったようだぜ……しかしこの騒動を鎮めるための犠牲と思えば……

 そしてリアーナから衝撃的な一言。

「パンツ!!」

 パンツ?

 パンツなら俺の足元に落ちておるわ……ん?……パンツが落ちてる?

 脱げて落ちたパンツは完璧に俺の物。

 つまり俺の現状は下半身丸出しのすっぽんぽん。隠す物、何も無し。

 それだけではない。シャツも捲り上がって、胸も出ている。

 校庭に出る時、他の生徒達と何回もぶつかった。その時にパンツの紐は解け、シャツは捲り上がってしまったのかも。

「……」

 シャツをしっかり下げる。

 パンツを上げ、紐を結び直す。

 と、同時に、走り寄ったリアーナが持っていた服で俺の下半身を隠す。

「アバンセ。知ってたの? なんで教えてくれないわけ?」

「いやいやいやいや、俺は何回も教えてやろうとしたぞ!!」

 八つ当たりなのは分かっていた。

「もう……山へお帰り!!」

 ゲシッと一発蹴りを入れる。

「理不尽過ぎる!!」

 まぁ、効かないだろうし一発くらい良いだろ……


 それからの数日間。

「……」

 この馬鹿男子ども。俺を見て、ちょっと前屈みになるの止めろ。

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