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第3幕 謎の男

 黒髪の男は、迎えの馬車が来るわけでもなく、1人で城から出て行った。


普通なら馬車も護衛もいない貴族は不審がられ、門番に止められてしまうだろうに、門番も当たり前のようにノーチェックで門を開いた。


その光景は、他の者が見ていたら異様な光景だっただろう。男が門番に話しかけた瞬間、門番達から表情が一瞬にして消えたからだ。

 

 月明かりの下、男の目の前に広がる森には街と城を繋ぐ道が作られている。その道を通るかと思いきや迷いもせずに、木の生い茂る森の中の暗闇へと姿を消した。


 森の中では夜行性の動物の鳴き声がして、虫の鳴き声が響き渡っている。道に迷えば命はない夜の森に、不安ひとつ抱かない表情で立ち止まった。


 すると、どこからともなく現れた一羽の大きなカラスが男の肩にとまった。


 「ヤア。オカエリ ワガオオサマ。オメアテノ ローザハ ミツケタカイ?」


 カラスは黒髪の男を見ながら流暢に言葉を発した。


 「ああ。見つけたよ。戦場で輝きを放つ彼女とは別人のようで驚いたが、可愛い一面があるところも見られたし。噂に聞く彼女の婚約者にも会えたよ。」


 黒髪の男は、カラスの羽を撫でた。


 「ヘェ、イイオトコダッタカイ?」


 カラスの質問に、男は羽を撫でながら首を傾げた。


 「さぁ。私には彼の魅力は分からない。でもローザは彼の事を愛しているように見えたから、今日のところは引き上げてきた。」


 王と呼ばれた黒髪の男の言葉を聞いて、カラスは驚いて羽をバタバタさせた。


 「オオサマ アキラメルノカイ??ウソデショ?!」


 男は、カラスがバタバタさせる羽が顔にかかるのを鬱陶しそうに払い除けた。


 「私が諦めたものなど一つもない。今日はパーティーで恥をかかないように、ローザの顔をたてただけだ。」


 「ナゼハジヲカク??コクオーノムスメダロ?」


 首を傾げるカラスに、男は面白くないといった表情でカラスを手首に移して羽ばたかせた。


 「それは間違い無さそうだが、立場がないように見えた。ホールにいた殆どの人間がローザを蔑んだ目で見ていたし婚約者も例外ではない。」


 羽ばたいていたカラスは、みるみる大きくなって、体をくねらせたかと思ったら、人の姿に変わっていた。それから、フーッと息を大きく吐いて言葉を紡いだ。


 「戦場では血の王女と言われて恐れられていたし、部下にも慕われているようにしか見えなかったけどね。」


 カラスだった男は、灰色の髪に、切長で灰色の瞳をもち、筋肉質ではあるが痩せ型の男に変わっていて、不思議だなーと呟いた。


 「パーティーに紛れ込んだ瞬間、ローザの婚約者の手癖の悪さや、ローザへの悪口がちらほら聞こえてきていたんだ。そんな中彼女は入ってきて、気にとめる様子もなくホールのテーブル付近に立ったんだ。だからその場で声をかけた。」


 怒りを感じさせる男の目を見て、カラスだった男は面白そうなものを見たかのようにニヤッと笑った。


 「このレイブン、城に潜入して内情を調べてきてあげるよ。」


 王と呼ばれた男は、自分をレイブンと呼んだ男にむかって首を横に振った。


 「そうは言っても我々はこのアイトワイズ王国とは敵国の味方をする者だ。長居してバレてしまっては命に関わる。」


 そんな心配ともとれる言葉を放つ男に対して、レイブンはニヤッと笑った。


 「大丈夫だよ。魔法を使って潜入するし、終わればみんな僕の事を忘れるから。もしもの場合はカラスになって飛んで逃げるから。」


 レイブンは大袈裟だなとクスクス笑った。


 「いつも臣下を大切にしてくれる王様に感謝して、今から潜入してきます!」


 そう言って、また体をくねらしたかと思うと、小さくなってカラスの姿に戻ってしまった。


 「イッテキマス。ワガオオサマ。イイシュウカクヲモッテカエルカラ キタイシテテネ。」


 羽ばたいたカラスを見上げながら、諦めたようにため息をついた。


 「分かった。何かあればすぐ通信を送れ。必ず迎えに行くから。」


 「アア。ワカッテルヨ。」


 そう言ってカラスは、城の方へと飛んで行ってしまった。


 王と呼ばれた男は、大きな木の前に立ち、ゆっくりと手を翳した。


 「我が城へ導け。」


 そう言った途端、木には大きな白の魔法陣が現れ、

その中に吸い込まれるように男は入っていった。

 

 


 


 

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